松村淳 - 陶芸家

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松村淳 - 陶芸家

近未来陶芸 10年前の自分が知りたかった事をシェアしていきます。 Instagram: https://www.instagram.com/junmat.ceramics/ HP: https://www.jun-matsumura.com/

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「陶芸家になるには」ーランニング編ー 4 < 最後に >

資本主義社会で 陶芸家として制作環境を維持していくためには、運用資金の調達は、無視できない要素です。 マーケット編でも述べましたが、基本的に私たち陶芸作家は資本主義経済の中で、自分たちの立ち位置を見つけ、作品を基に、マネタイズしていきます。 要するに、資本主義経済のルールの中で生きていく事となります。 この項で述べたいことは、 コストの洗い出しや最適化、維持などの「守り」の部分 よりも、 根源的にすべてを回すための燃料=市場での価値の創造 です。 要するに、これまで述べてき

    • 「陶芸家になるには」ーランニング編ー 3 < 継続 >

      継続 前回までが、試行錯誤のうえ、現在私が行っているコストの最適化です。 これらを意識していなかった時期と、今を比べると、生産効率や新作のアイデアの出方が段違いです。 そもそもコストを洗い出す理由は、様々な要素の「バーンアウトを予防し、制作を継続させること」にありました。 では、実際にコストの管理をしたことで、どの様な利点があり、それが継続に繋がったのか、ここでは見ていきます。 余剰の使い方大きな発見は、コストを抑えることにより生まれる、余剰です。 この余剰をどう活用す

      • 「陶芸家になるには」ーランニング編ー 2 < コストについて >

        コストのカテゴライズ 私が経験したような、負のループに陥ってしまう理由は、見えないコストがあるからです。 前回、100万円を土に使う例を挙げましたが、実際にはあのような失敗を犯すことは少ないと思います。それは、コストが金額として見え、資産としてコントロールすることができるからです。 しかし見えないコスト…体調やメンタルは、数値化されていないため、客観的に確認することができず、負のループに陥ってしまうと考えられます。 そこで、私は見えるコストと見えないコストに分けることにしま

        • 「陶芸家になるには」ーランニング編ー 1 < はじめに >

          黒(苦労)歴史金沢の工房への入所時、ある大御所の工芸作家にお会いしました。 印象的だったのは、その方の指が、道具を持つ形に曲がり、動かなくなっていることでした。 それから5年後、私はド・ケルバン病という腱鞘炎を発症。過度な制作が原因でした。 独立前から、「若手作家は寝ずに作れ」「好きなことをしているのだから文句を言うな」という、かなり体育会系な刷り込みがあり、作業効率よりも、どれだけ長く・多く制作したかで、自分の作家としての価値を計っていました。 展示への追い込みのあとは

        「陶芸家になるには」ーランニング編ー 4 < 最後に >

          「陶芸家になるには」ーマーケット編ー 5 < まとめ >

          マクロからミクロへ陶芸という限られたジャンルの中でも、多様なマーケットがあり、戦略プランも様々だということが見て取れたかと思います。 なるべく早い段階で、自身の活動フィールドやポジションを知ることが、効率の良いスタートには重要です。 ここでは、カテゴリを3つに分けましたが、もちろんこれらのミックスもあり得ます。 キャリアプランも、作家の数だけあるかと思います。 まず重要なのは、立ち位置を俯瞰で見ることです。 大きくてカオス的に見えるマーケットを、理解できるレベルまで細

          「陶芸家になるには」ーマーケット編ー 5 < まとめ >

          「陶芸家になるには」ーマーケット編ー 4 < カテゴリ別ルート >

          カテゴリ別ルート 現代陶芸には、大きく分けて3種類のマーケットが存在し、それらを3つの要素(柔軟性のピラミッド)により比較してきました。 スタイルを確立している方は、なんとなく自身のポジションが見えてきたかと思います。 陶芸家も他職業と同様、資本主義経済のなかでは、常に価値を高めていくベクトルから逃れることはできません。 価値の高め方も、それぞれのスタイルやカテゴリにより、様々です。 早い段階から、どの様な選択肢があるのか、知識として持っていて損はありません。 この項

          「陶芸家になるには」ーマーケット編ー 4 < カテゴリ別ルート >

          「陶芸家になるには」ーマーケット編ー 3 < マーケットのカテゴライズ >

          マーケットのカテゴライズ 自身のポジションを確認するために必要な視点が、もう一つあります。 それは、実際のマーケットへの知識です。 需要を見つけるにしろ、需要を作り出すにしろ、実際に作品の売買が行われている市場を知ることは、自身のスタイルの可能性や、価値を最大化させるために必要不可欠です。 この項での目標は、 自身のスタイルに、一番近いマーケットを見つける ことです。 日本の陶芸マーケットは、歴史的な経緯もあり、かなり成熟しています。 作り手のみならず、買い手の

          「陶芸家になるには」ーマーケット編ー 3 < マーケットのカテゴライズ >

          「陶芸家になるには」ーマーケット編ー 2 < スタイルのピラミッド >

          スタイルのピラミッド スタイルの柔軟性外の世界=マーケットは、広く、複雑に絡み合った世界です。例えると、とても大きな海原で、ところどころ他の海(ジャンル)と繋がっているようなイメージです。 この広く、様々な要素が絡み合った世界を、一個人がコントロールすることは、ほぼ不可能に近いと考えています。 では、海原を上手に航海するにはどうすればいいのか… そこでポイントになるのが、「スタイルの柔軟性」です。 ここでいう柔軟性とは…「マーケットの流れに、自身のスタイルが、うまく乗る

          「陶芸家になるには」ーマーケット編ー 2 < スタイルのピラミッド >

          「陶芸家になるには」ーマーケット編ー 1

          はじめに前章のスタイルの作り方編では、陶芸家になるために最も大切な軸となる、自身の「スタイル」を探る方法を見てきました。 基礎を吸収しながら自身の「性質」を探り、さらにそれを深めていく。 陶芸を趣味として続けていくなら、前章の段階で充分に楽しめます。 しかし、「陶芸家になる」には、自身の技術・知識で 「収益を得る = マネタイズ」 することからは逃れられません。 そして、収益を得るには、資本主義経済圏で生きている限り、「マーケット」への参加が必要になります。 要するに

          「陶芸家になるには」ーマーケット編ー 1

          「陶芸家になるには」ースタイル編ー 17 <離:スタイルを育てる>

          スタイル編 まとめ 性質増幅装置 以上、「陶芸家になるには ー スタイル編」を見てきました。 陶芸家としてキャリアを積んでいくには、自身の「性質」を知ることが、どうしても必要になってきます。 私は、なるべく「個性」や「長所」という言葉を使うのを避けてきました。 第一線で活躍しているアーティストと比べて、自分にもあんな才能があれば…と、うらやむ。 今でも度々、比べてしまうことがあります。 「個性」や「長所」と言われると、なんとなく誰よりも秀でた、一番を取れる分野と感じ

          「陶芸家になるには」ースタイル編ー 17 <離:スタイルを育てる>

          「陶芸家になるには」ースタイル編ー 16 <離:スタイルを育てる>

          フィードバック インプット、アウトプットの量・質。 このどれもが、「選択」と「判断」を必要とします。つまり、フィードバックありきなのです。 インプットの方向性や選択。 アウトプットの軌道修正や方向性の判断。 これらの行動は、すべてフィードバックを通して行われます。 そしてフィードバックこそが、唯一作家がコントロールできる要素なのです。 理由は、 インプットは、知らないことを吸収する行為です。 → そのため、絶対的な予測は不可能です。 アウトプットは、作家の身体とい

          「陶芸家になるには」ースタイル編ー 16 <離:スタイルを育てる>

          「陶芸家になるには」ースタイル編ー 15 <離:スタイルを育てる>

          ▽アウトプット(質) 惹かれるポイントや、コンセプトが見えてきたら、今度は作品を完成まで持っていきます。 先ほどの粗削りな部分を、自分が納得いくまで明瞭にしていくイメージです。 これがアウトプットにおける、質となります。 作品を完成まで仕上げると… 全体の雰囲気を感じることができる 細部まで確認することができる このような、ラフスケッチでは見えなかった部分が見えてきます。 これらが見えてくると… 惹かれた部分が明確になる 問題点の発見 要求される技術 など、

          「陶芸家になるには」ースタイル編ー 15 <離:スタイルを育てる>

          「陶芸家になるには」ースタイル編ー 14 <離:スタイルを育てる>

          ▽アウトプット(量) インプットを常に入れつつ、アウトプットも並行して行っていきます。 アウトプットを行うタイミングですが、私は自分に正直に行っています。 インプットばかりしていると、何か作りたくなるし、アウトプットばかりしていると、何かから刺激を受けたくなってきます。 アウトプットの重要なところは、乱雑な頭の中を、一度外に出すことです。 脳は複雑な形を認識できますが、イメージすることができません。 目を閉じて正三角形を思い浮かべてください。 …簡単ですよね。 次は

          「陶芸家になるには」ースタイル編ー 14 <離:スタイルを育てる>

          再度自己紹介

          自己紹介の記事で、インタビュー頂いたとお知らせしたのですが、その記事が掲載された情報誌が出版となりました。 とても分かりやすくまとめて頂いたので、是非書店でお手に取って頂ければ。 「炎芸術 No.155 2023秋」 僭越ながら、要約させて頂きました。 外舘和子様、素敵な文章ありがとうございます。

          「陶芸家になるには」ースタイル編ー 13 <離:スタイルを育てる>

          ▽インプット(質)インプットの定義は、 経験や知識を深層心理に入れ込むことです。 生まれてから今まで、何も経験せず、これを読んでいる方は皆無です。 そしてインプットこそが、その人らしさの骨格となっています。 もちろん遺伝的な特性や能力の違いはありますが、経験や生育環境は人格形成に大きな割合をしめます。 このインプットがなければ、私たちは何もアウトプットすることができません。 「破」でフロー学習を使い、基礎をインプットしました。 そして、基礎のインプット、作品のアウ

          「陶芸家になるには」ースタイル編ー 13 <離:スタイルを育てる>

          「陶芸家になるには」ースタイル編ー 12 <離:スタイルを育てる>

          離:スタイルを育てる 「破」では、フロー学習を行い、効率的に基礎を吸収しつつ、スタイルの芽を見つける方法を紹介しました。 基礎の幅が増え、スタイルを深める段階に入ってくると、自分の「目」が変化していることに気が付きます。 この段階で「離」、すなわち基礎からオリジナルへの重心移動が行われます。 ポイントとなるのは、「目」の部分。内省です。 「破」で述べたフロー学習の構造は… アウトプット ↔ インプット ↕        ↕ 内

          「陶芸家になるには」ースタイル編ー 12 <離:スタイルを育てる>