カバウッド

娘の父であり妻の夫である松坂世代。 映画監督を夢見て上京したのは20数年前のこと。 …

カバウッド

娘の父であり妻の夫である松坂世代。 映画監督を夢見て上京したのは20数年前のこと。 今は映像美術の末端でご飯食べさせてもらっております。

最近の記事

後輩の名推理を華麗にかわすオババのお話

昔々、あるところに先輩と後輩がいたという。2人とも一人暮らしをしており、たいそう仲良くしていたそうな。 てことで、学生時代。部活の後輩と同じ街でお互いに一人暮らしをしており、しょっちゅう一緒にご飯を食べていた。 今日も今日とて、部活帰り、夕飯を一緒に食べることに。 「今日は何食べるんべえかな?」 「駅前の蕎麦屋はどうですか?」 「ああ、いいね。じゃあそうすべか。」 てことで、2人で駅前の蕎麦屋に入る。 ここは最近見つけたのだが、チェーン店ではなく、昔からの地域密

    • 真面目な姉は正兼くんの恋を応援するお話

      昔々。あるところにとても真面目な姉がいたという。姉と弟は仲良く暮らしておりました。 きょうだいがいる人あるあるだと思いますが、末っ子のわたくしは大体の音楽は姉から教わりました。 当時はCD全盛期。色んなCDを姉から聞かせてもらい大層影響を受けました。 時は流れて。テレビで懐かしの歌を流す特番をやっておりました。 真面目な姉とわたくしは一緒にこたつに入ってその番組をぼんやりとみかんを食べながら見ております。 「続いてはKiroroの曲です。」 司会者の紹介に姉が食い

      • 受験生は日が暮れる前に郷を目指すお話

        昔々。あるところに受験生がいたという。受験生は旅立ちを翌日に控えて緊張しながらも厳かにその時を待っていたそうな。 某北関東と北関東某所のハイブリッドとして田舎でスクスクと育ったわたくしは受験を間近にして準備に終われておりました。 受験先は死にたいくらいに憧れた花の都大東京。薄っぺらのボストンバッグに旅の支度を詰めていきます。 当時、わたくしの住んでいた田舎から東京の受験会場までは電車とバスを乗り継ぎ、4時間近くかかる距離でした。 当日の朝に出発したのでは試験開始に間に

        • カーナビ嫌いの監督と地図の読めない田舎者のお話

          昔々。あるところにカーナビ嫌いの映画監督がいたという。 当時のわたくしは田舎から上京したばかりで、大御所映画監督の個人事務所へ丁稚奉公しはじめたばかりの頃でした。 「行くぞ。」 監督がそう言えば、わたくしは監督のカバンを持ち、監督のタバコ用の火を持ち、いついかなる時も監督についてゆく、そんなシステムでした。 まだ東京の右も左もわからない田舎者を監督は揶揄します。 「なんだ、そんなこともらわからんのか。これだから田舎者は、、、。」 仕方がありません。当時のわたくしに

        後輩の名推理を華麗にかわすオババのお話

          正直者のヘアメイクと正直者の装飾部のお話

          昔々あるところで映画を撮影していたそうな。 厳しいスケジュールと少ない予算ながら、キャスト、スタッフ一丸となり、トラブルは大小多々あったものの、撮影は何とか無事に終わったという。 装飾親方だったわたくしもひと段落。細かなバラしや精算はあるものの、肩の荷がどっと降りました。 この映画の撮影は本当に色々あって個人的に過去最大級のプレッシャーとストレスの中、ギリギリで這いつくばってなんとかクランクアップまで持ち堪えた過酷な現場でした。無事に終わって本当に良かったです。 、、

          正直者のヘアメイクと正直者の装飾部のお話

          駄菓子の宝箱

          駄菓子を腹一杯食べてみたい。 子どもの頃の夢だった。 料理上手の母だった。オヤツだって愛情たっぷりの手作り。 でも子どもの頃は駄菓子屋で売ってる駄菓子が好きだった。 お小遣い100円玉を握りしめて、親友のTちゃんと角の駄菓子屋に行くのが楽しみだった。 今日はどれにしようかな。ソースせんべいにスモモ、ガム、グミ、キャンディ、きな粉棒、くじ引きにPPカード。 狭い店内を2人でグルグルと何周もした。 限られたお金で色んな組み合わせを考える。 「そうだ!オレこっち買う

          駄菓子の宝箱

          映画監督になろう! roll.2

          さてと。アポ取りした翌日。履歴書を持って、指定された都内某所にある事務所に向かう。 当時は電車賃節約のため、自転車移動が主だった。アパート近くのスーパー以上、ホームセンター未満、みたいな地域密着型の小型店舗で購入した折りたたみ自転車。 ヨシ、これならいつどこでも折りたためるし完璧や! 余談だか、この自転車(のちに青いイナズマ号と命名)が廃車になるまでの5年の間に折りたたまれることは無かったといふ、、、 閑話休題。履歴書持参の田舎者がたどり着いたのは小さな雑居ビルだった

          映画監督になろう! roll.2

          映画監督になろう! roll.1

          映画監督を夢見て上京したのは二十数年前のこと。 バイトで貯めた100万円と、着替えを入れたラケットバッグ。 それが全てだった。 当初は上京して映画系の専門学校へ行くつもりだったけど、授業料の高さに断念。 つまりただの無職の田舎者が上京しただけだった。 アパートを契約してご飯を食べたら残高はどんどん減ってゆく。早く映画の仕事を見つけなければ、と田舎者は焦っていた。 とはいえ、当時は知識も情報も無く、映画業界への入口が全くわからない。 そんな折、ふと立ち寄った書店で

          映画監督になろう! roll.1

          いってらっしゃいの変遷

          娘が赤ちゃんだった頃。 ワシ「いってくるよ〜♪」 娘「(無言で抱かれてる)」 奥さん「はい、いってらっしゃーい。」 娘がヨチヨチ歩きの頃。 ワシ「いってくるよ〜♪」 娘「ぱーぱーぱー♪」 娘が幼稚園行きはじめた頃。 ワシ「いってきます。」 娘「ダメなの!いっちゃダメなの!(号泣)」 娘が小学生になった頃。 ワシ「はい、いってきます。」 娘「いってらっしゃい!タッチタッチ!(ハイタッチ)」 そして、今 ワシ「どっこらしょ、はい、いってくるよー。」 娘「いっへら

          いってらっしゃいの変遷

          狼神會

          近頃。 嚥下機能が低下している。 耳も悪くなり、眼も悪くなり、物覚えも悪くなり。 身体の狼化、もとい老化が著しい。 ところで。昨今は撮影現場でもペーパーレスが促進されている。 香盤(その日1日の撮影スケジュールや段取りをまとめたモノです)もかつては出力した紙が配られていたが、今では、データで送られてくるだけの場合も多い。 ワタクシはアンチデジタルノスタル爺スタイルなので、スマホやiPadの小さな画面ではよくわからんし、視力的にも見えないの。 なので、せめてA4以

          夢の仕事

          かつて。映画監督を夢見た田舎者にとって、撮影現場は憧れだった。 お金なんかもらえなくたっていい!ボクを現場に連れて行って下さい! やがて、現場に行けば、弁当だけはもらえるようになり、いつしか日当までもらえるようになり、、、 映像業界に従事して約20数年になるが、アタマの片隅には常に 「こんなことでお金がもらえるなんて申し訳ないなぁ」 という思いがあった。その罪悪感のせいなのか、かつていた先輩助監督たちは、のむ、うつ、かう、で宵越しの銭はもたねえぜ、が多かった気がしま

          2022年最後の撮影

          2022年、最後の撮影も無事に終わりました。 大きな事故や怪我も無く、2022年も撮影業界に従事して、ご飯食べられたことに感謝です。 今年はホントにロケが多かったです。 近年、作品の低予算化が進み、もはやスタジオセットは贅沢なモノになりつつあります。 撮影の都合を考えるならば、もちろんスタジオセットの方が良いです。 壁も天井も外せるし、ビスもみだって好きなだけ出来るし、小道具や道具、美術ベースの場所に悩まなくたってよいのです。 これがロケならば、小道具の逃し場所や

          2022年最後の撮影

          大当たり〜

          2022年が終わろうとしています。今年も映像業界に従事して報酬をもらい、家族でご飯が食べられたことに感謝です。 今年は特に身体の不調の多い年でした。 相変わらずの高血圧からの降圧剤。胃腸の調子も悪く胃腸薬も手放せない日々。 撮影現場ではコロナの見えない影に常に怯えて。 そんな中でも仕事があって、あたたかい家に住んで美味しいご飯が食べられて、家族が元気で。 幸せなことです。 映画監督を夢見て上京した20数年前。 着替えを詰めたラケットバッグとバイトで貯めた100万