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異語り〜コトガタリ〜

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【現代怪談】 日常に紛れ込んだ微かな異の物語を綴っていきます。(毎週木曜日更新)
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2021年1月の記事一覧

異語り 026 帰宅

異語り 026 帰宅

コトガタリ 026 キタク

学生の頃、友人のYから
「一緒に彼氏を説得してほしい」
とお願いされたことがあった。

Yの彼氏はバイトを掛け持ちしながらバンド活動をしている夢追い人で、生活もかなり節約して暮らしている人だった。
食事は賄い付きのバイトで済まし、服も何年も同じ物を着ている。
家の中の家具も、ほとんどがもらい物か拾ってきた物。
もちろん家賃も安ければ安いほどいいと言う基準なので、おそら

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異語り 025 雪道

異語り 025 雪道

コトガタリ 025 ユキミチ

買い物をしている間に雪が降ったらしい。
家に向かう路地を折れるとまだ誰も通っていない真っ白な道が続いていた。

1歩踏み出すとボスンと足が埋まる。
長靴じゃなければ靴が全部埋まってしまうぐらいに積もっている。

幸い今日はそれほど荷物は重くない。ポスポスと足を進めていく。
結構な深さがあるから、少し歩きにくい。慎重に足を運ぶ。

ポスポス
    トス・トス
ポス

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異語り 024 新月のおまじない

異語り 024 新月のおまじない

コトガタリ 024 シンゲツノオマジナイ

娘の同級生にルナちゃんという女の子がいる。
幼稚園から現在(中3)までずっと同じ学校だけど、娘とはそれほど親しいわけではない。でもとても印象に残っている女の子でもある。

彼女はちょっと変わった子で、幼稚園の頃から同年代の子供と遊ぶより、その親・大人と話をすることが好きな子だった。
彼女のお母さんはお仕事も忙しそうな方だったので「寂しいのかなぁ」と思いよ

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異語り 023 扉

異語り 023 扉

コトガタリ 023 トビラ

最近になって唐突に思い出した景色がある。
今まで忘れていたというか、知っていたけど意識に上らなかったような。
そんな気にならなかったものが、強烈な違和感とともに強く記憶を揺さぶってくる。

高校を卒業し進学のために上京した。
最初に住んだアパートはちっとも東京っぽくないのどかな所にあった。
普通列車しか止まらない最寄り駅は歩いて5分。
急行の止まる駅までは自転車で十分

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