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星の王子様 読書記録 第15節 地理学者との出会い

2005年に星の王子様の著作権は切れました。ここは私のフランス語学習の場であるとともに、文学を研究する場です。長い文章が続いて大変ですが、頑張ります。何か前回の点灯夫の話は人気だったみたいですね💦。

  La sixième planète était une planète dix fois plus vaste. Elle était habitée par un vieux monsieur qui écrivait d'énormes livres.
  <Tiens! voilà un explorateur!> s'écria-t-il, quand il aperçut le petit prince.
  Le petit prince s'assit sur la table et souffla un peu. Il avait déjà tant voyagé!
<D'où viens-tu? lui dit le vieux monsieur.
--Quel est ce gros livre? dit le petit prince. Que faites-vous ici?
--Je suis géographe, dit le vieux monsieur.

 6番目の惑星は10倍大きかった。そこには、とてつもなく大きな本を書いている年老いた男性が住んでいた。
<おや!探検家だな!>彼は王子様を見るや、叫んだ。
王子様はテーブルに腰を掛けて、一息ついた。彼はもううんと旅をしてきたのだ。
<どこから来たんだね?>老人は言った。
<その大きな本はなんですか?>王子様は言った。あなたはここで何をしているの?
<私は地理学者だ。>老人は言った。

--Qu'est-ce qu'un géographe?
--C'est un savant qui connaît où se trouvent les mers, les fleuves, les villes, les montagnes et les déserts.
--Ça c'est bien intéressant, dit le petit prince. Ça c'est enfin un véritablement métier!> Et il jeta un coup d'œil autour de lui sur la planète du géographe.Il n'avait jamais vu encore une planète aussi majestueuse.
<Elle est bien belle, votre planète. Est-ce qu'il y a des océans?
--Je ne puis pas le savoir, dit le géographe.
--Ah!(Le petit prince était déçu.) et des montagnes?
--Je ne puis pas le savoir, dit le géographe.
--Et des villes et des fleuves et des déserts?
--Je ne puis pas le savoir non plus, dit le géographe.
--Mais vous êtes géographe!

<地理学者って何ですか?>
<海や、川、町、山、そして砂漠がどこにあるのかを知っている学者のことだよ。>
<面白いですね。>王子様は言った。
<これぞ本当の仕事だ!>
そして彼は、地理学者の惑星をちらっと見渡してみた。彼はこんなに威厳のある惑星を見たことがなかった。
<とてもきれいな星ですね。大洋はあるんですか?>
<それを知ることはできないのじゃ。>地理学者は言った。
<ああ!(王子様はがっかりした。) では山は?
<それを知ることはできないのじゃ。>地理学者は言った。
<では町や花や砂漠は?>
<それも知ることはできないのじゃ。>地理学者は言った。
<でもあなたは地理学者でしょう!>

🌈単語
jeta
♢jeterの単純過去形第3人称
①・・・を投げる、ほうる;投げ入れる、放り込む
②・・・を(無造作に)投げ出す、放り出す;投げ捨てる、捨てる
④[視線、言葉など]を投げかける;[光など]を投射する、放射する;[においなど]を放つ、発する

 --C'est exact, dit le géographe, mais je ne suis pas explorateur. Je manque absolument d'explorateurs. Ce n'est pas le géographe qui va faire le compte des villes, des fleuves, des montagnes, des mers, des océans et des déserts. Le géographe est trop important pour flâner. Il ne quitte pas son bureau. Mais il y reçoit les explorateurs. Il les interroge, et il prend en note leurs souvenirs.
Et si les souvenirs de l'un d'entre eux lui paraissent intéressants, le géographe fait faire une enquête sur la moralité de l'explorateur.
--Pourquoi ça?
--Parce qu'un explorateur qui mentirait entraînerait des catastrophes dans les livres de géographie. Et aussi un explorateur qui boirait trop.

🌈訳
<その通りだ。地理学者は言った。でも私は探検家ではない。まったく探検家がおらんのだ。村、川、山、海、そして大洋、砂漠を数えに行くのは地理学者ではないよ。地理学者はあまりにも重要なので、散歩したりはできないのだ。部屋から出ることもしない。だが、探検家をそこで迎え入れる。彼らに質問し、それを記録するんだ。
そしてもしその中の一つの記録が興味深いようであるならば、地理学者は探検家の品行調査を行う。
ーーどうしてそんなことを?
ーー嘘をつく探検家は、地理学の本をぐちゃぐちゃにするんだ。大酒のみの探検家もそうだ。

--Pourquoi ça? fil le petit prince.
--Parce que les ivrognes voient double. Alors le géographe noterait deux montagnes, là où il n'y en a qu'une seule.
--Je connais quelqu'un, dit le petit prince, qui serait mauvais explorateur.
--C'est possible. Donc, quand la moralité de l'explorateur paraît bonne, on fait une enquête sur sa découverte.
--On va voir?
--Non. C'est trop compliqué. Mais on exige de l'explorateur qu'il fournisse des preuves. S'il s'agit par exemple de la découverte d'une grosse montagne,on exige qu'il en rapporte de grosses pierres.>

🌈
 どうして?王子様は言った。
飲んだくれは物が二重に見えるからさ。すると地理学者はたった一つの山しかないところに、二つの山を書いてしまう。
 ーー僕は一人そういう人を知ってる。悪い探検家だったのかも。
 ーーそうかもしれん。探検家が品行方正に見える時は、彼が発見したものについて調べる。
 ーー見に行くの?
 ーーいいや。それは複雑すぎる。でも、証拠を出すように探検家に要求する。例えば、もし彼が大きな山を発見してきたのであれば、大きな岩をもってくるように要求する。

Le géographe soudain s'émut.
<Mais toi, tu viens de loin! Tue es explorateur! Tu vas me décrire ta planète!>
Et le géogpraphe, ayant ouvert son registre, tailla son crayon.
On note d'abord au crayon les récits des explorateurs. On attend, pour noter à l'encre, que l'explorateur ait fourni des preuves.
<Alors? interrogea le géographe.
--Oh! chez moi, dit le petit prince, ce n'est pas très intéressant, c'est tout petit.
J'ai trois volcans. Deux volcans en activité, et un volcan éteint. Mais on ne sait jamais.
--On ne sait jamais, dit le géographe.
--J'ai aussi une fleur.
--Nous ne notons pas les fleurs, dit le géographe.
--Pourquoi ça! c'est le plus joli!
--Parce que les fleurs sont éphémères.
--Qu'est-ce que signifie : "éphémère"?

🌈
地理学者は突然興奮した。
 <でも君、君は遠くからやって来た!君は探検家だ。君の惑星を私に説明してくれ!>
そして地理学者は、帳簿を開いて、鉛筆を削った。
最初は、探検家の話を鉛筆で記録する。そして、インクで書くために、探検家が証拠を持ってくるのを待つのだ。
 <で?> 地理学者は促した。
 ーーあ、僕んちは、あまり面白くないですよ。とっても小さいから。3つの火山があります。2つの火山は活火山で、1つは休火山です。でも、どうなるかわかったもんじゃないですけど。
 ーーわかったものではないね。 地理学者は言った。
 ーー僕は1本の花も持っていますよ。
 ーー我々は花は記録しないよ。地理学者は言った。
 ーーなぜ!一番美しいんですよ!
 ーー花ははかないからね。
 ーーはかないってどういう意味?

🌈単語
✅encre
♢女性名詞
①インキ、インク
émut
♢他動詞
①・・・(の心)を動かす、感動させる、興奮させる
♢代動名詞
①心を動かされる、感動する、興奮する
②[感情が]激する、かきたてられる、乱れる
éphémère
♢形容詞
①[幸福、成功などが]つかの間の、はかない、かりそめの
②[生物、熱などが]1日限りの
soudain
♢形容詞
①[文章]突然の、不意の、急な
♢副詞
①急に、突然に、不意に
registre
♢男性名詞
1⃣
①登記簿、記録簿、帳簿、原簿、記帳
2⃣
①(楽器の)音域、声域
②(作品、演説などの)調子、色合い、特性、スタイル
récits
♢男性名詞
①物語、話
tailler
①(形を整えるために)・・・を切る、削る、刈る、裁断する

--Les géographies, dit le géographe, sont les livres les plus sérieux de tous les livres. Elles ne se démodent jamais. Il est très rare qu'une montagne change de place. Nous écrivons des choses éternelles.
--Mais les volcans éteints peuvent se réveiller, interrompit le petit prince. Qu'est-ce que signifie : "éphémère"?
--Que les volcans soient éteints ou soient éveillés, ça revient au même pour nous autres, dit le géographe. Ce qui compte pour nous, c'est la montagne. Elle ne change pas.
--Mais qu'est-ce que signifie "éphémère"? répéta le petit prince qui, de sa vie, n'avait renoncé à une question, une fois qu'il l'avait posée.
--Ça signifie "qui est menacé de disparition prochaine".
--Ma fleur est menacée de disparition prochaine?
--Bien sûr.>

🌈
 地理学者はね、全ての本のなかで、最も確かなものなんだ。決して流行おくれにはならない。山が場所を変えるなんてめったにないことだよ。我々は時代を超越したものを書いているのだ。
 ーーでも、火山は目を覚ますかもしれませんよ。王子様は尋ねた。
はかないってどういう意味?
 ーー火山が休火山であろうが、活火山であろうが、私たちにとっては同じことだよ。地理学者は言った。
私たちにとって重要であるのは、山さ。 山は変わらないからね。
でも、はかないってどういう意味?一回質問をしたら、決してあきらめたことのない王子様は繰り返した。
 ーーそれは、近いうちに死亡するおそれがあるということだ。
 ーー僕の花は、近いうちに死んじゃう恐れがあるの?
 ーーそうだとも。

🌈単語
démodent
♢代動名詞 se démoder
流行おくれになる
éveillés
♢他動詞 éveiller
①[ある感情]を呼び覚ます、引き起こす;[潜在能力]を引き出す、発達させる
♢代動名詞
①[ある感情、能力などが]目覚める、芽生える

③眠りから目覚める

<Ma fleur est  éphémère, se dit le petit prince, et elle n'a que quatre épines pour se défendre contre le monde! Et je l'ai laissée toute seule chez moi!>
  Ce fut là son premier mouvement de regret. Mais il reprit courage :
<Que me conseillez-vous d'aller visiter? demanda-t-il.
--La planète Terre, lui répondit le géographe. Elle a une bonne réputation…>
Et le petit prince s'en fut, songeant à sa fleur.

🌈
 僕の花は、はかないんだ。この世界から自分の身をまもるために4つの棘しかもっていない花!そして僕は自分のところにたったの一人で彼女を置いてきたんだ!
 それが彼にこみあげてきた初めて後悔の念だった。でも、元気を取り戻した。
 <僕はどこに行くべきだと思いますか?>
 <地球だね。評判がいいし。>
そして王子様は花のことを思い浮かべながら、立ち去った。

🌈単語
✅mouvement
①(物体の)運動、動き
⑤(感情の)動き、動揺、衝動
~de+無冠詞名詞

songeant
♢songerのジェロンディフ
<à qc/qn>・・・のことを思い浮かべる、思い出す

🌈文学 解説

 今回の地理学者は、今までの大人と比べると、なんだかまだましだなと思える。バラがはかない生き物であることを知ること、王子様が地球へ行くきっかけを作る役割のために登場しているような感じもした。

 正直、王子様を地球へ誘導する役目のために登場させた面が強い気がしてならない。

 でも、やっぱり今までの大人たちのように、おかしいところはある。

 地理学者なのに、自分の記録している山や河、海や町、砂漠を全く見たことがないし、見に行くこともないのである。そして、その確認方法は、探検家の証言と証拠に基づいて行うと言うのだ。

 私が読んだ限りでは、「頭でっかち」を描いているのではないだろうか。

 とりあえずこれが、地理学者が変な大人であることを読み取るヒントであるはずだ。 

事実を伝聞に基づいて書こうとしている

 
 この事実確認の方法自体には、はっきり言って、突っ込みどころが多すぎる。まず探検家が本当のことを言っているとは限らない。全ては、探検家の「記憶」でしかない。例え探検家が品行方正であったとしても、「正確な記憶」であるとは限らないのだ。

 そして、証拠を持ってくるように要求すると言っても、「本当にその場所から取って来たもの」であるかどうかはわかったものではない。それに、山があったから、そこの岩を持ってきたからって、何がわかるというのか。(地理学者だから、岩の成分を調べて、地層などがわかり、そこに山があることもわかるのかもしれないが・・・。でも、どれほどの山なのかわかるまい。地質学者の領分じゃないのかな。そういうのは。)

 自分は探検家ではないから、わざわざ見に行くようなことはしない、という。それは探検家がやることだと。実際に自分で見て、事実を確認することを怠っていることに対して、地理学者は全く無頓着である。

 点灯夫の話で言ったことであるが、人の言うことは結局すべて嘘である。事実は事実によって決まる。事実を知ることが責務である学者が、自分の研究学問の対象に対して、確かなるものを見ないでどうするのだろうか。


 サンテグジュペリは、本当は裁判官を登場させたかったのではないか?と考えてしまう。

 証拠の提出を求めるとか、地理学者をあえて現地へ向かわせないところなどは裁判官みたいだ。どっかの誰かがどこかで争いのきっかけを作って、それが法廷へ持ち込まれたときの裁判官の立場とそっくりなのだ。

 裁判官は、紛争解決を行う。当事者と、証人と、証拠。これらから事情を聴取して、最終的に判決を下す。いわば、人と人との曖昧模糊とした人間関係に、強制的な線引きを行うのだ。あたかも地理学者が地図に境界線を描くように、裁判官も人間関係に線引きを行うのである。

 法律を正しいと思っている人間は多い。ところがこれはとてつもない大間違いで、法律は間違いまくりの誤謬だらけの学問である。

 なぜならば、法律を一言で言うと、結局はこの一言に集約されるからだ。

       法律とは所詮、全てが「見なし」である。

 もちろん、地理学者が証拠の提出や品格方正な人物であるかどうかを検証するように、「見なし」は「見なし」でも、出来る限り事実に近づくように努力はする。

 しかし、「見なし」であることは間違いない。今回の地理学者の本の書き方も、結局はそれが事実であると「見なし」て書いていることと共通する。

 地理学者の本を執筆する行為も、どこに何があるのか、その境界線を、あやふやな伝聞に基づいて決定している。それを考えると、結局全てが「見なし」であると言うことと共通している。境界線を決定するというのは、非常に法律的だとはおもわないだろうか?

 境界線をめぐる訴訟というのもあるわけだし。

 裁判官は、二人の当事者の証言や証拠に基づいて判断はするけれども、実際の現場を見に行くわけではない。全て自分以外の存在が必要なものを持ち込むのである。そうして得られた情報を元にして、法律の構成を考え、どのような法的判断を下すのかを考えるのである。

 法廷の場に関するドラマを見れば、証拠というのがいかに事前に捏造されつくすものであるか、ということがよくわかるだろう。それにくらべたら、人間関係の争いのない地理学のほうが、よっぽどかましかもしれないが。

 法律は、結局は強制的な線引きなのだ。法律を正しいと思う人間が多いのは嘆かわしいことである。無実なのに有罪判決を食らうことを冤罪という。結婚する気もないのに法律上は結婚したことにもできるし、麻薬をカバンにこっそり入れられてしまったら単純所持罪になってしまう。

 つまり、「事実」ではないものを「事実」にしてしまうのだ。これはまさしく「虚」である。

 とりあえずそういう意味で、この学者も「虚」に囚われていると言える。
理論ばかりを重んじ、行動や経験を重んじないのである。

 理論は事実ではなく、虚である。だから、この虚に取り付かれた人間は、「頭でっかち」になる。理論が正しいという考えになる。そして、理論を優先させて、事実を見なくなる。

 理論自体が間違いだといっているのではない。理論は、事実に即して考えられなければならないから、事実のないところに理論を乗せても、間違いまくるだけなのである。

 サンテグジュペリが言いたかったのは、こう言うことだろう。 

(ただ、法廷の場では、当事者は決まって嘘をいいまくる。もう過ぎたことについて、本当のことは決してわからないのだ。事実に即した法律理論を構成しろ、というのは、裁判官にとっても酷な一面があることも確かなのである。)

本とは何か

 地理学者は、地理学の本はこの世でどんな本よりも、最も信用のおけるものだと言っている。(やっぱり理論でしか考えていなので、大嘘つきにも思える。)そんな本を、単に人の証言と証拠のみで記述していってはダメだろう。

 しかし、インターネットもないこの時代では、すべて自分の足で見回ると言うのも大変なことだ。日本だけでも随分と広い。それでも、伊能忠敬は偉大だったと思う。

 さて、本とは何かであるが、ここでは皆が忘れていること。本の限界について話をしなければならない。どれほど事実に即した本で、証拠もふんだんに載せられているとしても、やはり実際に、その現場を見てきたわけではないので、又聞きであることから逃れることはできない。

 信用性があるという意味で、いい本は、より事実に近しい本であると私は考えている。(物語とかの想像上の世界は除く。)

 本を読むことは賢いことで、最もよい勉強だと考える人は多いかもしれないが、実体験ほどいい勉強は無い。経験こそ、真の学問である。

 ところが、この学者は、自分が経験することを一切放棄している。手足を実際に動かすところは全て他人に任せ、自分はその結果だけを手に入れているのだ。きっと、実際に動いて失敗したり、恥をかいたりする人間を、どこかで笑っているかもしれない。この本からはそういう人格は匂ってはこないが。実際の体験がどのようなものであれ、体験を笑い、体験を軽んじる者は学者にあらずである。

 しかし、悲しいことに、学者は自分が体験するよりは、人の体験をあーだーこーだと語っていることの方が多い。他人ごととして物事を語るのが得意で、自分が同じ立場に立とうとはしない。自分が同じ立場に立っていないので、その人の視点から物事をみることができない。そのため、裁判官の人格、弁護士の人格、検察官の人格も疑問視され続けている。皆、人を扱うわりには、人を全く理解していないのだ。法律は理解しているかもしれないが、その法律を「理論」だとして、人を「事実」だとすると、事実の理解が圧倒的に足りないのである。

 本を読むと言うのも、実際はこれと似ている。確かに学ぶこともあるだろうけれども、本を書いた本人以上に学べることは無い。本は、書いた人が実際に体験したことから考え付いたことを、文字という手段で表現したものにしかすぎず、体験の2番煎じだからだ。(ただ、有用なものであることは確かだ。)

 そういう意味では、学びたいなら、本を読むのではなく、書ける人間になったほうがよい。そしてそれほどの経験を培う存在になった方がよい。

 地理学者は、本を書いているようで、実体は本を書いちゃいけない人間なのである。

 この学者には、恐らくこのことが足りていない。頭でっかちなのである。

 法理論に基づいて、法律に基づいて、判決を下しても、全く事実とは違っていることは大いにある。理論は理論としてあっても、結局事実には勝てない。事実よりも理論を重んじれば、それは却って「虚」をこの世界に増幅させてしまうのである。なぜならば、「虚」とは、事実との「ズレ」だからだ。

 この学者は、全て理論である。頭の中で全てが決まっている。そして、それは事実と多かれ少なかれ食い違っていく。理論自体に誤りがないとしても、理論は事実から抽象化された「虚」にしか過ぎない。

 もう一度繰り返すが、理論が間違いだといっているのではない。理論は、事実に即して考えられなければならないから、事実のないところに理論を乗せても、間違いまくるだけなのである。(理論が間違っており、発展途上だと言うことももちろんある。なぜならば、法律は幾度となく改正され、変遷するからである。)

 数字の「1」はこの世界に存在しない。目で見える形では、存在しないのだ。「2」も「3」も存在しない。これは人々の頭の中だけにある。これら理論は、理論のためにあるのではない。事実に基づいた物事を考えるためにあるのだ。

 だから、理論的に納得できたとしても、それが本当に自分に対してまで当てはまっていることであるのかどうか。それは注意しなければならないはずだ。

花を記述しない

 花は最も美しい物。なのに地理学の本には記述しない。まぁ、地理学で、植物学じゃないから、仕方ないかもしれないけど。

 記録するのは、変化するものをそのままの姿でとどめておきたいからこそするものだという考えからすれば、花こそ記録するべきだと考えることもできる。

 むしろ、地理学者のいうように、全く変動しないものを記録しても、変動しないのだから記録する意味もないのかもしれない。

 それでも役にたつとすれば、この時代では、地図を作ることくらいだろうか・・・。

 王子様には悪いけど、ここは地理学者の言うことのほうがもっともだ。(なぜなら王子様は、はかないと言う意味を知るまでは、花は永遠に生き続けると思っていたから。この場合は、王子様の方が事実を知らなかったのだ。)







 


 

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