マガジンのカバー画像

ジュウ・ショのサブカル美術マガジン

64
美術についてサブカルチャー的な視点から紹介・解説。 学術書とか解説本みたいに小難しくなく、 極めてやさしく、おもしろく、深ーく書きまーす。
運営しているクリエイター

#デザイン

メソポタミア美術とは? シュメール人・アッシリア人の表現力がすさまじい件

さて、大学の真剣な講義ってのは、意外と頭に残んないもんだ。専門的な内容はあんま話さずに、高田純次バリのテキトー加減でフラフラしゃべってたアゴヒゲMAXのおじいちゃん先生のほうが、意外と記憶に残っているのである。どうもこんにちは、キアヌ・リーブスです。ははは違うかぁ、ははは。 専門的な分野の話というのは、ちょっとユーモアがなけりゃ耳に入ってこないんだと思う。少なくとも集中力のない私はそうでした。 そんなテキトー加減で西洋美術史をお伝えしていく所存のこの連載。ぜひノートとペン

原始美術ってなに? オーリニャック、ラスコー、アルタミラなどの洞窟絵画と造形の特徴

と、まぁいきなり酔っ払ってみましたが、私は真剣に「西洋美術って難しく書かれすぎじゃねぇか」と思っとりますよ。なんかもう「大谷翔平ばりにワインドアップで振りかぶって書きました!」みたいなね。重い。もうどの書籍も官僚がしゃべっているような文章で、イラストたっぷりのかわいい本でも、ちょっと小難しく見えちゃいますよね。ちいかわの横で、岸田首相がしゃべってんですよね。 この連載ではもっとおしゃべりするような感覚で、でもしっかり内容がある感じでやっていきます。「大学の講義」というよりは

ミケランジェロ・ブオナローティとは|88年の生涯から作品・生き様を徹底解説

生前に伝記が書かれた初めての西洋芸術家、それが「ミケランジェロ・ブオナローティ」だ。超絶ストイックで筋肉オタクのおじさんである。たぶん今の時代に生まれてたら、イオンでササミとブロッコリー買い占めている。 生前に伝記が書かれるくらい、1500年代で活躍しており「神の如きミケランジェロ」といわれていた方だ。彼によって(美術的な意味での)ルネサンスが終わり、マニエリスム、バロック時代に突入していく。それくらいミケランジェロの作った作品はレベチだった。 誰しも名前は聞いたことある

Chim↑Pomの展覧会がマジでやばかった|「美術館」の概念をひっくり返す回顧展

2022年2、3月は六本木ヒルズ ミュージアムが激熱です。東京シティビューでは「楳図かずお大美術展」、森美術館では「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」が開催中。いやもう完全にヤバい。ハイカルチャー貴族が住むヒルズが、名古屋のヴィレヴァンみたいになってる。絶対に地上52階でやることじゃない。もう最高なんですよね。 もうこんなもん行くしかないでしょう。とはへたたいうことで、今回は後者の「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」に行ってきたので、現地の様子をレポートします。

ジョルジュ・スーラとは|点描画の創始者が駆け抜けた31年の人生をたっぷり紹介

「点描画」というジャンルをご存知だろうか。名前の通り、真っ白なキャンバスにピッピッピッピッて点状に絵の具を塗ることで描く絵画のことである。 名前だけで「ハンパじゃなく気が遠くなる作業」ということはわかるだろう。常人がやる表現じゃない。もし隣で血眼になって一心不乱に点描画やってる奴がいたら「おい大丈夫か。病んでんのか」つって、いったんコーンポタージュ飲ます。確実にメンタルを損ねているもの。こんなやつは。 そんな点描画を19世紀に開発したのが、ジョルジュ・スーラだ。スーラって

線と色彩論争とは|プッサンvsルーベンス、アングルvsドラクロワの話

昨日、友だちの友だちを紹介してもらって、民俗学でいう「境界」についてのお話を伺った。いや、これがめちゃんこおもろおもろ祭りだった。精神的にはもうハッピ着て太鼓打ちまくってた。どんどこどんどん。 「あちらとこちらの境目」って、あらためて認識すると、すごい。白い紙に黒い線を一本すーっと引くと、あちら側とこちら側に分かれる。あの世とこの世とか、男と女とか。そんな区分けが生まれる。区分けがはっきりしていると安定するが、その境目は不安定であり、よく怪異が出てくる、と。 いや、これマ

「奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム展」のレポ|ファッションは己の無意識の具現だ

学生時代に「量産型」という言葉について考えたことがあった。 「ふむふむ。量産型ということは、つまり家内制手工業ではなく工場制手工業でつくられたレディメイドである。あって、要するにプロダクトデザインとして機能を意識しているゆえ『使いやすさ』を重視しているのだな。ふむふむ。保温性や頑丈さと同じラインで『周りに馴染む』という機能があるゆえに黒やグレー、ベージュといった合わせやすい色が量産型のメインカラーになるのか」と、あの10代後半の文学男子特有のナルシズム全開で小難しく考えてい

フラゴナールの『ぶらんこ』とは|ロココ美術の成り立ちからディズニーとの関わりまで徹底解説

突然だが、私はアダルトメディア研究家・安田理央さんの本が大好きです。23歳くらいのときにインセクター羽蛾似の上司におすすめしたら、なんかもう「私いま苦虫を噛み潰しながら虫唾を走らせております」みたいな顔をされた記憶がある。これは私の若気の至りであり、当時の上司には酷いことをした。 なぜ安田さんの本が好きかというと、読んでいて気持ちいいんですよね。「あぁこの人、マジでAV好きなんだなぁ……。すげぇ正直だなぁ」と思う。普通はなかなか社会的に言いにくいテーマだけど、安田さんは軽々

北方ルネサンス美術とは|ルネサンスとの違い、特色・特徴、画家と代表作で徹底解説

「サブカルチャー(sub-culture)」というと、マンガやアニメ、アイドル、プラモ、フィギュアなどなど、ちょっとオタクチックなものを連想する方も多い。 ただ本来はもっと広義だ。アメリカのヒッピー文化の過程で生まれた「サブカルチャー」という言葉が日本に輸入された際に、アニメやマンガがマイノリティだったがゆえにオタクとサブカルが混ざったんですな。 いつの時代もメインストリームがあり、その隣でひっそりと個性を放ちまくっているのが、サブカルチャーなのである。この辺りのお話は以

ピエト・モンドリアンとは|抽象絵画を「赤・青・黄」で極めた本物の画家

さて、早速前の記事を紹介をするのも恐縮なんだが、以前、カンディンスキーという画家の話をたっぷりと書きました。 「もしかしたら本当の意味でのアートはカンディンスキーから始まったのかもしれない」という話です。抽象絵画は、今やほとんど見なくなってしまった絶滅危惧種の1つでしょう。それはもしかしたら分かりやすい作品が求められるからかもしれない。たしかに抽象絵画は「何を描きたいのか」が、めちゃ分かりにくい。これはもう言い切っていいと思う。 でもキャッチーさと引き換えに、観ている人の

ワシリー・カンディンスキーとは|「純粋な芸術」を生んだ真のアーティスト

ふとnoteを見てイラスト、二次創作の多さに驚いた。もちろんnoteだけではない。Twitterでもインスタでも、とんでもない絵師さんの数がいて、素敵な作品をあげてくれる。素敵な世の中だ。 いっぽうで、抽象絵画を見ることはあまりなくなった。もしかしたら抽象絵画は、キャッチーなキャラクター文化が主流の日本において、最も日陰に追いやられている存在なのかもしれない。 人物画や静物画のような「モチーフ」があることで、見やすくなるのは確かだ。例えば荒々しい波の上に船を一艘置くだけで

2021年の美術展をずらっと紹介! コロナ明けは生でアートを見つめよう

2020年は新型コロナウイルスの影響によって、予定されていたあらゆる美術展が中止・延期になった。皆さま楽しみにしていた展示もありましたよね。しかし絵より命のほうが大事なので致し方なかろう。 特に2020年の夏ごろは東京五輪での海外客到来を見込んで「ジャパン・アートの素晴らしさ」「バンクシーのやばさ」を訴えたイベントを予定していたが、見事にずっこけたのが同情を通り越してちょっとおもしろかった。 2021年、まだまだ油断はできないが、ワクチンの接種もいよいよ始まりかけており、

佐藤可士和展のレポート|SMAP・企業のデザイン、リブランディングのやり方を学べる展示

クリエイティブをやっていて、佐藤可士和を知らない人はいないだろう。2000年以降の日本において、佐藤可士和はトップデザイナーの1人だ。また数多くのリブランディングを成功させた、偉大なマーケター・ディレクターでもある。彼なくして今の日本企業の躍進はなかった、と言っても過言ではない。 そんな佐藤可士和の仕事を振り返る「佐藤可士和展」が2月3日から5月10日まで、東京・赤坂の「新国立美術館」で開催中だ。今日、友だちと2人でふらっと遊びに行ってきたので、早速レビューをする。 最初

ダダイズムをわかりやすく解説!作家・作品、シュルレアリスムとの違いなど

私はこれまでシュルレアリスムにまつわる記事を山ほど書いてきました。また半狂人になりながら(シュルレアリスムの代名詞的な技法である)自動筆記で作品を作っている。たまに友だちから「おい!大丈夫か!」と電話がきたりする。 それほどまでに、その哲学や概念に魅了されているわけだ。このシュルレアリスムの源流に当たるのが、1916年にスイスで生まれた芸術運動の「ダダイズム」だ。本来はヨーロッパ読みで「ダダイスム」と読むが、ここでは一般的な「ダダイズム」とする。 ダダイズムは実質的8年だ