違和感
夫と一緒に住み始めたある日、私の職場の人にバーベキューに誘われた。
私の仲の良い同僚が何人か参加して、同僚Aの家にお邪魔することになった。
同僚Aは自分が全部準備するから何も持ってこないでと言ったが、私と夫はお気に入りのお肉をマリネして準備し、おやつやお酒などを持って彼女の家に行った。
でも他の何人かは何も持ってきていなかった。
私はまだ外国の習慣などはよくわかっていなかったため、個人の自由なんだなと言う理解で終わった。
でも夫はその持ってこなかった同僚について、
”あれじゃあ誰も彼のことはパーティには呼ばないよ”
”どういう家で育ったのだ”
”若いからと言って許されることではない”
などとネチネチと言い続けた。
私は持ってこなかったうちの一人、同僚Bとはとても仲が良くてしょっちゅう一緒にランチや買い物にも行っていた。
彼は若く、私はまだお給料が安いことも知っていたから、
”いいじゃない、私たちだって若い時はお金がなかったんだから”
と何度も言ったが、その後も事あるごとに彼は同僚Bのことを
”ケチ”
だと言い、勝手に彼の生い立ちまで想像で言うようになった。
”彼の親は貧乏で、まともな教育を彼に与えなかった”
”彼は自分勝手だ”
”彼はきっとメンタルに問題がある”
私はすごく嫌な気持ちになって
”あなたにそこまで言う資格はない、あなたの言っていることは全て想像で、あなたは同僚Bのことを何も知らない”
夫はその時は何か笑って誤魔化したが、後になって夫はこのことにも根を持ち続けていたことがわかるのだ。
ただ私が注意したその後は、その事について発言することはなくなり普段の明るく前向きな彼であったから私もそのことを気にすることはなくなって言った。
今になって思えば、彼は何も知らない人のことを勝手に決めつけることが多かった。
それと同時に夫は他人がどのように自分のことを思っているのかをとても気にしていたのだ。
だから簡単な挨拶をしただけの他人のことも、良くも悪くもあの人はこう言ったから自分のことをこう思っている、こうしたから自分のことをこう思っているといつも言っていた。
”だから気をつけたほうがいいよ”
それが夫の口癖だった。
夫に違和感を感じたが、私は外国に住んでいて、外国人の中にいる。
夫は色んな国に住んだことがあり、外国にも外国人にも慣れている。
そんな人からのアドバイスだから、そうなのかもしれないと信じ切ってはいないがそう言うこともあるかと私は私に言い聞かせていた。
夫はそんな私の心を知っていて、すでに洗脳は少しずつ始まっていたのだと思う。
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