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税務調査の話 その12 〜非違事項別解説⑥ 仕入〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は仕入を取り上げます。

これまでの記事(税務調査の話その○)


仕入の水増し

実在する仕入の金額を過大に計上することです。単純な水増しキックバックに大別されます。

(1)単純な水増し 請求書や領収証等といった証憑書類な金額を書き換えるなどして、実際の金額より高く見せる方法です。お金の動きが記録に表れない現金仕入の場合、水増し分のお金は社長個人の財布に入れて、単に証憑書類の改竄をするだけで済むので、辻褄を合わせやすいです。

改竄については、仕入先への反面調査をすれば確実に分かりますが、領収証等の筆跡や印紙税額の確認により発見することも可能です。

筆跡については、概況聴取時に社長にアンケートを記入してもらうことで、それとなく筆跡を採ります。一定の癖が見受けられれば、それを基に追及することが可能です。ただし、調査官は筆跡鑑定の訓練を受けていないので、相手に突っぱねられると太刀打ちできません。

領収証の印紙税額については、100万円以下なら200円、100万円超から200万円以下なら400円と領収証の記載金額により税額が変わります。

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/inshi/pdf/zeigaku_ichiran.pdf

記載金額を改竄することにより印紙税額との整合性がなくなり、これを基に追及することで改竄が発覚するという次第です。

(2)キックバック 仕入先と口裏を合わせて仕入金額を水増しし、水増ししたうちの一部又は全部を戻してもらう方法です。他の不正と同様に中小企業の社長が主導して行うことも多いですが、大企業でも購買担当者が個人的なお金欲しさに実行することも少なくありません。よくニュースになっているので、皆さんもご存知かと思います。また、建設業の場合、ゼネコンへの上納金(受注工作費)を捻出するための裏金作りとして、その下請け企業が行うことも多いです。

キックバックについては、証憑書類の改竄が伴わないこともあるので、原価率の異常に高い取引の特定や社内稟議書の通査等を行い端緒の把握に努めます。その上で反面調査を実施します。また、社長の個人口座や裏金作りのための簿外預金に還流していることもあるので、銀行調査から発覚することもあります。反面調査・銀行調査については↓をご参照ください。

仕入の架空計上

実在しない仕入を計上することです。架空の請求書や領収証等を作成することが多いです。この場合、筆跡の確認については、水増しの場合と同様です。また、架空の証憑書類については、以下のような特徴が見受けられます。

(1)文房具屋で購入した簡易なもの きちんとした請求書や領収証を用意するのはなかなか大変です。仕入先の角印(社判)がないことも。

(2)金額がラウンド数字 1,000,000円とか端数のない丸い数字

(3)印紙を貼っていない ここまで気が回らないことが多い。

(4)仕入先の住所が存在しない

これらの特徴が見受けられた場合、対応する売上の有無を確認します。卸売業であれば、対応関係がはっきりしていますので、架空仕入が発覚しやすいです。また、業種に関わらず反面調査は欠かせません。

現預金の還流から発覚することもありますが、この点は水増しの場合と同様です。

おわりに

今回は仕入に絞って記事にしましたが、調査方法については、外注費やその他の経費とも共通することが多いです。次回は、在庫についてご説明します。お楽しみに!

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