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【文学】プルースト『失われた時を求めて』翻訳者はどれが一番読みやすい?

2020年の残りを託す目標を拵えてみた。
マルセル・プルーストの
『失われた時を求めて』
岩波文庫、全14巻を読み通す、
という目標です。
長い小説はこれまで、
ドストエフスキーもトルストイも
毎回、挫折しっぱなしでしたが、
そろそろ会社にも復帰だし、
何か壮大な目標を持ってみたくなった。

社交界に夢中になる世間知らずの
中年男の抽象的な記憶の告白、、、
そんな本にどんな学びがあるだろう?
しかも十何巻もある!

学生時代は、関心はなかった。
私が学生時代は、
井上究一郎という学者が訳した
難解な翻訳があるだけで…。

2001年には、鈴木道彦氏が
井上氏に次いで、個人完訳を完成。
こちらは、長い長いプルーストの文章を
読みやすくするために、
短い文章にちぎって訳した。
分かりやすいと評判になったが、
そんなに文章をちぎって訳したら
プルーストの醍醐味が失くなるのでは?
とも言われた。

取り分け、鈴木道彦さんは
左翼的な思想の持ち主で、
そうした感性も、翻訳の中に
気配として込められているという。

井上究一郎か、鈴木道彦か、
『失われた時を求めて』の翻訳は
この二択でした。

2019年冬に、三人めの、
プルーストの個人完訳が完成した。
岩波文庫で10年近く、
数か月に一冊のペースで
翻訳文庫が本屋さんに並んでた。

吉川一義さんも、プルーストの長い文章を
ちぎってはいるけど、
そんなに、めったやたらに
短文にしてる訳ではない。
つまり、井上究一郎と鈴木道彦の
ちょうど中間のような翻訳らしい。

翻訳が完成した時に朝日新聞で
インタビューが載っていて、
その吉川さんの言葉が
印象深く心に残りました。

1970年代に、
東大大学院でフランス文学を
研究していた吉川さん。
当時は、学生運動や左翼活動が
カッコよく見える時代。
フランス文学のスターだった
サルトルが周りでも人気で、
尊敬していたんだそう。
サルトルは、マルクス主義というより
行動主義者、アンガージュマンとして、
今を生きる自分自身の改革に、
また、現実の世界を改革する事に
熱心な哲学者でした。
若い人に人気が出るはずです。

そこへ行くと、プルーストは
ブルジョア階級で、
ほとんど働きもせず、
長くてネチネチとした難解な
記憶や主観や無意識をテーマに
社交界の小説を書いた変人?

大学院時代は、サルトルに
惹かれた吉川さんでしたが、
プルーストの心理描写力や、
観察眼に魅せられていきました。

そんな、文学として特別な魅力をもつ
プルースト『失われた時を求めて』。

これを読んだからと言って、
ビジネスエリートにはなれない。
急にフォロワーさんも増えない。
抜群の企画を思い付ける訳でもない。
とにかく目の前の何かが
急に上手くいく読書ではない。

だからこそ、だからこそ、
読んでみたいんです。

だって、1970年には
フランスや日本の青年を虜にしていた
サルトルが今はこんなにも
色あせているというのに、
20世紀初頭に完成した
『失われた時を求めて』は
時代を経て、ますます、
読書世界でじわりじわりと
支持者を集めてるんです。

それから、今はまた光文社から
4人めの個人完訳が始まっていて、
今、ちょうど真ん中あたり。
これはきっと何かあります。

まずは最初の1~5巻を買ってきます。
読むぞ、今度こそ挫折しないで。
(笑)

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