異語り 018 こたつ
コトガタリ 018 コタツ
小学生の頃、近所の団地に住んでいたマキちゃんという子の家によく遊びに行っていた。
間取りは狭めの2DKで当時の団地では一般的なもの。
遊びに行ってもマキちゃん自身の部屋はなく、リビングの隣の部屋でごろごろしてる。
そしてマキちゃんのお母さんや、時にはお父さんも一緒になる。
大人の目があることにはじめは抵抗もあったが、マキちゃんの両親はあまり気にしていないようだったのですぐその環境に慣れてしまった。
何よりマキちゃんの家には漫画がたくさんあった。
(当時の我が家には、漫画といえば『ブッダ』と『はだしのゲン』しかなかった)
だからほぼ漫画目的でマキちゃんの家に入り浸り、ひたすらずーっと漫画を読んでいた気がする。
でも、ある日を境にマキちゃんの家に行けなくなってしまった。
こたつがあったから冬だったと思う。
その日はまきちゃんのお父さんもお休みで3人で一緒にこたつに入り漫画を読んでいた。
私の左隣にマキちゃん。こたつの反対側にマキちゃんのお父さんが足を突っ込んで寝転んでいる。
私もこたつの端っこに足を突っ込んでいつものように漫画を読んでいた。
ふっとこたつの中の温度が下がった気がした。
ヒーターが弱くなったのだろうと、気にせずに読み続けていると
誰かがサワサワサワっと私の足に触れた。
マキちゃんかな?
友人を見ると隣で同じように漫画を読んでいる。
きっと足でも動かしてぶつかったんだろう
そう思いまたや漫画を読み始める。
と、また何かが足に触る。
マキちゃんのお父さんとかな?
こたつの反対側に目をやると、背を向ける格好でいびきをかいている。
腕は2本ともこたつの外だ。
何かはまだ私の足をそっとなでている。
明らかに手の感触だった
その手が確かめるみたいに足先からゆっくりと登ってくる
やだなー、なんか気持ち悪い。
ちょっとくすぐったいようなふわふわしたさわり方だったからか、その時は大して怖いとも感じず、ちょっと足を振るって手を引きはがした。
さらにこれ以上邪魔されないようにとこたつの端へと自分の足をよけた。
次の瞬間
がしっ!
足首を掴まれた
「ひやぁ」
思わずあげた声にマキちゃんが目を丸くする。
寝ていたお父さんもむっくりと起き上がった。
注目をあび気恥ずかしくなった私は
「ちょっと用事があったの忘れてた。ごめん。帰るね」
そんなようなことを言いながら、慌てて逃げ帰った気がする。
それ以来、マキちゃんの家には遊びに行けなくなってしまった。
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