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【翻訳】村上春樹は翻訳家として、才能はどうなんだろう?

アメリカ文学のある小説を、
三人の翻訳家が訳しているのですが、
今からそれぞれの冒頭を引用します。
この中にひとつ、
村上春樹が訳した文章も
混じっています。
当ててみて下さい(笑)。

作品はアメリカの作家
スコット・フィッツジェラルドの
短編『バビロン再訪』です。
訳した人が誰かは後ほどお知らせしますね。


①「それでミスタ・キャンベルは
何処にいるんだろう?」
「スイスに行ってしまわれました。
ミスタ・キャンベルは具合が
およろしくないんですよ、
ミスタ・ウェールズ」
「それはいけないね。じゃあ
ジョージ・ハートは?」と
チャーリーは尋ねた。


②「で、キャンベルさんはどこ行った?」
とチャーリーが訊いた。
「スイスへ行かれましたよ、
ご存じなかったんですか、ウェイルズさん。
キャンベルさんはご病気が重いんですよ」
「そりゃあ気の毒に。それなら
ジョージ・ハートは?」


③「それから、キャンベルさんは
今どこ?」チャーリーは尋ねた。
「あの方はスイスへいらっしゃいました。
お身体の具合がどうもよくないん
ですよ、ウェールズさん」
「それは気の毒だな。じゃ、
ジョージ・ハートは?」


以上『バビロンに帰る』の
三種類の翻訳の冒頭だけを
引用してみました。どうですか?
全然違いますよね。
同じものを翻訳しても
こんなにも違うんですね。

ちなみに、この中に
村上春樹の訳が入っていますが、
どれだと思いますか?

では、3つの文章について
種明かし?していきます。

最初のが、実は村上春樹訳でした。
『バビロンに帰る』中央公論新社。
村上春樹翻訳ライブラリー。
1996年刊行。
村上春樹は1949年生まれ。

2番目が岩波文庫の
『フィッツジェラルド短編集』
佐伯泰樹さん。1952年生まれ。
1992年刊行。

3番めは新潮文庫の
『フィッツジェラルド短編集』
野崎孝さん。1917年生まれ。
1990年刊行。

野崎孝さんといえば、
サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』
などアメリカ文学の名作を
広く紹介してきた功績者ですね。
ただ、わりと直訳みたいで、
文章がどうもゴツゴツ感じるのは
お年のせいでしょうか?

スコット・フィッツジェラルドは
1896年~1940年。
ヘミングウェイと共に、
20世紀アメリカ文学の代表的な作家で
『グレート・ギャッツビー』は
何度も映画化されてきました。

それにしても。
村上春樹はいちばん
古風な言葉使いですが、
会話自体はいちばんテンポがいい。

村上春樹は小説家より
翻訳家としてより一層、
才能があるかもしれませんね。

少なくとも、村上春樹は
フィッツジェラルドとは相性が
良かったかもしれません。

村上春樹が近年訳した推理小説、
レイモンド・チャンドラーの
フィリップ・マーロウものは
正直、文章に忠実過ぎるためか、
推理小説のドキドキワクワクさが
薄まってしまいました。

村上春樹にとって、
レイモンド・チャンドラーは
究極的な名文の先生で、
ミステリーとかハードボイルドと
いったスノッブな位置付けにしたくない、
チャンドラーほど緻密で論理的な文章を
書いた人はいないんだから、、、
そんな思いが込められてるんでしょう。

私は、村上さんより先に、いち早く
日本にチャンドラーを広めた清水俊二訳が
ハードボイルドらしくて
ワクワクして読めました。
ただ、翻訳としては強引な意訳もあり
また、部分的にまるこど省かれていたり
原文に忠実ではなかったようです。





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