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2021年の美術展をずらっと紹介! コロナ明けは生でアートを見つめよう

2020年は新型コロナウイルスの影響によって、予定されていたあらゆる美術展が中止・延期になった。皆さま楽しみにしていた展示もありましたよね。しかし絵より命のほうが大事なので致し方なかろう。

特に2020年の夏ごろは東京五輪での海外客到来を見込んで「ジャパン・アートの素晴らしさ」「バンクシーのやばさ」を訴えたイベントを予定していたが、見事にずっこけたのが同情を通り越してちょっとおもしろかった。

2021年、まだまだ油断はできないが、ワクチンの接種もいよいよ始まりかけており、終息に向かいそうな気もしている。我々アートオタクとしては2021年、ようやく生で絵画鑑賞ができるという歓喜の年になるだろう。

そこで今年に開催される美術展について、ずらっと並べてみよう。まだ今年の予定を立てていない方は、ぜひ美術館に行く際の参考にどうぞ。

「特別展 国宝 鳥獣戯画のすべて」

東京国立博物館で4月13日~5月30日まで開催される「鳥獣戯画展」は、おそらく2021年開催予定の美術展で最も人を集めることになるでしょう。また各美術誌も大注目している。なぜなら全長44メートル、甲乙丙丁の全4巻が史上初めて公開されるからだ。カエルがやウサギが遊んでいるあの甲巻の名場面だけでなく、すべてを確認できるわけだ。

特に人気の甲巻は「動く歩道」にのって鑑賞できるという最高さ。ちなみに「アリが歩く速さ」で動くらしい。嘘でしょ。流石に遅すぎやせんか?

コンスタブル展

三菱一号館美術館で2月20日~5月30日まで開催中。コンスタブルとターナーという、現代まで続く風景画の基礎を作った2人の展示を開催中。2人の出生から作品までは上記の記事で解説しています。

バッチバチのライバル関係はマンガみたいで楽しい。この展示はコンスタブルとターナーがやり合ったロイヤル・アカデミー展の内容を日本では初めて見せているのが素晴らしいです。

佐藤可士和展

国立新美術館で2月3日~5月10日まで開催中。日本をリードしてきたデザイナー佐藤可士和の仕事をほぼほぼまとめてきっている。この「やりきっている」のがすごい。

とにかくめちゃめちゃお金がかかっており、デザイナーだけではなく「コミュニケーションのあり方」もおもしろく見られる展示。

没後70年 吉田博展

東京都美術館で1月26日~3月28日まで開催中。福岡、京都と巡回してきて、東京会場でもスタートした。吉田博は日本の風景画家の第一人者であり、日本の木版画を自ら世界に輸出して評価された名手の1人である。ダイアナ妃が持っていたことでも有名です。

彼の木版画の色彩には惚れ惚れする。また「世界百景」をもとめて世界を旅したことでも知られており、世界の風景と日本的な木版画の融合も素敵だ。

三菱創業150周年記念・三菱の至宝展

三菱一号館美術館、コンスタブル展の後は6月30日~9月12日まで「三菱創業150周年記念・三菱の至宝展」が開催される。

岩崎弥太郎をはじめとする4代目社長までの世代で集めた国宝12点を含むコレクションが並ぶ。けっこうターゲットは年齢層高めで、渋めの展示ではあるが「日本の美」を近くで感じられる展示だ。

渡辺省亭 ~欧米を魅了した花鳥画~

3月27日~5月23日まで東京藝大美術館で渡辺省亭の作品が一挙に並べられる。美術館での開催ははじめてのことだ。渡辺は江戸~大正期の画家である。

かなりアウトローで、画壇ではなく市井で好きに描くスタイルだったので日本美術史ではそこまで評価されていない。しかし1878年のパリ万博では、その作品性にドガが驚嘆した。

あやしい絵展

東京国立近代美術館で3月23日~5月16日まで開催される。いやー、タイトルからしてウケそうです。数年前に「怖い絵」が流行ってから、こうしたバズっぽい企画が増えた印象だ。

美術オタク向けではないが、今から美術にはまる人向けとして、こういうライトな企画も良いよね。見どころとしては「あやしさ」の奥にあるヒューマン・ストーリーを読み解くこと。何があったからこの絵ができたのかを考えることで、作品展示に奥行きを出している。

生誕150周年記念 モンドリアン展 純粋な絵画を求めて

SOMPO美術館で3月23日~6月6日まで開催される。新造形主義の代表的な画家・モンドリアンの作品が展示される。

最近、コンバースコラボなんかもしていたモンドリアン。抽象絵画が、若い人のなかで再評価されているとも聞く。その至高のコンポジションについて見てみるのはアートだけでなく、デザインの観点としても面白い。

マン・レイと女性たち

7月13日~9月6日までBunkamura ザ・ミュージアムで開催。ダダ・シュルレアリスムフリークとして、マン・レイの展示があることは死ぬほど嬉しい。マン・レイはモンパルナスのキキをはじめ「ミューズ」を糧に作品を作った写真家だ。

ちょっとアングラだが、彼の写真にはパワーがあるし、エロスもある。これ「若者の街・渋谷のど真ん中でやる」のが良い。今やスマホカメラとSNSの進化もあって「ポートレート文化」がブームになっている。キレイな空や街並み、美味そうなメシなどももちろん見ていて素晴らしいものだ。

しかしマン・レイのような、サブカルでアングラな写真もたまにはいいだろう。そこには「映え」とは違うパワーがある。

バンクシーって誰?展

去年、延期となった「バンクシーって誰?展」が8月21日~12月5日まで寺田倉庫で開催される。もともと2020年の8月開催予定だったのが、コロナで1年延びた形だ。

「バンクシーって誰?」という「謎」は、この1年でものすごく明るみに出てきた。明るみに出過ぎて、いささかブームも去った気がしている。しかしまだまだ根強いバンクシー人気。この展示会もヒットしそうだ。

アナザーエナジー展 挑戦し続ける力

4月22日~9月26日まで森美術館で開催される同展では、70代〜100代の女性アーティスト16人に焦点を当てた展示になっている。

近年、特に「強い女性像」が話題になっているなか、これもSNSなどで話題になりそうな企画だ。女性向けだが、男性が見てもエネルギーを感じるだろう。

そのほかの展示

2021年の美術展はもちろんこれだけではない。そのほかにも時代、コンセプトさまざまな展示会があるので、ぜひとも注目したいところだ。

フジター色彩への旅

ライゾマティクス_マルティプレックス 

クールベと海展 ーフランス近代 自然へのまなざし

ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵作品展(仮称)

隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則

ファッション イン ジャパン

イサム・ノグチ 発見への道

ポーラ美術館コレクション展 甘美なるフランス

印象派・光の系譜ーモネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン(仮称)

「五輪に合わせた展示」は意外と少ない

今回のラインナップを見ると、2020年のように東京五輪に合わせて、海外客向けにした展示はあまりキュレーションしていないようですね。去年で予算使い切ったのかな……。

またコンスタブル、印象派、クールベ、吉田博、コロー(バルビゾン派)など、世界中の風景画の展示が多いのも注目ですね。「コロナで外に出られないから、せめて絵の中だけでも」という裏テーマがあるのかもしれない。

もちろん、ここで紹介したのは東京近郊の一部のしかも大きな美術館の展示会のみです。そのほか各道府県に美術展示があるし、小さなギャラリーでは有名作品にないパワフルな創作物を見られます。

きっとコロナが落ち着くであろう2021年、お好きな作品をお腹いっぱい楽しみましょう。私も随時、書簡と感想をアップできたらいいな〜。

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