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カナダで3か国語子育ては可能です!

 今月からTORJAでコラムを連載することになったワーマン・カエデです。カナダ人夫と2人の乳幼児と共に日本からカナダ、トロントへ移住し、日英仏3か国語での子育てをしてきました。紆余曲折を経て、現在成人した子ども達はどの言葉でも話し読み書ける高度トライリンガルになっています。バイリンガルでも難しい言語教育なのになぜトライリンガルに育てることができたのか。このコラムでは、私達夫婦が幾多の困難を乗り越えながら子ども達をトライリンガルに育てたその経緯を中心に、読者にバイリンガル・マルチリンガル教育の秘訣をお伝えしていこうと思っています。


子どもたちがトライリンガルになれた要因


 私の子ども達がトライリンガルになれた最も大きな要因は、トロントの学校環境に恵まれたことと言えるでしょう。まず、日本語保育園の池端ナーサリースクールに入れ、のちにカナダの公的英仏語バイリンガル教育のフレンチイマージョンを高校まで続け、それと同時に土曜日のトロント補習授業校を高等部卒業まで続けました。移住先が多文化多言語主義を掲げる移民先進国カナダの、マルチカルチャーを誇るトロントであったことにも助けられました。子ども達が日本語やフランス語も学んでいるとカナダ人の友人達に言うと、全員から「それは良いことだ。」と励まされたのです。

 2つの学校へ行き続けその両方から出る宿題をやることは、子ども達にとってもそれをサポートする親にとってもたいへん大きな負担でした。それでも学校へ入れないことには、家庭学習だけでは会話はできても読み書きができるまでにはなかなかなりません。私は会話レベルではなく読んで書けるレベルこだわりました。どの言葉ででも仕事ができる力を着けさせたかったのです。英語はもちろんのこと、できれば彼らのルーツである日本語もネイティブレベルにしたいと思い、また、フランス語が使えればカナダでは就職に有利というのも魅力的でした。
 

日本語環境・池端ナーサリー&トロント補習授業校


 子ども達のトライリンガル教育の始まりは20年以上前に遡ります。私達夫婦は結婚当時日本に住んでいました。夫の国であるカナダに移住するに当たって私が最も心配したことの1つは、当時1歳の娘とお腹の中にいる赤ちゃん(息子)の日本語教育です。私はカナダで働くつもりでいたので私の代わりになる日本語環境が必要でした。20年前はインターネットが普及し始めたばかりで手に入る海外の情報も限られており、私はトロントの日本語新聞を航空便で取り寄せました。

 その日本語新聞の中に、TORJAでもコラムを書かれている池端ナーサリースクール園長池端友佳理さんの、100%日本語で日本式保育を実践する園についての情報を見つけたのです。私は早速池端先生にエアメールを送り文通を始めました。先生は丁寧に私の質問に答えてくださり、トロントに移住しても池端ナーサリーがあれば、しばらくは子ども達の日本語消失の心配はいらないだろうと安心したことを覚えています。池端ナーサリーの存在は子ども達の日本語教育にとって幸運でした。というのも、幼児期の言葉のインプットはネイティブレベルの習得にはとても大事なことだからです。お陰で子ども達の話す日本語には英語のアクセントはまったく着いていません。
 
 移住して半年後、娘は3歳、息子は1歳半から池端ナーサリーに入園しました。毎日日本語を使い、当時は姉弟同士の会話もすべて日本語でした。そして家ではネイティブスピーカーの親による1人1言語を徹底させ、父親とは英語、私とは日本語で話し、周りの環境は英語というバランスの取れた言語環境を作りました。ナーサリーでの言語が日本語であっても英語が遅れるという現象は起こりませんでした。というのも、夫は私より早く帰宅して子ども達とたくさん英語で話し、英語で読み聞かせもたっぷりしていたからです。子ども達は日英2言語を母語※とし、すでに話す相手によってちゃんと使い分けていました。

 しかし、海外でのマイナーな言語である日本語の保持が最も難しいのは学齢期に達して現地校へ行き出してからです。そこで大量の英語が入ってきて読み書きの学習言語として強化され日本語は脇へ追いやられます。ここで親が踏ん張らないと日本語の後退や消失が起こるので、英語に負けないように日本語で学習させる必要があります。その日本語学習の場に私達夫婦はトロント補習授業校を選びました。

フレンチイマージョン 


 さて、フランス語についてですが、子ども達は5歳でフレンチイマージョンの幼稚園に通い出しました。フレンチイマージョンとはフランス語で学科を勉強するシステムのことを呼び、1967年にカナダが世界に先駆けて始めました。50年の歴史があり、イマージョン方式は最も効果的な外国語学習法の1つとして現在ではたくさんの国で採用されています。フレンチイマージョンについてはまた別の機会に紹介したいと思いますが、このシステムがカナダにあったからこそ、家族に1人もフランス語話者のいない我が家の子ども達でもフランス語が話せるようになったのです。現在子ども達は大学生。どちらも語学力を生かせる仕事に就けるよう頑張っています。

※母語とは子どもが最初に覚える言葉



この記事はカナダ日本語情報誌『TORJA』連載コラム『カエデの多言語はぐくみ通信』2020年1月号に寄稿したものです。 https://torja.ca/kaede-trilingual-01/

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