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スタートアップの方向性を決める「3つの輪」その③

この記事は9日前に投稿した「スタートアップの方向性を決める「3つの輪」その②」の続きになります。それ以前の「その①」とあわせてお読みください。

「3つの輪」が重ならないと発生する問題


これまでスタートアップが事業を始める場合、実現可能性を「3つの輪」を使って考えると失敗を回避しやすいというお話をしてきました。それぞれの輪は「やりたいこと」、「できること」、「求められていること」の3つになります。
 
しかしスタートアップの構想(計画の前段階という意味)で、この3つが最初から重なっているケース、下図でいうSのポジションは意外に少ないのが現実です。3つの輪が重ならない場合、スタートアップのビジネスはどうなってしまうのでしょうか?それを今回は解説していきます。
 
 

1.「求められていること」が重ならないと販売不振に陥りやすい


図Aのポジションになります。「やりたいこと」と「できること」が重なっているので、事業の準備は比較的スムーズに進みます。
 
しかし「求められていること」が重なっていないので、顧客のニーズをつかんだ商品を提供することができず、ビジネスを開始しても思うように売上が上がらないといった販売不振に陥りやすいです。
 
事前のリサーチ不足が原因となることが多いです。前回の記事でもお伝えしたように、家族や友人と盛り上がって冷静な判断ができないまま突っ走ってしまった計画や、希少性をニーズと混同した計画にしばしば見られます。スタートアップ個人の強烈な体験に影響されすぎた計画や、関連業界の経験不足によっても引き起こされます。
 
昨今のコロナ禍のように、事業計画中に市場環境が大きく変わり、市場から「求められていること」が変わってしまうことによる失敗もあります。

ほとんどの場合、事業を始めてから失敗が判明するので、撤退時のサンクコストが嵩んでしまう点にも注意が必要です。経済的な損失を考えれば、このポジションによる失敗は回避しなければなりません。

2.「できること」が重ならない場合、計画が進まないことが多い


図Bのポジションになります。「やりたいこと」と「求められていること」が重なっているので、計画当初は周囲からの理解と称賛を得やすいです。
 
しかし「できること」が重なっていないので、スタートアップ自身の能力不足により計画立案を実行に移すことができません。事業を開始するためには、プランニングの先に資金調達等々解決すべきさまざまな困難が立ちはだかっています。「できること」イコール「ビジネスの実行に必要な知見」ですので、それらが乏しい状態でビジネスが実行できるわけが無いのです。結果的にプランニングだけはできても、事業が進捗しない状態が続くことになります。
 
原因を一言でいえば、スタートアップのビジネス経験の不足によることが多いです。学生起業家や子育てが終わった主婦の起業、実際のビジネスを知らない大学発ベンチャーにこうした計画が見られます。
 
この状態でも、スタートアップ自身に豊富な資金があり、必要な知見を持っている人を雇用するなどして、他人の能力を使うことができれば、事業が進捗する可能性はあります。有望なベンチャーであれば投資家から多額の資金を集めることができるかもしれませんが、特にわが国の場合、こうした事例はまれですし、彼らを使うマネジメント能力が必要になります。
 
どこかのフランチャイザーの傘下(フランチャイジー)となり、事業に必要なノウハウを提供してもらう方法もあります。この場合でも事業開始時にフランチャイズ契約料として何百万円もの資金が必要になりますし、毎月の売上の一部をフランチャイズフィーとして支払う必要があるので決してハードルは低くなりません。
 
字数が嵩んでしまったので、Cのポジションは次回に解説します。

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