カーナビ嫌いの監督と地図の読めない田舎者のお話
昔々。あるところにカーナビ嫌いの映画監督がいたという。
当時のわたくしは田舎から上京したばかりで、大御所映画監督の個人事務所へ丁稚奉公しはじめたばかりの頃でした。
「行くぞ。」
監督がそう言えば、わたくしは監督のカバンを持ち、監督のタバコ用の火を持ち、いついかなる時も監督についてゆく、そんなシステムでした。
まだ東京の右も左もわからない田舎者を監督は揶揄します。
「なんだ、そんなこともらわからんのか。これだから田舎者は、、、。」
仕方がありません。当時のわたくしには環八と環七の区別もつかないのです。
なので監督は田舎者にハンドルを握らせず、自分で自分の高級車を運転しておりました。
高級車にはもちろんナビがついておりましたが、監督はハナっからナビなんてモノは信用しておりません。
「おい!オレから見えるように地図を出せ!」
「はい!」
助手席の田舎者は当時は常時装備していた23区マップを取り出し、監督の前に広げました。
「馬鹿野郎!」
突然怒鳴られました。なんだ!?なんかやらかしたのか?どこかに地雷があったのか?田舎者には皆目見当がつきません。
「す、す、すいません!何でしょう?」
「いいか、田舎者。地図を広げる時は、オレが見やすいように、今いる方角に合わせて見せろ!」
「は、はい。わかりました。」
田舎者は考えます。
ふうむ、ここが◯◯通りであっちに◯◯ビルがあるから、、、
ようし!この向きだ!
「監督どうぞ!」
「馬鹿野郎!地図も読めないのか!」
あいやー、どうやら間違ったらしい。いやー、トーキョーの道わからんなあー、なんて田舎者は思っておりました。
「貸してみろ!」
監督は田舎者から地図を取り上げると言いました。
「いいか!この向きだ!」
監督は田舎者が渡した地図を90°回転させました。
「な、なるほど。その向きですね!」
監督がら再び地図を受け取ろうとすると、、、
「いや、待て!この向きだ!」
監督は更に90°地図を回転させました。
「むむ!いや、やっぱりこの向きだ!」
更に90°地図を回転させる監督。今度こそ地図を受け取ろうとすると、、、
「いや!この向きだ!!」
監督は更に地図を90°回転させました。
、、、
「これが今の向きだ!わかったか田舎者!」
、、、
、、、
さて算数の問題です。
90+90+90+90=?
そうです。
360です。
結局。
監督は田舎者の渡した地図を360°回転させ元の向きに戻しただけでした、、、
「ちゃんと道を覚えろ!田舎者!」
「はい!」
ええ、そんなことがありましたよ。
とつぴんぱらりのぴぅ
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