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【本のニュース】昭和の女性作家もまだ色褪せてない!

最近、書店で、有吉佐和子の
文庫『非色』をよく目にします。
なにか誰かにテレビで
取り上げられたらしい。
Amazonでも、ベストセラーだ。

有吉佐和子は、
「笑っていいとも」に出て
タモリやさんまを圧倒した
すごいおしゃべりの上手い
痛快なおばさんだった(笑)。
そんな印象でしたが、
作家として書いた作品はどれも
面白かった。
和歌山が生んだ数少ない天才でした。

ところで、、、。 

林芙美子『放浪記』
瀬戸内晴美(寂聴)『夏の終わり』
有吉佐和子『恍惚の人』
円地文子『女坂』
石牟礼道子『苦海浄土』
林京子『祭りの場』
野上弥生子『秀吉と利休』
河野多恵子『みいら採り狩猟記』
富岡多恵子『男流文学論』
山崎豊子『白い巨塔』
宮尾登美子『鬼龍院花子の生涯』

他にも、津島佑子、倉橋由美子、
などなど…。

昭和時代生まれの女性作家で、
想いつく人たちを挙げてみました。

林芙美子は1903年生ですが、
他の作家は1920〜1930代に
生まれた女性ばかりです。

林芙美子は日本の
昭和女性文学を方向づけた
功績は実に大きい。

ところで、この作家たちは
大同小異、根っこでは、
常に「おんな」とは何か?
正面からでなくても
横から、後ろから、搦め手から
おんなの苦悩を
滲み出さざるを得なかったような。

ただ、真正面から
フェミニストである、と
名乗っていたのは、
富岡多恵子独りでしょう。
そのこと自体が、
20世紀の男性社会の絶大さを
物語っているかのような。

いや、その下で、女性たちが
いかに対抗し、戦っていたかを
刻んでいるような?

林京子は長崎の原爆、
石牟礼は水俣病、といった
自らの宿命に取り組み、
世界に発信しました。

漱石の弟子で、
海外文化を習得していた
野上弥生子は歴史や欧米を
題材にしました。 

河野多恵子は、
谷崎を崇拝して
性的なフェティシズムを
追求し続けました。
私には気味悪い作家でした(笑)。

瀬戸内寂聴、いや、晴美は
恋愛の苦しさがテーマでした。
こんなに性、セックス、
略奪愛、不倫、三角関係を 
執念深く描いたからこそ、
身が清まったのかしら?

山崎豊子は、
初期は関西の文化を
題材にしましたが、
『白い巨塔』以後、
『不毛地帯』『大地の子』など、
社会派になって行きました。
男女の問題というよりは
国家や戦争へと視点が
大きな問題に移ります。

宮尾登美子は、
生家に染み付いた業の深い
女たちをよく描きました。

円地文子は、
源氏物語の翻訳でも
知られますね。
『女坂』は夫が作る愛人や妾の
世話を黙々とやり続ける妻の話で、
直接的なジェンダー批判より
はるかに業の深い訴えがある。
なんだかすごい小説です。

こうした作家の作品は、
山崎豊子以外は、
どうも、紙の本は、
手に入りにくくなってきました。

もったいないなあ。

だから、
今になって急に
有吉佐和子の『非色』が
話題になって、
書店に並ぶのは本当に嬉しい。

有吉佐和子は
そういえば、
どうもフェミニズムの
苦しみや痛みは余り感じられない。

『華岡青洲の妻』は
日本初の麻酔をした医師の話、
『恍惚の人』は認知症の話、
『非色』は人種差別の話、
『複合汚染』は公害の話、
毎回、社会が抱える問題を
書き続けたような慧眼が光ります。

また、何かの機会で、
昭和の女性作家の作品が
こうして、ポツリポツリと、
クローズアップされると、
なんだか、文学っていいなあ、
と思えてきて、嬉しいなあ。

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