後輩の名推理を華麗にかわすオババのお話

昔々、あるところに先輩と後輩がいたという。2人とも一人暮らしをしており、たいそう仲良くしていたそうな。

てことで、学生時代。部活の後輩と同じ街でお互いに一人暮らしをしており、しょっちゅう一緒にご飯を食べていた。

今日も今日とて、部活帰り、夕飯を一緒に食べることに。

「今日は何食べるんべえかな?」

「駅前の蕎麦屋はどうですか?」

「ああ、いいね。じゃあそうすべか。」

てことで、2人で駅前の蕎麦屋に入る。

ここは最近見つけたのだが、チェーン店ではなく、昔からの地域密着型で、激混みすることもないけど、潰れないほどには常にお客さんが入っているような、つまりどこの街にも一軒はあるいわゆる街のお蕎麦屋さんだった。

「いらっしゃいませー。」

店員オババの声が響きます。

うむ、今日もほどほどの入り具合。

子どもの頃は、断然うどん派だったけど、歳を重ねるにつけ、なんか蕎麦派になっちゃうよねー、なんて後輩と話ながら着席。

「さあて、何にすべかな?」

食べ盛りだし、カツ丼セットか天丼セットか、、、悩ましい。その時、後輩が気付きました。

「あ、カレーライスありますよ!」


ふうむ。お蕎麦屋さんのカレーか、、、。確かに美味しそうだわね。

壁のメニューを見ると私はあることに気付きます。

「、、、カレー丼、、、?」


なんということでしょう。この蕎麦屋のメニューには、

カレーライスとカレー丼、どちらもあるのです。


「おい、カレーライスだけじゃなくてカレー丼てのもあるぞ!」

「ええ!?なんですって!?」

にわかにザワつく私たちの卓。

カレーライスとカレー丼、、、どちらもメニューにある。しかしながら値段が微妙に違う。

カレーライス700円、カレー丼800円。

後輩と2人で首を捻る。

一体何が違うのだ!?


いや、店員オババに聞きゃあ済む話なんだけど、なにやら後輩が考え込んでいるようである。

「なるほど、わかりましたよ。」

「なにが?」

「なあに、簡単なことですよ。つまり、

カレーライスはいわゆる普通のカレーライス、カレー丼は和風の出汁が効いたいわゆるお蕎麦屋さんのカレーなんですよ!」


「な、なんだってえええ!?」

決まった!という顔の後輩をよそになんだか腑に落ちない私。そんな単純な話だべか。

こうなれば実証するしかないわね。

店員オババを呼ぶ。

「すいません、カレーライスとカレー丼ひとつずつ。」

食べれば謎が解けるはず。

、、、

、、、

、、、

「カレーライスとカレー丼お待たせしましたー。」

さあ、審判の時です。

とりあえず後輩がカレーライス、私がカレー丼を食べることに。

パクリ、モグモグ、、、

「ど、どうだんべ?」

「やっぱり!普通のカレーライスですよ!」


ふうむ。こちらのカレー丼も普通に美味しいけども。出汁?感は無いかなあ、、、。

両方食べないとわからんなあ。  

「交換すっべ。」

そして私はカレーライスをパクリ、、、

ヤバい、

違いが全然わからん!


一方。後輩もカレー丼をパクリ!その瞬間にイナズマに撃たれる!

「やっぱり!出汁です!」


なんということでしょう。後輩の推理通りだったワケか。私のバカ舌じゃあわからんわい。

その後は、お互いにシェアしながらカレーライスとカレー丼を完食し、お会計へ。

ここは先輩私の出番です。

「ご馳走でした。」

店員オババがやってくる。

「ありがとうございましたー。」

「美味しかったです。」

釣り銭を待つ間。

なんの気無しにオババに話かける。

「いやあ、やっぱり、ぼかぁカレーライスよりも出汁の効いたカレー丼の方が好みかも知れません。」

「は?」

「あ、いやホラ、カレー丼の方がやっぱり出汁が、、、」

「あー、カレーライスとカレー丼は中身一緒ですよ。」


な、ななんだってえええ!?


「え、あ、じゃあカレーライスとカレー丼の違いって、、、」

「ああ、量だけです。」


、、、

、、、

、、、

それからその後輩とその蕎麦屋に行くことはなかったといふ、、、。

とっぴんぱらりのぷう。

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