なるみ。

日本語教師兼もと介護士です。「介護の日本語会話テキスト」と現場との会話に乖離を感じたの…

なるみ。

日本語教師兼もと介護士です。「介護の日本語会話テキスト」と現場との会話に乖離を感じたので、日本語教師向けに情報発信します。施設数8、介護職員98名、ご利用者様374名とのやりとりをもとに、日本語教育向けに必要な現場情報をまとめました。※注意!「教え方」ではありません。

最近の記事

みんなの日本語1「介護編」第14課

授業の導入や会話練習の参考になれば幸いです。 ・て形 + ください ・ます形 + ましょうか(申し出) ・いま て形 + ています 場面1 職員に指示を出す、職員から指示を受ける 場面2 利用者様に依頼する 【補足】  利用者様はお客様なので指示ではなく依頼させていただく表現となります。丁寧な順に「~ていただけると助かります」「~てもらえると助かります」「~てもらえますか」「~てください」「~て」「~する!/~しない!」※瞬時の動作依頼は辞書形および禁止形を使うことが

    • みんなの日本語1「介護編」第9課

      授業の導入や会話練習の参考になれば幸いです。 ・~ですから・・・ 場面1 あついものを出すとき 【補足】朝食、お茶、昼食、お茶、夕食の計5回、飲み物を提供します。温かい飲み物や汁物、料理などを出すとき必ず一言添えてからお出しします。熱いものやこぼれやすいものは利用者様の症状によって置く場所を(手前にはおかない)変更しています。  調理方法が異なるのか勤務した特養では汁物が冷めるとトロミがなくなりサラサラの汁物になっていました。有料ホームでは変化がなかったのですが・・・。

      • みんなの日本語1「介護編」第10課

        授業の導入や会話練習の参考になれば幸いです。 ・~に・・・が あります ・~に・・・が います 場面1 全盲のご利用者様に伝える 「~に・・・があります」「~に・・・がいます」 ブラインドの方にお膳の配置説明や必要に応じて周りの状況を説明する場合 クロックポジションを用います。  「今日の夕食はハンバーグ、中華スープ、小松菜のおひたしですよ。10時の方向にハンバーグがあります。4時の方向には中華スープが。お熱いですから気をつけてくださいね」  場所や匂いの確認、器の温

        • みんなの日本語1「介護編」第6課

          授業の導入や会話練習の参考になれば幸いです。 テキスト会話のような定型文会話って現場ではどうなってるのかと思いましたが、意外とそのまま文字おこしすればテキストとして使えるぐらいの表現がよく使われていました(時間にゆとりがあるときだけですが・・・) 1.~ませんか。  ①誘い ②お勧め  ※6課は「①誘い」のみ 2.~ましょう。  ①積極的な誘い(相手の意向をきくことが重要でない)  ②そうするように呼び掛ける(行動を促す) ③申し出  ④誘いに対する返事 3.~ましょうか。

        みんなの日本語1「介護編」第14課

        マガジン

        • レオンファミリー
          4,317本

        記事

          みんなの日本語1「介護編」第5課

          ・行く、来る、帰る、は現場でもそんなに大きな差はありません。 「トイレ(もう)行きましたか?」 「今日息子が来るはずなんだけど、まだかな」など。 ・誕生日はいつですか。 場面 午後、おやつの時間、談話がはずむ 【補足】「昭和」「大正」ぐらいは知ってた方がいいですね。  午後、レクも終わって、おやつの時間は談話がはずんだりテレビを見たりしてまったりと過ごします。デイサービスだとご飯を食べる食席にそのままいるか近くのソファなどで過ごします。昼食後はお昼寝される方が多いです。

          みんなの日本語1「介護編」第5課

          みんなの日本語1「介護編」第4課

          授業の導入や会話練習の参考になれば幸いです。 ・〇時〇分 ・~から・・・まで 場面1 次のサービスへ案内・誘導する 【補足】特養や有料ホームでは朝お部屋で個別に入浴の時間帯をお知らせします。部屋に入浴がいつなのか予定表を配布している施設もあります。それを見ながら確認することも多いです。  曜日と午前・午後でだいたい入浴する人は決まっています。皮膚の状態や体調によっては順番が変わることもあります。例えば〇曜日午前は男性個浴、午後は男性機械浴、あるいは一般浴と機械浴など施設

          みんなの日本語1「介護編」第4課

          バイスティックの7原則「会話例」

          はじめに  こちらは日本語教師が外国人介護士さんに資格対策コースなどで指導する際の参考になれば幸いです。バイスティックの7原則をご存じだというテイで実際にあった会話を軽く紹介します。私が現場で体験した会話をもとにあてはめただけですので、あくまでも主観であることをご了承ください。  ただ現場で思ったのは、このバイスティックの7原則を知らないのか理解していないのか全くできない外国人介護士がほとんどでした。たまたま勤務先がそうだったのかもしれませんが、よく日本人職員が「外国人は異

          バイスティックの7原則「会話例」

          みんなの日本語1「介護編」第17課

          ・__ないで ください。 ・__なくても いいです。 場面1 談話室、廊下、食堂などで支払うお金を心配する 【補足】 実際に施設内で利用者様から直接食事代を支払っていただくことはありません。みんなで食事をしたり体操をしたりする時間や職員が多い時間帯はわりと落ち着いていたりしておられますが、人が少なくなったり自分がどこにいたらいいのか分からなくなったり不安になったりしたときにふと食事代の心配をなさることがあります。食事前の準備でスタッフがバタバタしているときもよくあります。

          みんなの日本語1「介護編」第17課

          介護の日本語を教える前に~色表現と色を使う場面~

          覚えたほうが便利な色表現 色は8色「赤・青・白・黄・黒・緑・茶・紫」覚えていれば十分だと思います。状況や場面によって使う色がだいたい決まっていますので、各場面ごとに紹介します。施設によっては使う色は異なるかもしれませんが、用途は同じだとお考え下さい。 「あずきいろ」「ねずみいろ」など特殊な表現もあるのでしょうが、現場ではほとんど聞きませんでした。地域性もあるのかもしれませんが、外国人介護士さんがちょっと格好をつけて「介護記録、難しいですよ」「色、たくさんあります。えんじ

          介護の日本語を教える前に~色表現と色を使う場面~

          みんなの日本語1「介護編」第3課

          ・〇〇は/〇〇さんは どこ/どちらですか。 ・これは/それは どこの 〇〇ですか。 場面1 トイレに案内する 【補足】ご自身で歩ける人は自分でトイレに行こうとしてくださいます。施設によって介護士の動きが変わりますが、椅子がガタッと音がした時点ですぐにおそばに行きトイレまで同行するところもあれば、声掛けだけで見守るというところもあります。  毎回「トイレはどこ?」と尋ねる人もいます。「あそこです」「まっすぐいって左ね」など毎回お伝えする会話がどの施設でも毎日あると思います。

          みんなの日本語1「介護編」第3課

          自己紹介

           はじめまして。  日本語教師兼もと介護士の「なるみ。」と申します。  日頃は主に課題達成型の日本語教育テキストを使用して定住外国人の授業しておりますので、文型文法積み上げからはしばらく離れております。  ただ現場の会話を分析していくと「みんなの日本語」に沿って分類した方が日本語教師に伝わりやすいと気づき、そうさせていただきました。  日本語教育をおこなっているとテキストのような会話が本当にあるのか知りたくなり、そして介護の日本語を教えていると介護の仕事にも興味がわき、介護

          介護士のできること・できないこと

          はじめに  こちらのNOTEを見つけてくださり、ありがとうございます。  介護の日本語会話練習を実施する上で法を守り、現場でも安心して研修の成果が発揮できるよう研修時の会話導入で気を付けてほしいことがあります。リアルな会話場面を展開しても、それは本当に大丈夫な内容でしょうか。いま一度確認してみてほしいです。    日本語教師兼介護士として両方の視点から感じたことを介護の日本語研修に携わる方用にまとめました。私の経験がいつか巡り巡って介護の世界に良い形でかえってくるのでは?そ

          介護士のできること・できないこと

          介護施設配属前の日本語研修にあるといいな!  ~利用者様とのやりとり編~

          はじめに こちらのNOTEを見つけてくださり、ありがとうございます。  日本語教師兼介護士として両方の視点から感じたことを介護の日本語研修に携わる方用にまとめました。私の経験がいつか巡り巡って介護の世界に良い形でかえってくるのでは?そんな想いから共有いたしました。  「介護の日本語の教え方」ではございません。あくまでも情報共有です。  勤務した施設数は8か所、介助に携わった利用者様374名、お世話になった介護職員の諸先輩方98名とのやりとりをもとに、研修に優先的に盛り込んだ

          介護施設配属前の日本語研修にあるといいな!  ~利用者様とのやりとり編~

          介護施設配属前の日本語研修にあるといいな!  ~職員間のやりとり編~

          はじめに こちらのNOTEを見つけてくださり、ありがとうございます。  日本語教師兼介護士として両方の視点から感じたことを介護の日本語研修に携わる方用にまとめました。私の経験がいつか巡り巡って介護の世界に良い形でかえってくるのでは?そんな想いから共有いたしました。  「介護の日本語の教え方」ではございません。あくまでも情報共有です。  勤務した施設数は8か所、介助に携わった利用者様374名、お世話になった介護職員の諸先輩方98名とのやりとりをもとに、研修に優先的に盛り込んだ

          介護施設配属前の日本語研修にあるといいな!  ~職員間のやりとり編~

          介護の日本語を教える前に~認知症会話~

          1.認知症とは  もともと痴呆症と言われていて、2004年に「認知症」という名称に変更されました。利用者様や一部の職員さんは今でも「痴呆」という言葉を用いることがあります。日本語研修では「認知症」と合わせて「痴呆症」も語彙として入れておいた方がよさそうです。  日本語授業ではクッション言葉があったり、丁寧な言葉を勉強しますが、認知症の利用者様に行動を促したり誘導したりする際、あえて短いフレーズを使います。  「申し訳ないのですができるところまでお願いできますか」「左手で

          介護の日本語を教える前に~認知症会話~

          介護の日本語を教える前に~コミュニケーション~

          1.共感  例えば話者がペットを亡くした話をしているとき、ご本人の話をしっかり聞いていることを伝えるために相槌や頷き、「このように思っているのですね」「~なのですね」と要約したり繰り返したりします。  さらに「それでどう思ったの?」「そのとき何か気になることあった?」などと話を引き出す(話に興味がある、聴いていることがわかる)ように聴くのが「傾聴」です。そして話者(相手)が感じていることをありのままに受け入れ、相手の立場になって感じ、それを伝えていくのが「共感」です。

          介護の日本語を教える前に~コミュニケーション~