正直者のヘアメイクと正直者の装飾部のお話

昔々あるところで映画を撮影していたそうな。

厳しいスケジュールと少ない予算ながら、キャスト、スタッフ一丸となり、トラブルは大小多々あったものの、撮影は何とか無事に終わったという。

装飾親方だったわたくしもひと段落。細かなバラしや精算はあるものの、肩の荷がどっと降りました。

この映画の撮影は本当に色々あって個人的に過去最大級のプレッシャーとストレスの中、ギリギリで這いつくばってなんとかクランクアップまで持ち堪えた過酷な現場でした。無事に終わって本当に良かったです。

、、、

ところで。

わたくしは昔々からのクセがありまして。

イライラしたりストレスが溜まったりすると

ワシャワシャと髪を掻き乱してしまうのです。


いやいや、わかっておりますとも。周りからしたらただただ不快なだけなのは。

しかしながら今回の撮影現場では前述の通りエブリデイがストレスMAXボルテージで、つまり毎日髪をワシャワシャしておりました。

だから今思い返せば、毎日髪がとっ散らかっていたように思います。

さあ、撮影が終われば楽しい打ち上げがあります。

普段あまりお酒は好みませんが、この日だけは。この日だけは痛飲しました。

美術監督と反省会したり、演出部やプロデューサーとお互いが持っている「現場すべらない話」したり。クランクアップの解放感が漂い、和気藹々としたとても良い会でした。

さて、宴もたけなわプリンスホテル。そろそろお開きです。

すると、隣の卓にいたヘアメイクのお姉さんがサッと寄ってきました。

「お疲れ様でしたー。」

「お疲れ様でした。ありがとうございました。」

ヘアメイクのお姉さんも適度にデキ上がっております。

「あの、、、ずっと聞きたかったことがあるんです、、、。」

はて、なんだんべ?ヘアメイクのお姉さんとはもちろん現場では挨拶したりはしたけど、正直それくらいしか関わりは無い。まさか、この場でご趣味は?なんてことは無いだろうし。

「はい?なんですか?」

「ずっとずっと現場で無造作ヘアしてましたけど、アレってセットしてたんですか?」

ははあ、なるほど。これも一種の職業病なのかしら。現場中でわたくしが髪の毛をワシャワシャして結果的に無造作ヘアになっていたのを目敏く見つけて気になっていたということか。

「ああ、すいません、ぼくクセで髪の毛ワシャワシャしちゃうんですよねー。だから偶然です。セットじゃあ無いですよー。」

「ああ!やっぱり!

普通そーゆー髪型はイケメンがするもんですもんね!

ああー!スッキリしました。ありがとうございました。また次の現場でよろしくお願いしまーす。」

、、、

、、、

あ、いや残された無造作ヘアのオッサンは

ちっともスッキリしないのだが、、、

ええ、

そんなことがありましたよ。

とっぴんぱらりのぷぅ。

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