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異語り〜コトガタリ〜

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【現代怪談】 日常に紛れ込んだ微かな異の物語を綴っていきます。(毎週木曜日更新)
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2020年12月の記事一覧

異語り 022 初めてのお使い

異語り 022 初めてのお使い

コトガタリ 022 ハジメテノオツカイ

年の瀬も押し迫るスーパーの駐車場。
出入り口のそばには正月飾りの屋台が並ぶ。
夕刻となり、いよいよ活気づく人の流れに最後の売り込みの声が響く。

出入り口のすぐ側のテントにはそれなりに人の列も出来ているが、その隣となると実に寂しい雰囲気になる。
私はめいっぱい火を大きくしたストーブを背に足踏みを繰り返す。

ひっきりなしに車が出入りする駐車場に向かって声

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異語り 021 プレゼント

異語り 021 プレゼント

コトガタリ 021 プレゼント

我が家のサンタクロースは枕元ではなく、クリスマスツリーの下にプレゼントを届けてくれる。
毎年子どもたちが眠った後に、祖父母からのプレゼントと一緒にツリーの下に並べている。
クリスマスの朝にはツリーの下にプレゼントの山。
子どもたちのはしゃぐ笑顔が何よりも尊い

12月24日の夜。日付の変わる頃
夫婦でプレゼントを抱えてそっと二階のツリーに向かった。

祖父母から

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異語り 020 結婚記念日 妻より

異語り 020 結婚記念日 妻より

コトガタリ 020 ケッコンキネンビ ツマヨリ

扉がノックされ、笑顔の夫が顔を出した。
手には花とケーキの箱
「ああ、やっぱり」
心の中でそう呟くと、自分の口角が上がるのがわかった。

「また、今年もこんな感じになっちゃったね」
そう笑いかけると、夫はちょっと眩しそうな顔をしながら慣れた手つきでテーブルの上に紙皿とケーキを並べていく。
小さなホールケーキにロウソクが6本
チョコのプレートには 6

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異語り 019 結婚記念日 夫より

コトガタリ 019 ケッコンキネンビ オットヨリ

朝から花束とケーキを持って病室を訪ねた。
俺の手元を見て妻が笑顔になる。

「また、今年もこんな感じになっちゃったね」
くったくなく笑う妻をとても可愛いく思う。
お店の一番小さいホールケーキに『6周年♡』のプレートとロウソクを6本。
病院なので火はつけないが、いつも形だけでもと思いロウソクも立てている

最初の結婚記念日から今回で6回目

毎年飽

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異語り 018 こたつ

異語り 018 こたつ

コトガタリ 018 コタツ

小学生の頃、近所の団地に住んでいたマキちゃんという子の家によく遊びに行っていた。

間取りは狭めの2DKで当時の団地では一般的なもの。
遊びに行ってもマキちゃん自身の部屋はなく、リビングの隣の部屋でごろごろしてる。
そしてマキちゃんのお母さんや、時にはお父さんも一緒になる。

大人の目があることにはじめは抵抗もあったが、マキちゃんの両親はあまり気にしていないようだっ

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