枠の中の自分(HANAちゃんストーリー第7話)
実は苦しみの中にいるのに、それを表現できないでいる。
何故か。
僕の問題なのかな・・・
心配かけたくない。恥ずかしい。怖い。
あっているような、あっていないような。
そんな毎日を送っていた。
***
今日も仕事に追われ、最終の電車に乗り込む。
(ラッキー誰もいない。)
珍しくその車両には誰もいなかった。
いつもの癖でドア付近の端の席に座る。
(あ~今日も疲れた・・・だけど、このままで良いはずない。どうしよう・・・)
目をつぶり僕はいつものように暗闇の中に落ていく。
(助けて・・・)
「なに~どうしたの?」
突然、声をかけられた。
目を開けると、見たこともない生物が立っていた。
正確に言うと、見たことはある。犬だ。
犬だけど、二足歩行をしている。
ロボット?いや、これがロボットだったら、ドラえもんも真っ青だ。
「助けに来たよ」
その犬はそう言った。
(聞こえた?心の声が漏れたのか?)
慌てている僕の横にその犬はゆっくりと座った。
「大丈夫だよ。
大人だから、社会人だから、係長だから、サバサバした性格だから、明るいから、クヨクヨ悩んだりするタイプじゃないから・・・
そんな固定概念全部外しちゃって!!」
その犬はニッコリと笑っているかのように見えた。
呆然とする僕を見つめながら、さらにこう続けた。
「人が作った固定概念なんて、たいして意味がない。こうあるべき、こうだからなんてそんなのは関係ない。大事なのは、貴方が今、どうしたいかでしょ。あなたの心は何を求めているか。自分の心を大切にしていいんだよ。
大丈夫。
枠なんて意味がないの。
囚われないで。
どんなあなたも私は大好きよ。」
僕は気付くとその犬のフワフワの頭を撫でていた。
暖かく柔らかく気持ちがいい。
自然と涙が零れていた。
誰かにこんな風に言ってもらいたかったのだろう。
どんなあなたも大好きよ
僕は子供のように膝を抱えて泣いた。
大きな声で泣いた。
泣くだけ泣いて、顔を上げると、その犬はいなくなっていた。
夢を見ていたのか?
スーツのポケットからハンカチを取り出すと、あのフワフワの毛が上着に付いていることに気がついた。
(夢じゃない!?)
慌てて辺りを見渡すが、誰もいない。
呼吸を整え、心を落ち着ける。
「ありがとう」
なんだかわからない、不思議な可愛い犬にお礼を言った。
終わり
最後まで読んで頂きありがとうございます!!
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