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【小説】まおとプラネタリウムーぼんやり見えるその先に あとがき
初めての小説 【まおとプラネタリウムーぼんやり見えるその先に】は、主人公・本田まおと同じ弱視であるわたしが、小学生のときの気持ちを思い出しながら書いた。
1996年当時わたしは10歳の小学校4年生だった。弱視でありながら、普通の小学校に通っていたわたしには、見える子と同じようにできないことも沢山あった。遠ざかっていく友達の後ろ姿を見ながら追いかけた動物園遠足、みんなのように上手く見えなくて戸惑っ
【小説】まおとプラネタリウムーぼんやり見えるその先に 最終話 また 会おうね
「お母さんも、旧姓が本田で名前がまおなんだ。」
お兄さんが、さっきまでまおに話していたときの口調よりも、ちょっと照れくささが入り混じったような、恥ずかしそうな口調で話し始めた。
「それに、お母さんもきみと同じ弱視で、花園小学校出身だったし、よく考えてみれば、花園公園にくっつくジャングルジムができたとき、高く飛ぶトランポリンができたとき、ぼくよりも喜んで登りたい跳ねたいって言ってたなぁ。さっきのき
【小説】まおとプラネタリウムーぼんやり見えるその先に 第6話 未来への希望
まおとお兄さんと図書館司書ロポット・フラワーは、花園図書館の中を歩き始めた。天井はとても高く、青空が広がっているような雰囲気だ。3階建てだが、階段がなく、全体が緩やかなスロープによって連続的に結ばれているので、まるで街の中を歩いているかのような感覚になる。
「これ、外じゃないよね?」
まおの問いかけに、フラワーが聞き取りやすいはっきりとした声で説明を始めた。
「花園図書館館内は、中世ヨーロッパを
【小説】まおとプラネタリウムーぼんやり見えるその先に 第5話 まお、おどろきの連続
車がまおのすぐそばに迫ってきていることを感じ、まおはとっさに座り込んだ。
ーおかあさん!ー
まおは目を強くつぶって、心の中でおかあさんと叫んだ。
「大丈夫?!」
「え?」
まおが顔をあげると、お兄さんが隣に駆け付けてきていた。
先ほどまおに接近していた車は、まおの1mほど前に止まっていた。
「危ないから、気を付けてね!」
車の中の女性が窓を開けて、まおたちに言った。
「すみません!」
お
【小説】まおとプラネタリウムーぼんやり見えるその先に 第4話 トラベルランドへようこそ
まおとお兄さんは、子ども科学館の館内を歩き始めた。少し歩くと、【トラベルランド】と大きな文字で書いてある看板が見えた。
「あれ、なんだろう?楽しそう!」
お兄さんとまおは、その部屋に入った。すでにそこには、数組の親子連れがいる。部屋には、映画館のような椅子が沢山配置されていた。
「つぎは、10分後に出発できるから、椅子に座って待ってよう」
「どこに出発できるって?どういうこと?」
「楽しみにして
【小説】まおとプラネタリウムーぼんやり見えるその先に 第3話 ココを楽しまなきゃ
目の前に広がる見たことのない光景に、まおはプラネタリウムのドアの前で立ちすくんでいた。
「大丈夫?」
お兄さんが心配そうにまおの顔を見ている。
「恐竜が・・・飛び出してきそうで怖いなぁって。」
「あれは、そういう風に見える映像だから、実際には飛び出してこないから大丈夫だよ。」
「こんなの見たことないよ。でも、わたしでもよく見える。」
飛び出してこないと聞いて安心したまおは、だんだんこの見たこと
【小説】まおとプラネタリウムーぼんやり見えるその先に 第2話 お兄さん、帰りたい
見知らぬ高校生くらいの男の子に話しかけられて、戸惑っているまおに、男の子は続けて話しかけてきた。
「ぼくは、ここでバイトしているスタッフだよ。きみ、小学生くらいだけど、一人?迷子になったの?」
「友達と先生がさっきまでここにいたはずなんだけど・・・みんながいないようだけど・・・」
見知らぬ年上のお兄さんと話すことのないまおは、小さな声で緊張しながら声を絞り出した。
「友達と先生・・・?学校の
【小説】まおとプラネタリウムーぼんやり見えるその先に 第1話 不思議な子ども科学館
「はぁ、明日の社会科見学イヤだなぁ」
まおは、明日4年生で行くことになっている、子ども科学館への社会科見学のことを考えて、ため息が出た。
弱視のまおにとって、遠足や社会科見学はちっとも楽しみだと思えない。毎回ハプニングが起こる。今回だってきっと何か起こるに違いない、ドキドキの連続の社会科見学になるだろうと、まおには簡単に想像できた。
まおは生まれつき両目の視力が0.02しかない視覚障がいの