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【出版不況】単行本と文庫が同時に出たら、本はもっと売れるようになる?

なぜ、出版社は
単行本と文庫を同時に出さないのか?

このご意見には
ちょっと目からウロコでした。

出版社の人間としては、
この発想は
持ち合わせておりませんでした。
傾聴すべき意見です。

通常、作品はカタチとして、
まず、雑誌やサイトに掲載されます。
これは読者に対してというより、
作家への執筆料といった
意味合いがが多いかもしれません。

今どき、一万部以下ばかりの
文芸雑誌に載ることに 
大きなメリットはないし、
文芸雑誌をこまめに読むのは
すでに一部の文学マニアだけ。

ただ、書き手の作家は、
この段階で、まずチャレンジングに
作品を思い切って書いてみて、
文学界隈や世の中の評判を
じっくり聞くことができる。

そんな付与褒貶を聴きながら、
雑誌掲載の次のカタチは、
「単行本」として世に出すことです。
一般的な本というのは、
この「単行本」の段階のイメージでは
ないでしょうか。

ただ、正直に言って、
小さな本屋さんでは、
単行本コーナーはあまり元気がない。
人がいない。少ない。
本当は、この単行本スペースこそ、
もっと活気づいていて欲しいのに。

この文芸の単行本コーナーに
足繁く通っている人はすでに
本好きな方々ばかりでしょう。

それから、
3〜5年を経て、
文庫本になるのが、
本の流れでいうゴールでしょうか。

冒頭で引用させて頂いた方のご意見では
この文庫を
単行本発売時に同時発売したら
もっと話題も大きくなって
その本に興味がある大勢の人に
リーチできるのではないか?という。
これは的を射たご意見です。

ただ、その一方で、
今では、
ミステリーや時代小説分野で、
描き下ろしでいきなり文庫で
発売されるケースも増えました。

時代小説好きは文庫なら買う人が
たくさんいるのでしょうね。

でも、これは
よほどの部数が見込める
人気作家の場合であり、
人気作家なら心配はないのですが、
微妙な数字になる作家も、
現実的には、多いようです。

雑誌原稿料もなく、
単行本の印税もなく、
いきなり文庫の印税だけとなれば、 
そもそも文庫の印税だけでは
苦しくなるケースも多いでしょう。

そもそも、著者の印税が
10%というのは、世界的には、
かなり著者には切ない少ない数字です。
だからといって、
今、著者印税を15%に上げる、
なんてことは、読者に喜ばれないから
そもそもできませんね。

まずは雑誌、
次に単行本、
次にデジタル版、
次に文庫、と
4回、姿を変えて世に出す機会が
あるようにしてきました。
それが習慣でした。

新発売ということで、
4回、ヤマ場をつくってきました。

それを、 
たとえば、
雑誌の後は、
単行本も、
文庫も、
デジタル版も 
一気に同時に出すことで、
話題をさらに高めて、
ヤマ場を大きくできるなら、
小ヤマではなく、
大ヤマにできるなら?

単行本、文庫、デジタルを
同時発売にして、
一回きりだけど、
ヤマ場を巨大にするのがいいか?
それとも、昔ながら、
4回、確実なヤマ場を作ることに
徹するのがいいか?

これはどちらがいいか?
本の中身自体によるでしょうね。

あとは、その本の著者や
編集担当や販売部、宣伝部が
古い習慣に囚われずに、
作品に寄り添ったスタイルにしようと
健闘してくれたら理想ですよね。

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