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【美術】絵画の知識はどれくらい必要か?

若い人達から、よく
絵や音楽について意見を聞かれる
ようになりました。
近頃の絵や音楽は
難しくてよく判らぬ、
ああいうものが解るようになるには、
どういう勉強をしたらいいか、
どういう本を読んだらいいか、
という質問が大変多いのです。
私は、美術や音楽に関する本を
読むことも結構であろうが、
それよりも、何も考えずに、
沢山見たり聴いたりする事が
第一だと何時も答えています。
極端に言えば、絵や音楽を、
解るとか解らないというのが、
もう間違っているのです。
絵は、眼で見て楽しむものだ。
音楽は、耳で聴いて感動するものだ。
頭で解るとか解らないとか言うべき
筋のものではありますまい。


これは私の文章ではありません(笑)。
「美を求める心」という
小林秀雄のエッセイの冒頭を
抜粋させていただきました。
「絵や音楽を、解る、解らぬと
いうのがもう間違っている…」とは
なるほどと唸ってしまいました。

これは、昭和32年、1957年の文章です。
でも、今でも十分な説得力があります。
小林秀雄は、どんなに時代が進んでも、
常識が増えても、経験が増えても、
情報が溢れても、
常にブレないよう、
原点に立ち返ることを
自分に言い聞かせていたように
物事の基本を考え続けた文学者です。

最近では、ビジネス書でも
「美術の知識イコール教養」
「美術の知識は仕事の武器」
とでもいうような本が沢山出て、
「これを読めばあなたも
ビジネスエリートになれる」
なんて趣向がありますが、
絵はまず目で楽しむこと。
それが最優先課題で、
教養だビジネスマン必須知識だ
なんてことは二の次ですよね。

つい先に頭で「わかる」
「わかりたがる」のは、
悪いクセかもしれません。

「美を求める心」は
『考えるヒント』③
文春文庫に収録されてます。

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