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最期を支える人々  −母余命2ヶ月の日々−

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#在宅医

2015.6.24「病院で検査を受けましょう」

 翌日も実家へ向かった。母は、首の痛みと足の痺れとが続き、痛みに疲れた様子だった。

 その日は、A医師の往診日だった。2週に1度、叔母と父がお世話になっていた。叔母の診察が済んだ後、パジャマ姿の母を見てA医師が「どうされたのですか」と話しかけた。 

 母は、5月の初めに首を痛め鞭打ちと診断されたこと、一月以上経つのに治らず、ここ数日で痛みと痺れが増したことを話した。私は横から、冷や汗をかくほど

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2015.7.18 「A先生が診てくれるなら」

病院で抗がん剤に挑戦したいと伝えた5日後、主治医との面談が設定された。冷静に話ができるよう、主人にも同席してもらった。

 20分ほどの話し合いだったろうか。結論は、ひとまず退院、だった。自宅で暮らしてみて、辛ければ抗がん剤はしない、落ち着いて暮らせれば挑戦するということになった。

 主治医は、抗がん剤を投与すると必ず生活能力が低下すること、このため、いま病院で始めてしまうと家に帰れなくなる可

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2015.7.25 「ひと口でも多く」

緊急入院から4週間。抗がん剤投与の可否を診断する診察予約を2週間後に入れ、退院した。

 リビングに移したベッドで横になり、準備しておいた歩行器で食卓やトイレに行く動作を確認した。本人が思うほど体がついていかず、見ている私はひやひやしたが、本人は自由に過ごせることに心底ほっとしたようだった。

 午後は複数の介護事業所、主治医の訪問があり夕方までバタバタと過ごした。母は主治医と話すのを心待ちにし

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2015.8.28 「のどを通らない」

 1/4に砕いた薬も、のどを通らなくなっていた。体の痛みは増し、起きたり、トイレに移ったりするときにも痛みで顔をしかめた。

 母は「じっとしていれば痛まないから」と言うが、動くときに痛むなら薬を増やした方がよいと医師は判断した。この日から、体に貼る痛み止めと舌の下に入れて溶かす痛み止めとを使うことになった。同時に、看護師には毎日訪問して様子を見てもらうことになった。

 体に貼る痛み止めは、朝、

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