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国税関係

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元国税職員による税務調査の記事や税務職員になるための情報を掲載しています。
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#国税

税務調査の話 その3 〜調査の種類②〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。第3回は、調査の種類の整理の続きです。 前回の記事 今回は調査の段階による分類です。 納税者の事業所に臨場して行う調査を実地調査といいます。その前段階として行う調査を準備調査といいます。 準備調査主に提出された確定申告書とその添付書類である決算書に基づき調査を行います。前回の記事でご説明した内観調査・外観調査も準備調査に含まれます。ここでは、書面による準備調査をご説明します。 申告書審理 申告書に誤りがないかチェックします。提出さ

税務調査の話 その4 〜調査の種類③〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。第4回も調査の種類の整理の続きです。 前回の記事 今回は取引先の調査です。 反面調査調査の対象となっている納税者から見た売上先、仕入先、外注先等に臨場し、取引の実在性(除外、架空計上がないか)、取引金額の整合性(一部除外、水増しがないか)について確認する調査を反面調査といいます。 仕入や外注費については、帳簿に記載されているので容易に反面調査先の把握が可能ですが、売上については、除外したものは帳簿に記載されていないので、事前に資料せ

税務調査の話 その10 〜非違事項別解説④ 処分・認定賞与等〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は、少し毛色の異なる処分について取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 処分とは会計では、複式簿記を前提にしていますので、期末の売上の計上漏れを修正すると、その相手勘定である売掛金の修正も必要となります。仕訳で書くと次のとおりです。 税務上は、複式簿記を明示的に取り扱いませんが、同じような考え方をとります。 売上計上漏れの処分は何ですか?

税務調査の話 その11 〜非違事項別解説⑤ 雑収入除外〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は不正の一つである雑収入除外を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 基本は売上除外と同じ雑収入除外も売上除外と同じ収入の除外なので、その性質や除外方法(簿外預金等)ついては、基本的に売上除外と同じです。詳しくは、こちらの記事の「売上除外とは」という項目をご参照下さい。 売上を除外するのはかなり大胆な行動であるため気が引けるという心理が働きま

税務調査の話 その12 〜非違事項別解説⑥ 仕入〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は仕入を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 仕入の水増し実在する仕入の金額を過大に計上することです。単純な水増しとキックバックに大別されます。 (1)単純な水増し 請求書や領収証等といった証憑書類な金額を書き換えるなどして、実際の金額より高く見せる方法です。お金の動きが記録に表れない現金仕入の場合、水増し分のお金は社長個人の財布に入れて、

税務調査の話 その13 〜非違事項別解説⑦ 在庫〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は在庫を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 在庫に関する非違在庫管理の方法が継続記録法か棚卸計算法かに関係なく、売上原価は、期首在庫+当期仕入−期末在庫で計算されるので、期末在庫を過少に計上すると、売上原価が過大になるため、課税所得は低く算定されてしまいます。 このため、期末の棚卸が適切に行われているかについては、税務調査でしっかり確認が

税務調査の話 その15 〜非違事項別解説⑨ 人件費前編〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は人件費を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 概要人件費の水増し・架空計上もポピュラーな脱税手法です。仕入や外注費と異なり、社内の人間への支払なのでお手軽なイメージがあるのでしょうか。特に同族会社の場合、社長の親族に対する人件費の計上がよく問題になります。ポイントは勤務実態があるかどうかです。 調査手法(1) 支払から見る 役員の身内で

税務調査の話 その16 〜非違事項別解説⑩ 人件費中編〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回も前回に引き続き人件費を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 法人税法上の損金不算入規定役員報酬に係る定期同額給与、事前確定届出賞与、業績連動給与等、法人税法上には、課税所得の調整により適正な課税から逃れることを防止するための規定があります。 税務調査においても、これらの規定から損金不算入となるものが損金に算入されていないかといった観点のチ

税務調査の話 その21 〜非違事項別解説⑮ 貸倒損失〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は貸倒損失を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 貸倒損失の正しい処理については、筆者の税務調査の経験上、税理士の中でもきちんと理解していない方が多かった印象です。それでは、税務調査の観点からみていきましょう。 貸倒損失が認められる場合法人税基本通達9-6-1〜9-6-3に規定されています。 1 金銭債権が切り捨てられた場合(9-6-1)

税務大学校の思い出

筆者の社会人としての振り出しは国税職員でした。国税時代の研修の思い出について書いてみました。 税務大学校のHPはこちら 高卒区分の普通科研修については、こちらをご参照ください。 専門官基礎研修国税専門官採用者は、採用直後から埼玉県和光市にある税務大学校(税大)で4か月間の専門官基礎研修を受けることになります。全国の国税局採用者が集められるため、敷地内の寮に寝泊りする人が大多数です。東京国税局や関東信越国税局採用者の場合、自宅から通勤(通学ではない)する人も多いです。基本

国税審判官になろう! 弁護士・公認会計士・税理士向け ~書類選考対策・面接対策~

筆者は、公募されている任期付の国税審判官の採用内定をいただいたことがあります。結局、内定は辞退しましたが、今でもやってみたかったなと思います。 そこで、国税審判官の仕事内容、処遇(年収)、採用されるには?といった点を記事にまとめました。書類選考対策(有料)・面接対策(無料)にもなり、また、どの程度の職務経歴なら合格できるのかというレベル感も分かる内容になっているかと思います。 国税審判官の年収(任期付の場合)皆さんが一番興味があると思うのは年収だと思うので、まずここから。

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国税不服審判所設立50周年記念シンポジウム

昨年の9月28日に開催されたシンポジウムですが、遅ればせながらe-learningで聴講しました。 民間登用の国税審判官について、前東京国税不服審判所首席国税審判官の藤谷氏から言及がありましたので、情報提供します。 審判所としても、任期付審判官の退任後のキャリアを気にかけているようです。公務員なので斡旋することはできないが、審判所の経験が役に立ったかは大事であると。そうでないと優秀な人に来てもらえないので。 また、プロパー職員に良い影響があるかという観点から、弁護士出身

租税訴訟 ギャンブルの賭け金の払戻金の所得区分

10月15日の東京地裁判決について、今週号(11月2日)の『税務通信』に掲載されていたので所感を記事にします。 事案の概要インターネットを介してスポーツの結果を賭けの対象としたギャンブルの的中時の払戻金について、納税者は雑所得であると主張したのに対して、国側は一時所得であるとして争っているものです。結果的に納税者が敗訴して控訴中です。 雑所得であれば、外れた試合の賭け金も必要経費に算入できますが、一時所得であれば、的中した試合の賭け金のみ必要経費に算入できるため、課税所得