Netflix『ドント・ルック・アップ』 みどころ紹介
昨年末くらいにネットフリックスで続々とオリジナル映画作品が配信されまして、どれもなかなか面白いです。
『浅草キッド』がすごい広告していたので一番目立ってましたが、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』なんてすごく地味なんですが、ものすごい作品でした。
ジェーン・カンピオンはやっぱりすごかった。
そんな中でも思いっきりエンタメをやってのけた『ドント・ルック・アップ』がめちゃ面白かったので今回noteで紹介してみたいと思います!
『ドント・ルック・バック』(12/10配信)
<あらすじ>
天文学者のミンディは、生徒のケイトと共に地球に衝突するかもしれない彗星を発見する。この人類の危機を訴えるべく奔走し、テレビ番組や大統領にまでメッセージを送るのだが…
映画について
この展開も面白いんです。
地球に彗星が衝突って恐竜が滅んだほどですが、今回は巨大彗星。とてもじゃないけど人類滅亡レベルの危機なんで、テレビ番組や政府にも訴えかけて取り上げてもらえるんですが、まさかの軽い扱い。。
こちらは本気なんだとキレたりしてみるんですが、世の中を動かしてる側のテンションが全然違うところにあるところが見えてきます。
選挙を見据えて自分のスキャンダルをもみ消すために利用しようとする大統領や、これをビジネスチャンスとしてひと儲けしようとする実業家が出てきたりして、遅々として進まない。
こんな危機なのに政治家もマスコミも経済界もみんな自分たちのことしか考えてない!
そんな現代の風潮を痛烈に皮肉ったブラックコメディなんです。
それではみどころを見ていきたいと思います。
超豪華キャスト!
この映画のすごいのがまずこの超豪華キャストです。
主人公の天文学者がレオナルド・ディカプリオで、教え子がジェニファー・ローレンス。これだけでも普通の映画なら十分なキャストですが、
大統領がオスカー女優のメリル・ストリープで、さらに補佐官が『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』でもディカプリオと共演したジョナ・ヒル。
歌手役で登場するのが本当に歌姫のアリアナ・グランデと、キット・カディ。この二人は劇中でも歌っています。
そして、スティーブ・ジョブス的な実業家にマーク・ライアンス。この人は『ブリッジ・オブ・スパイ』でアカデミー賞の助演男優賞を受賞してたし、すごい役者だなーと思ってたらNetflixの『シカゴ7裁判』でもまた全然違う雰囲気で今回もそうでもう役になりきっちゃって同一人物なのか最初気づけないくらいです。『レディ・プレイヤー1』でもスティーブ・ジョブス的な巨大IT企業の創業者を演じてました。
他にも、ディカプリオたちを軽くあしらってしまうテレビ番組のキャスターにケイト・ブランシェット。今回もちょっとビッチなセレブ具合がとてもマッチしてました。
それにティモシー・シャラメ、このスターを地方の若者という端役で起用できちゃうとこもすごい。
ロン・パールマンも頑固な軍人役がどハマりでしたし、「フレンズ」のマシュー・ペリーも出てました。
主演クラスがゴロゴロいるという、凄まじい豪華キャストです。
出てくる人たちみんなどこかで見たことあるんでどれだけギャラ払ってんのかと思っちゃいます。
アダム・マッケイ監督とは
この豪華キャストをまだあげたのが監督のアダム・マッケイ。
まずこの監督の特徴からいいますと、アメリカだけでなく世界的な大問題の事件の真相に迫り、それをとても分かりやすく、かつ痛烈な皮肉とともに笑い飛ばすブラックコメディで表現してみせる名手です。
元々ウィル・フェレルのコメディを主に手がけていましたが、その後の有名な作品でいうと『マネーショート』です。
この時の題材は、リーマンショック。
世界的な金融恐慌を巻き起こしたリーマンショックの原因はいったい何だったのか。サブプライムローンとはどういうものでなぜ破綻したのかを、料理人に「腐った魚は売れないがスープに混ぜて煮込んだら売れる」と言わせて分かりやすく説明し、過熱したマネーゲームで危機を引き起こした金融業界を痛烈に皮肉りました。
そして次に発表したのがこれまたすごい『バイス』です。
この作品は主演のクリスチャン・ベールがアカデミー賞でノミネートされました。
こちらの題材は、イラク戦争。
散々戦争してその国のトップのサダム・フセインの殺害までしておいて、大量破壊兵器なんて結局なかったという世紀のズッコケをかましたこの戦争はなぜ起こったのか。
影の大統領と言われたディック・チェイニー(当時まだ現役の政治家だったのに!)をその元凶として名指しで批判した前代未聞のブラックコメディ。
クリスチャン・ベールのチェイニーもかなり寄せていてすごかったのですが、サム・ロックウェルのアホなブッシュ大統領も愛嬌があってかなり好きです。
という感じで直近の2作品でも分かるように、現代の問題に鋭くメスを入れて笑い飛ばす。だけどその問題は結構笑えない…というブラックコメディの名手なんです。
本作のテーマ
直近2作品は、過去の出来事に対する題材をテーマに取り上げてましたが、今回はこれからの未来に対する危機を取り上げたものが今までと違うことだなと思います。
そして、地球に彗星が衝突するというが未来に予想されている訳ではなくて、これは将来的な人類の危機というメタファーです。
つまり、環境破壊からくる地球温暖化や環境問題などです。
SDGsなどでも脱炭素化などが謳われてますが、ここが結構リアルにこのままだと地球に負荷がかかりすぎて取り返しのつかない危機になるっていう現実を、"誰もが危機と分かりやすく感じられる"彗星が衝突するっていう表現に置き換えたんだと思います。
(核兵器とかウィルスとかそういう危機ももちろんあります)
そしてそんな危機を目の前にしても、選挙のための事情を優先したり、経済の方を優先しようとしたりする現代の風潮を痛烈に皮肉っているのが本作で、そこがこの作品のメッセージでテーマだと思います。
「現実を見ろ!、空を見上げろ(LOOK UP)」といくら言っても、「彗星なんて来ない(DON'T LOOK UP)」という人たちが出てくる。
そういう煽る人がいて、分断が進む。
そして、危機を訴えてもセレブのゴシップの方がテレビ番組として優先して取り上げる情報だったり、、
なんかすごくリアルに想像できる現代の風潮なんです。。
環境問題なんて目に見えて実感がしづらいことなんで、ちょっと後回しにしがちかもしれないんですが、本当はもっと真剣に向き合わないといけないことなのかもしれません。
以前に取り上げたドキュメンタリー映画で、スウェーデンのグレタさんが訴えていることもまさにこのことでした。
そういう環境問題も含め、いろいろな向き合わなくてはいけない課題から目背けて目の前の利益だけを追い、ツケを後に回し続ける現代の風潮をめっちゃ皮肉っている訳です。
絶妙なキャスティング
今回、豪華キャストではあるんですが、その中でもすごい絶妙なキャスティングだなと思ったのが、メリル・ストリープです。
彼女は以前にスピーチでトランプ批判をした後に、「史上最も過大評価されている女優」とトランプに反論をくらった経緯があります。
そのメリル・ストリープがまさにトランプみたいな大統領を演じています笑
しかも、息子が側近にいてそういう構図もそっくりで笑えます。
ちなみに息子役がジョナ・ヒルで、もう大好きな役者なんですが、空気読めない発言しちゃう役とかすごいハマるのでそれだけでも楽しいです。
そしてゴシップを振りまくお騒がせセレブな歌手を演じるアリアナ・グランデなんですが、彼女が劇中で歌うこの映画のオリジナルソングがめっちゃいいんです。そこはさすが歌姫。めちゃくちゃうまい。
サントラでも聞けるますのでぜひ。
▶︎「Just Look Up(From Don't Look Up)
最後に
アダム・マッケイの新作がNetflixとは。
この豪華キャストで組めちゃう予算とか本当にすごいです。
年末にNetflixオリジナル映画がいろいろと配信されていてどれもがクオリティ高いので、すごいなーと思います。
ネトフリに加入されている方は要チェックです。
そしてこういう題材を堂々とエンタメにできて、政治を思いっきり斬るようなことがしっかりできて、そこに大物俳優たちがちゃんと参加できるっていうのがやっぱりアメリカすげーなと思いました。
韓国もかなり攻めた作品多いですが、日本はこの辺り本当に弱いです。
でも日本もNetflixでオリジナル作ることもあるので(『全裸監督』とか)、ぜひいろいろとチャレンジしてもらえることを期待します。
最後までありがとうございます。