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異語り〜コトガタリ〜

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【現代怪談】 日常に紛れ込んだ微かな異の物語を綴っていきます。(毎週木曜日更新)
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2021年9月の記事一覧

異語り 058 変わり身

異語り 058 変わり身

コトガタリ 058 カワリミ

あちこち放浪していた時に出会ったTさんの話。

旅先で出会った人たちは大概が特に予定もない旅路だったので、気の向くまま長期滞在したり周遊したりしていた。
そのため何度も同じメンツで顔を合わせることも多く、Tさんもそんな中の1人だった。
Tさんは以前、整体師を目指して勉強していたと言っていた。
旅で出会った人にもマッサージをしたり、予防法を教えたり、結構慕われていたと

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異語り 057 つなぎ直し

異語り 057 つなぎ直し

コトガタリ 057 ツナギナオシ

noteで怪談を書き始めて気がつけば1年が過ぎていました。
思うように外出できなくなった時期でもあり、直接人に会って話を聞く機会は減ったのですが、代わりに昔のことをよく思い出すようになりました。

毎週毎週怖い話ばかり思い出しているせいか、感覚(匂いや肌感覚)も鋭くなったような気がします。
人や場所、物に対しての好・嫌がはっきりと感じられるようになりました。

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異語り 056 再び

異語り 056 再び

コトガタリ 056 フタタビ

古い友人から結婚のハガキが届いた。
『こんな時期だし、歳もあれだから写真だけ撮ってきました』
優しそうな男性と一緒に写る幸せそうな笑顔の友人

20年ほど前、偶然に再会した時とは別人のようでした。

まだ私が北海道に来たばかりの頃、休みがあれば観光気分であちこち散策してました。
大通公園を散策中、ぼんやりと辺りを見渡しながらフラフラしている人がいます。
あまり見るの

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異語り 055 古本

異語り 055 古本

コトガタリ 055 フルホン

私が高校生だった頃、私が読んで若者向けの小説(当時はまだライトノベルというジャンルはなかった)に父が興味を持った。
もともと乱読派だったことと、今考えると思春期の娘の思考を知りたいと思ったのが理由なのかな?

手元にあった数冊を貸すと、後日

「お金は出すから続きを買ってきて欲しい」と言い出した。

毎月お小遣いをやりくりして少しずつ集めていたので、その言葉はまさに

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