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スタートアップの方向性を決める「3つの輪」その⑥【事例研究のまとめ】

この記事は8日前に投稿した「スタートアップの方向性を決める「3つの輪」その⑤【事例研究】」の続きになります。お時間があればそれ以前の「その①」「その②」「その③」「その④」とあわせてお読みください。
【リンクは文末にあります】

事例に関しては「その⑤」に詳しい状況がありますが、都内で「ソマリア料理」の店を開店したA氏の話です。

1.思いが強すぎると失敗しやすい【失敗理由1】

スタートアップには事業を成功させるための「強い思い」は不可欠と言われます。しかし思いの強さが失敗の遠因となることもあります。

A氏は帰国後もソマリアでの生活が忘れられず、その素晴らしさを他人にも分って貰いたいという強い気持ちから、「得意なソマリア料理を提供すれば儲かる(はずだ)」というミスリードを招いてしまいました。
 
「長年過ごしたソマリアの料理が受け入れられないはずがない」という“プロダクトアウト的”な発想に陥ってしまったのです。
 
事前に何らかの調査やヒアリングをしていれば、たとえば「料理は美味しいけどソマリア料理では客が来ないのでは?」という助言があれば、ソマリア料理のニーズの無さに気がついた可能性有はあります。
 
しかしアフリカ在住が長いA氏は日本に相談できる相手が少なく、プロダクトアウト的な発想に拍車がかかったのも不幸でした。ソマリアへの強すぎる思いが事前調査の意欲を遠ざけていたとも言えるでしょう。
 
思いが強すぎるスタートアップが事業に失敗してしまう事例はかなり多いです。思いが強いのは良いことですが、事前のリサーチや新事業計画の作成は不可欠と言えるでしょう。
 
もし私がA氏に開店前に助言するとしたら、「提供する料理はソマリア料理でも、看板はエスニック料理にしたら?」と助言します。都内の場合エスニック料理は競合もあるはずですが、ニーズは顕在化しているのでソマリア料理より集客は容易でしょう。

2.開店を急ぎ過ぎると失敗しやすい【失敗理由②】


A氏は日本に生活基盤が無かったので、生活費を早く稼ぐために開店を急いでしまった点も失敗要因と言えるでしょう。さらに「両親の病気が小康状態のうちに経営を軌道に載せたかった」という思惑もあったようです。
 
物価の安いソマリアでは大した金額の貯金もできず、わずかな貯金は帰国後の月家賃とテナントの保証金に消えてしまいました。
 
もし帰国後も開店を急がず、1~2年間は他人の経営する飲食店に勤務していたらどうでしょうか? その間に資金を貯めたり、コストパフォーマンスが良い物件を探したり、協力者を見つけたりといった準備ができたかもしれません。これから開業後の失敗率低下につながったと思います。

今回は詳しく踏れませんが、入居予定のテナントを扱う不動産屋から開店をせかされるケースもあります。「人気物件なので、何月何日までに契約しないと他所と契約する」と言われ、急ピッチで計画を進めた結果、準備不足で失敗する小売業・飲食業は多いのです。 
 

3.一般的なスタートアップがブームを作ることはできない

有名人のスタートアップであればインターネットやSNSの力を借りて新たなブームを起こすことが可能かもしれません。今までマイナーな製品やサービスが、有名人のインスタグラムで紹介されて、短時間でメジャーになる例もあります。
 
A氏も店舗を始める前は、「都内で初めてのソマリア料理を成功させればブームを作って、先行者利益を獲得できる」と、楽観的に考えていたようです。
 
しかし一般人がそうしたブームを作るのは「無理」と思った方が良いです。
ビジネスが軌道に乗って、まとまった広告宣伝費が計上できるようになれば、インフルエンサー等を使ってネットでPRすることも不可能ではありませんが、投下した広告費を回収できないことが少なくありません。
 

4.この事例で学んでほしいこと

  • スタートアップが事業を成功させるためには強い思いが必要。

  • しかし強い思いは「独りよがりのビジネス」や「プロダクトアウト的な商品やサービス提供」の原因にもなりえる。

  • だから事前のニーズ調査や事業計画の作成は不可欠。

  • スタートアップには見えにくい事業の方向性を簡易判断できるのが「3つの輪」の意義。


引き続きこちらでは、スタートアップの事業計画作成に必要な知識を解説していきます。


過去記事へのリンク
その⑤

その④

その③

その②

その①

自己紹介(仮)


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