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異語り 025 雪道

コトガタリ 025 ユキミチ

買い物をしている間に雪が降ったらしい。
家に向かう路地を折れるとまだ誰も通っていない真っ白な道が続いていた。

1歩踏み出すとボスンと足が埋まる。
長靴じゃなければ靴が全部埋まってしまうぐらいに積もっている。

幸い今日はそれほど荷物は重くない。ポスポスと足を進めていく。
結構な深さがあるから、少し歩きにくい。慎重に足を運ぶ。

ポスポス
    トス・トス
ポスポス
    トス・トス

微かな音がした気がした。誰か来たのかと思って振り返るが誰もいない。
車も通っていない。

ポスポス
    トストス
ポスポスポス
     トストスト


また静かに雪が降り始めた。世界は白い静寂に包まれている。

でも、自分の足音だけじゃない気がする。


振り返る

何もいない

少し風が吹いて身震いが上がってきた。

ボスボスボスボスボス
全速力のつもりで走っても足を取られてうまく進めない

ボスボスボスボスボスボスボスボス
ボスボスボスボスボスボスボスボス

それでもどうにか走り続けてやっと家にたどり着いた。
玄関フード(風よけのために玄関扉の前に作られた風除室)に飛び込んだ。
後ろ手にガラス戸を閉めて振り返る。


トストストストストストストストス

自分の足跡の隣に小さな穴が開いていくのが見える

トストストストストストストストス

穴は空いていくが、そこには何もいない、誰もいない、何の姿もない。

トストストストストス・トス

穴は玄関の前まできた


突然の強い風に地吹雪が舞い上がる
白く染まる世界


私は慌てて家へ飛び込んだ。

真っ白な世界で、玄関前の穴の上だけぽっかりと人型に抜けていた。

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