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新型コロナウイルスの重症化の要因に血管の炎症あり

 
新型コロナウイルスに感染すると5日目以降に症状が発生し、15日を過ぎたあたりから、回復に向かう人と重症化になる人に分かれます。重症化に向かうプロセスとしては、ウイルスに反応した免疫が過剰に反応を起こすことで血管に炎症を起こし、その炎症によって血管壁を傷つけ血栓を作り、その血栓が全身に発症することで、症状の重症化が起こります。その症状は生活習慣病と酷似していることから、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病の基礎疾患を持っている患者さんは、元々慢性的に血管の炎症を抱えている状態であることから、新型コロナへの感染と重症化のリスクを最大限に憂慮しなくてはならないと考えます。重症化の方の中には、糖尿病の合併症にもある足の壊疽(えそ)が起こった例もあることから、日常的に循環器系の病気をお持ちの方は、感染対策には特に気を付けることが大事です。

note_コロナ重症化

【血管内の炎症の暴発 〜サイトカインストーム〜】
新型コロナウィルスの受容体となるACE2(エースツー)という肺の細胞の表面にあるタンパク質は、新型コロナウイルスの進入口と考えられています。最新の研究ではそのACE2は肺の表面だけではなく全身の血管にも多く存在していることが報告がされています。重症化する要因として新型コロナウイルスが全身に存在するACE2に取り付き、全身の血管に進入するのではないかと考えられています。また、人間の体の中ではウイルスに感染すると、そのウイルスを排除しようと免疫細胞が「炎症性サイトカイン」という警告物質を放出し、仲間の免疫細胞を活性化します。しかし、これが異常に増加し暴走すると「サイトカインストーム」と呼ばれる状態に陥ります。過剰に活性化した免疫細胞は血管を攻撃し始め、これまであった血管の炎症が拡大し、生活習慣病の症状が激しく急速に進行した状態になっていきます。最初は「ぼや」で済んでいた炎症が、全身性の「大きな火事」に変化し、新型コロナの重症化患者への治療を困難にする原因となっています。

【コロナ第2波が夏場に起こる可能性も!?】

コロナ第2波はメディア、専門家でも意見が分かれるところです。
8月、9月の空気の乾燥を促すエアコンを使用し、密閉状態になることで感染リスクが高くなるという点から、早ければ夏場に第2波が来ることも一部で予想されています。昨年9月にインフルエンザが沖縄で感染拡大して全国的に広がった背景も、2018年の猛暑が原因で公立の幼稚園、小中高校、特別支援学校にエアコン設置に助成金が出たことで、設置普及率が6割から8割に上がったことも原因と考えられます。今年はエアコンの使い方にも気をつける必要性がありそうです。
下記の画像は理化学研究所の発表で、夏場の無風状態に窓を開けた際の換気の際の空気の流れを映像化したものです。建物外が無風状態でも、窓を開けた場所から温度差によって空気は流れて、換気作用が働くそうです。

note_理研_飛沫3

窓を開けてエアコンを使用することで、密閉を防ぎ、温度差から空気の流れを高めて換気作用を高めることが大事かもしれませんね。
また、これからの「梅雨」の湿気も飛沫の度合いと関係してきます。
下の画像も同じく理研の発表のもので、湿度の高低差で飛沫の差を表したものです。湿度30%の乾燥した室内では、飛沫は空気と混ざって乾燥するため、2m離れた向かいの人まで届きやすく、一方湿度が90%と高い室内では、飛沫は乾燥しづらく遠くまで届かない一方、机の上に落ちやすく残りやすいという点を指摘しています。理研の坪倉誠チームリーダーは、乾燥した室内では空気中を漂う微粒子・「エアロゾル」による感染リスクを指摘されています。これからのジメジメと暑い時期を迎えるにあたって、エアコンの使い方に加えて、「梅雨」などの湿った時期は机などをこまめに消毒することもリスクの軽減に有効といえます。

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【血流が滞る「瘀血(おけつ)」体質の人は注意!】

新型コロナウイルスは全身の血管を攻撃し、血管炎を引き起こすといわれています。重症化しやすい人は血管炎症が起こりやすい状況にある人で、肥満、慢性疾患(肺疾患、心疾患、高血圧、糖尿病など)のある人、高齢者や喫煙者と発表されています。これらは東洋医学でいう瘀血(おけつ)、血流が悪いまたは血液が汚れているという体質が深く関与していると思われます。

人間の血管の長さは繋げると地球2周半にもなり、そのうち大血管は1%、毛細血管が99%を占めています。微小循環と呼ばれる細い血管の流れは健康に大きく影響します。肺、心臓、肝臓、胆管、腎臓、脳、腸、皮膚、胎盤などの臓器も細い血管の集まりです。「私は血液サラサラの薬を飲んでいるから大丈夫!」と安心することはできません。太い血管には良くても、微小循環まで良くする働きを期待するのは難しいからです。血液凝固阻止薬を飲んでいても手足のシビレやむくみを抱えている方が、漢方の活血剤(かっけつざい/血流改善作用)を飲んで改善するケースは良くありますが、これが正に良い例です。
 
「血管力」を高めるには、血流さえ良ければいいというものではありません。血管、血液、臓腑機能を総合的に捉えることが必要です。身体は全て繋がっています。血液血管は各臓器の働きの良し悪しによって大きく影響を受けます。いくら運動して血流を良くしていても、肝機能が落ちていれば血液は汚れやすくなるし、胃腸が弱ければ血が不足して流れが悪くなります。しなやかな血管、きれいで流れの良い血液、それを支える各臓器全ての条件が整わなくてはいけません。この血管・血液と臓腑を全体と捉えることは新型コロナウイルスだけにいえることではなく、あらゆる病気の予防において重要です。

〜日ごろから予防意識を高めて規則正しい生活を!〜


血液は酸素と栄養を運び、二酸化炭素と老廃物を回収します。細い血管に血液が届かなくなれば、その先にある器官や臓器には老廃物がたまり、病気の根源となってしまいます。
 
丹参(たんじん)などの生薬を用いた漢方の活血剤(かっけつざい)は、微小循環改善の働きがあることが分かっています。 それは免疫を調節する作用や、抗炎症作用、血管内膜を保護する作用、血液を固まりにくく血栓を予防する作用があることも薬理研究で分かってきています。血管をしなやかに保ち、血液の質と流れを良くし、各臓器が正常に働くように体を整えることが病気の予防をする上で、大変重要なポイントです。

活血作用のある日常食材
・お酢、納豆、玉ねぎ、そば、チンゲンサイ、紅花、ウコン、甜菜(サトウダイコン)、くわい
活血作用の生薬には、
・丹参(たんじん)、川芎(せんきゅう)、紅花(こうか)、桃仁(とうにん)、牡丹皮(ぼたんぴ)、三七(さんしち・別名田七人参)、芍薬(しゃくやく)、鬱金(うこん)、莪朮(がじゅつ)、鶏血藤(けいけっとう)等

 
また常日頃から予防意識を高めることが大切です。
ストレスを溜めない、身体を冷やさないといったことは大前提です。夏になるとシャワーで済ませたり、冷たい飲食が多くなりがちです。免疫機能は低体温だと活性しにくくなることは周知の事実です。身体を冷やせば血流循環はもちろんのこと、ウイルスに対する抵抗性も落ちてしまいます。

夏場に身体を冷やさない養生として
・心臓に負担のかからないようゆっくりと半身浴
・基礎代謝を高める筋肉を鍛える
・エアコンの温度設定を、外気と室内差を5度以内にする
・飲み物は体温程度のもの、冷たいものが続かないようにする


ストレスも血流循環と免疫に深い関係があります。
ストレスにより交感神経が興奮すると、心臓では心筋収縮力の増強と心拍数の増加が起こって心拍出量が増大し、さらに全身の末梢血管は収縮し、循環は悪くなります。これに対して副交感神経の興奮は心筋収縮力の減弱と心拍数の減少、そして末梢血管の拡張をもたらすことが知られています。
また免疫作用においても、「免疫細胞」であるリンパ球と顆粒球のバランスは6:4ですが、ストレスで交感神経が優位になると顆粒球が増加し、このバランスが崩れます。また副腎皮質から交感神経を鎮めようとコルチゾールが分泌されると、ウイルスを撃退してくれる「NK細胞」がコルチゾールをくっつけてしまう受容体を持っているため、「NK細胞」の働きが阻害されます。
「ストレスを溜めない」「いかにリラックスするか」ということを実践することが、血管や免疫を守る大事な要素となります。

もちろん、睡眠や食事などの養生生活も血流・血管、ストレスへの抵抗性を高める上で大事な要素です。特に糖尿病、高血圧、肥満、喫煙などの血管の炎症を抱える方は、今回のコロナウイルスが世界に与えた影響を真摯に受け止めながら、日々の養生を意識し、ご自身の身体に向き合っていけると良いですね。

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