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漫画 ブラックジャックの「裏」を読む 

手塚治さんの名作 「ブラックジャック」ですが、皆さんは物語の本質はどこにあると思いますか?手塚治さんは、ブラックジャックをどのように位置づけたと思いますか?

ブラックジャックの生い立ち

ブラックジャックは、幼少期、母親と近くの浜辺へ遊びに行きます。しかし、その場所はまだ地雷が埋まっているかもしれない危険な場所でした。
しかし、その土地を欲しがった有力者がお金を払い、地雷が埋まっているかもしれないにも関わらず、立ち入り禁止の看板を撤去していたのです。

そこで、ブラックジャックは母親ともども、地雷の犠牲になりました。母親は死に、父親は香港の女と蒸発し、ブラックジャックは辛いリハビリに耐えて、何とか運動機能を回復しました。

それがきっかけで、医師を目指そうとするとともに、地雷の看板を撤去することに関わった者達への復讐を誓います。

運命

 ブラックジャックを理解するには、運命というものを理解することが重要です。 

ブラックジャックは、全ての人々が自分の素直な心に従うことによって当然生じる社会の流れの中で生まれた犠牲者の一人です。(流れは一枚岩の一本ではありません。乱気流のように乱れ合っています。)利権がらみの欲に駆られた業者の独断の犠牲者となりました。

この事故は彼の残酷な運命の結果であると同時に、彼の出発点でもあったのです。

やがてブラックジャックは天才外科医と言われるほど、医学を習熟し、直すのが不可能と思われた手術も難なくこなしていきます。

たまに見る奇怪な病気や、オペのシーンからも、ブラックジャックは医療系の漫画。医学の漫画だと考えてしまうかもしれませんが、それは全く違います。

例えば一つだけピックアップしてみます。

 ピノコに似た女の子が、工場から排出される汚染された空気が原因で死亡するという事件があります。工場が建てられ、利益を稼ぎたいと考えている人たちが一方にはいて、その一方では、そのために苦しんでいる人たちがいます。

つまり、工場側の人間たちは、自分の素直な心に従って(利益が欲しい)社会問題を発生させているわけで、ここに運命の流れが出来上がっているわけです。そして、その運命の流れに巻き込まれているのが、犠牲者となった女の子なのでした。

この時、社会問題を発生させる側をとします。そして、問題が発生させられる側をとします。ブラックジャックの漫画の内容は、この黒と白の間(はざま)に立つ男の物語が描かれているのです。

そのため、ブラックジャックの日本名は、「間黒男(はざまくろお)」なのです。

なぜブラックジャックの髪の毛は、黒と白にわかれているのか。そして、若干ですが、黒い毛のほうが白い毛よりも多いのか。この世界は、黒い部分の方が、白い部分を染めやすい、染めてしまう世界であると言うことを物語っているのです。黒は白より強い。(私の印象なので、本当は半々かもしれませんが)

つまり、ブラックジャックの物語は、社会が作り出す黒い運命と、それによって押し込まれる白い運命間(はざま)に立ち、疑問を抱きながら、もがき苦しんで生きる男の話なのであり、ブラックジャックは、別に外科医である必要はありません。

 ただ、手塚治さんが、医者になるか漫画家になるかで将来の道を迷っていたということから、天才外科医としての地位を与えられたのだと考えられます。

もしちょっと何かが違えば、天才弁護士ブラックジャックになっていたかもしれません。

この話を踏まえて、ブラックジャックをもう一度読み返してみてみられてください。ほとんどの話は、黒い運命VS白い運命であり、白い運命側に立つブラックジャックが、黒い運命(ガンを連想させる)をメスで切り裁き、社会を手術していく。その通りの内容が多く描かれているのではないかと思います。

この世に生まれた以上は、一度は読んでおきたい名作ですね!できれば若いうちに。


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