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クラフトワーク(Kraftwerk)を紹介! アウトバーン・電卓など代表曲で音楽界への影響を解説

クラフトワーク(Kraftwerk)は1960年に結成され1970年台から活躍し始めた、ドイツの音楽家集団だ。

テクノ音楽の先駆者であり、クラフトワークが音楽シーンにもたらした衝撃はとんでもない。同世代のはもちろん現代に至るまで、あらゆるミュージシャンがクラフトワークに憧れて曲を作っている。

いわゆるArtist's Artist(アーティストが惚れるアーティスト)の代表格であるビートルズやセックスピストルズに比べると知名度は低いものの、クラフトワークほどジーンに影響を与え、カルチャーを作った音楽家はいないのではないか。

今回はクラフトワークの功績、音楽性、フォロワーたちについてもがっつり解説していこう。

クラフトワークはバンドじゃなく「コンセプト」である

誰にだってちょっと背伸びしたくなる時期ってあるじゃない? 私は中学生2年生のときで、全然興味がなかったのにTSUTAYAで洋楽を借りまくっていた。クラフトワークをアー写を見たたきの衝撃はやばくて、あまりのかっこよさに一周回って素通りした。

そして赤と黒のドイツ感。そういえばドイツは国旗も赤色戦線戦士同盟もナチスのロゴも全部赤が入ってるな。

それから15年後、レコードプレーヤーを買ったので、思わずクラフトワークのレコードを買ってしまったわけだ。YMOを一緒に並べているのは意図的です。

そんなクラフトワークはそもそもバンドじゃない、という衝撃の事実がある。「クラフトワークって結局なんなんすか?」とインタビュアーからに聞かれたグループの中心的存在であり2020年に逝去したフローレンス・シュナイダーはこう答えている。

クラフトワークはバンドではない。コンセプトだ。

は?という感じだが、たしかにクラフトワークがいわゆる「バンド」ではないのはすごく伝わる。その背景として、めっちゃメンバーチェンジ多い。ころっころ変わっていく。そもそも結成当時は2人で今は4人、脱退したのは8人。バンド、というとコミュニティ内の結びつきが強いイメージだが、クラフトワークの場合は「KRAFTWERK」という箱があって、コンセプトのなかでは誰でもよしという感覚を覚える。

フローレンス・シュナイダーは前のセリフの後にこう続ける。

僕らは人間という機械なんだ。

これこそがクラフトワークを端的に言い表した音楽だ。まさにモダニズムならではの超絶理論的で、マシーンのような思想が如実にグループに表れている。

では具体的にクラフトワークについて見ていくとともに、彼らが発明した音楽ジャンル・テクノポップについて一緒に探っていこう!

クラフトワークの経歴をざっくり解説

クラフトワークはもともとラルフ・ヒュッターとフローリアン・シュナイダーの2人で立ち上がった。ドイツ・デュッセルドルフ音楽院の「即興音楽クラス」のクラスメイトだったらしい。なにその就職に弱そうな学部。

1970年に主にこの2人で結成。当時のドイツではサイケデリックミュージックが流行り始めていた。サイケの特徴はドラッグを吸ってわけわからん幻覚を見ながら発想を飛ばし、とにかく反復するユニークなメロディを作るというジャンル。最初はアメリカのフォークソングやファンクなどから始まったムーヴメントだ。

クラフトワークは電子音楽を使って、このサイケデリックミュージックを初めて演った。厳密にいうと最初は同じドイツのバンド・Clusterだったが、ノイズに溢れすぎていて流行らなかった。クラフトワークはメロディやハーモニーを載せてポップにしたことで電子音楽の元祖として成立した。

その後、4thアルバム「Autobahn」がイギリスとアメリカで大ヒットする。当時はこの二カ国がポップスの中心になっていた。ビートルズ、ローリングストーンズ、キンクス、ティーレックスなどなどのロック全盛の時代である。急にオシャレなぴこぴこテクノポップが現れたのだ。アメリカもイギリスも、さぞかし驚愕しただろう。

英米以外のポップアーティストがこんなにもヒットするのは異例中の異例であり、みんな「なんやこのテクノカット集団!ピコピコゆうとるで!」と興奮したわけだ。

クラフトワークは20世紀最高のインフルエンサーである【影響を受けた作品紹介】

クラフトワークの与えた影響はヨーロッパ圏内だけに収まらなかった。そのサウンドは「ポスト・パンク」ともいわれる。

先述したように、当時はロック全盛の時代だ。とにかくしゃがれたギターでアナーキズムをかき鳴らしていたなか、力の抜けたテクノポップが現れたわけである。クラフトワークの音楽性をメンバーであるカール・バルトスは「ファンキー・テクノ・ポップ」の3つであらわした。

この登場にいちばん先に食いついたのは耳の肥えた音楽オタクでも、評論家でもない。ロックアーティスト自身だ。当時の英米で売れまくっていたアーティストたちが「やべえ新しすぎる!」とクラフトワークに会いに行き、自分の音楽に取り入れ、見つめ直すわけだ。

例えばデヴィッド・ボウイは好きすぎてクラフト・ワークのライブの最前席を買い占めたし、ジョイ・ディヴィジョンはクラフト・ワークを見て機材を改めた。

そのほかにも明らかに影響を受けているアーティストたちをズラーっと見ていこう。

マドンナの「Music」のビートはクラフトワークからインスパイアされたとプロデューサーのスチュワート・プライスは語っている。

Cold Playの大ヒット曲「Talk」のギターリフは「Computer Love」からサンプリングしている。

今でも第一線で活躍するR&Bシンガー、ミッシー・エリオットの「Lose Control」のバッキング音は確実に「Hall of mirrors」から引っ張ってきてる。

この他にもクラフトワークのフォロワーは山ほどいる。誰もがクラフトワークを愛し、喜んで影響を受け、しかも「クラフトワークに影響を受けてるんです!」と嬉々として宣言した。なんか、こう、言いたくなっちゃうのだ。

・デヴィッド・ボウイ
・ニューオーダー
・ヒューマン・リーグ
・レディオヘッド
・ナインインチネイルズ
・ファーギー
・アンダーワールド
・ダフト・パンク
・アフリカ・バンバータ
・ジェイ・ズィー
・アトモスフィア
・ジュラシック・ファイブ
・プライマルストリーム

このラインナップはグラミー常連のスーパースターだらけだが、もっとすごいのはジャンルを問わないという点だ。

決してテクノだけじゃない。ハードロック、ポップス、スウィング、メタル、ファンク、ヒップホップに至るまで、ありとあらゆるジャンルのアーティストがクラフト・ワークを(あからさまなくらい)自分の作品に取り入れていった。

クラフトワークのインフルエンスはもちろん日本にも上陸した

もちろん、クラフトワークの影響は日本にもあった。なかでもいち早く見つけたのは坂本龍一であり、Yellow Magic Orchestraは明らかにクラフト・ワーク色が強い。

がっつりテクノカットだし、ジャケットにマネキンを使ってるし、ほぼ同じタイトルの曲をいくつか作っている。特に似ているのは「インソムニア」と「ショールームダミー」だろうか。

そのほかでいうと渋谷系の代表格・ピチカートファイブの小西康陽もファンであることを公言していて「Contact」という「Pocket Culculator」そっくりな曲を作ったりしている。

また今ではすっかりTwitterおじさんと化した平沢進がもともと在籍していたP-MODELの「Clear」は完全にクラフトワークスタイルで作ったとメンバーが証言している。

電気グルーヴの「ツルッとフランス子守唄」は「ツールドフランス」の冒頭をクソほど馬鹿に(リスペクト)していて笑える。

またビジュアルでいうとサカナクションの横一列MacBookスタイルは完全にクラフトワークへのリスペクトである。

ネーミングでいうと「筋肉少女帯」というバンド名はクラフトワークの「人間解体」というアルバム名から着想を得たらしい。

そしてクラフトワークの遺伝子は現代へ

さて今回はクラフトワークが作り上げたテクノポップというジャンルと、そのインフルエンサーっぷりについてまとめてみた。いや、こう書き出してみると半端じゃない。どれだけ多くのアーティストが影響を受けているのかわからない。

そして当時、影響を受けたバンドのそれまたフォロワーが現在の音楽シーンにいることも注目だ。たとえばCorneliusは完全にYMOの影響を喰らっているし、エミネムはアフリカ・バンバータの影響を受けている。

そういった意味で、20〜21世紀の音楽を語るうえでクラフトワークの功績は計り知れない。まさに音楽界随一のインフルエンサーであり、いまだに唯一無二のコンセプトだ。

現在でも活動しているクラフト・ワークだが、最後のアルバムは2006年で止まっている。ハンスやフローレンスが若いころに今みたいな電子機器があったらどんな音楽を作っていたのだろう。

聴いてみたいような、このままでいいような……。なんかもう、脳に直接語りかける音楽とか作ってそうで、ちょっと怖すぎる。

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