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【環境】国境を越えてリユースされる中古品

こんにちは!新小樽少年です!
さて新連載「リサイクルと世界経済」の第2回目です!
タイトルは「国境を越えてリユースされる中古品」です。
記事の前に「3R」という言葉をご存知ですか?

3Rとは「Reduce(減らす)」、「Reuse(再利用する)」、「Recycle(再資源化する)」の総称です。これは持続可能な経済の実現のために必要とされている概念です。

これ以降では「リサイクル」の定義を再使用と再生利用という広い意味で使用します。そして「リユース」を使用済み製品を修理・洗浄して、ほぼ同じ形で使用することを定義とします。

今回の記事では日本から輸出されている様々な中古品が、どこの国にどれくらいの量が輸出されているのか、またどのように使用されているのかをみていきます。

1.家電製品

フィリピン・マニラの国際コンテナ・ターミナルの脇に、日本の中古品を販売している店が並んでいる。これは輸送コストを考慮してのことだろう。

最も人気な中古品はブラウン管テレビだ。地デジ化に伴い使用されなくなったブラウン管テレビはフィリピンのマニラで愛されていた。販売されている中古品にはしっかりと保証がついており、販売価格はおよそ2,800円、輸出単価は約600円になる。

2000年時点で、フィリピンの1,527万世帯で805万台が所有されていた。購入者の多くは低所得者層である。

2.自動車・自動車部品

2015年度に解体・処理された自動車は316万台、中古車として輸出された自動車は154万台にもなる。輸出先はケニアやミャンマー、ニュージーランドが多い。この国々の共通点は右ハンドルの国ということだ。

日本の中古車は高価格で取引されることが多く、その理由は道路などのインフラが良い、定期的に車がメンテナンスされている、欧米と比べると走行距離が短いなどが挙げられる。

ロシアの空

私自身もロシアに訪問した際に、タクシーの運ちゃんが「日本の車は高いね~」といっているのを思い出した。写真はロシアで撮影したもの。車の量がすごい。

中古車輸出には政府の許可が必要であり、これは不正ディーラーへの抑止力にもなっている。自動車部品も中古車同様に人気が高い。

3.農業機械・建設機械・工作機械

2015年時点において、農業用トラクターは新品が11万台、中古品が6万台輸出されている。ブルドーザーは新品も中古も約3,000台が輸出されている。ショベルカーは新品が1万5,000台中古品が9,000台弱輸出されている。このほかにもトラクター、エキスカベーターなどが輸出されている。

中古農業用トラクターの輸出先の多くはベトナム、ショベルローダーなどのメカニカル系の輸出先はASEAN諸国が多い。

4.タイヤ

2015年時点で、中古タイヤの輸出量が最も多かったのは日本だった。全世界の輸出量が60万トンに対し、日本は10万トンを輸出している。これにドイツ、オランダと続いており、多くの国が輸出入を行っている。

更生タイヤとは表面が摩耗した中古タイヤを台として、加工したゴムを取り付けたタイヤのことである。日本はどちらかと言えば、中古タイヤの方が多く、更生タイヤに関しては欧州各国の輸出が多い。

5.再製造による国際リユース

使用済みの製品を再利用するだけではなく、それを修理・補修することで出荷する「再製造」が国際的に注目を浴びている。国連環境計画(UNEP)からは、再利用の資源効率性を明らかにしたうえで、再製造がどれだけエネルギーや資源の消費を抑えられるかということを指摘している。

再製造が最も盛んなのはアメリカとされており、アジアでは中国やシンガポールが国内の大学と提携して取り組んでいる。

日本では再製造の概念はまだまだ認知度は低い。しかし再製造・修理のための国際拠点を設け、補修サービスをグローバルに展開する事例もある。
(企業名をいえば「コマツ」や「ブリヂストン」が該当する。)
①修理する部分をインドネシアなどの中進国に発送
②検査、分解、交換、組み立て、検査という工程を経る
③再発送

以上のようなプロセスでビジネスは進められている。

再製造は顧客に安く、一定水準のサービスを提供していくには充分である。
ものづくりビジネスから、ものを修理して使用するビジネスへと転換しつつある。物流的にもインフラが整っていれば、発展途上国は再製造の拠点として魅力的である。

6.中古品が国際貿易される理由

発展途上国などは日本などの先進国と比べても、1人当たりの所得が低いことは想像に難くない。それゆえ質のいい中古品は発展途上国の人々の需要にマッチしているともいえる。

建設機械なども新品で購入するよりかはコスト安である。中古品を用いて生産性を上げることは貧困から脱却するための有効手段ともいえるだろう。

先進国にとっても中古品輸出は良いビジネスになる。しかし再製造品は中古品とはマーケットが異なる。価格は新品と中古品の間くらいで、質は新品に近いため、需要が先進国から新興国と幅が広い。また発展途上国に雇用を生み出す側面もある。

7.まとめ

家電製品・自動車・建設機械といった中古品の貿易状況を知った上で、日本は中古品の輸出大国であることがうかがえた。

そして「再製造」がいかに資源効率やエネルギー効率を考えた、持続可能な経済を実現する手段としてかなりの期待ができる。

このように中古品が貿易を通じてやり取りされる理由は、発展途上国の貧困層の需要にマッチしており、また「再製造」によって途上国に雇用が生まれ、貧困の脱却の可能性につながるからである。

私はこれを読み終えた時に、世界で言われている持続可能な経済につながるとは思いました。なぜなら中古品を再利用、再製造することで、環境コストは明らかに減るからです。しかしこれが貧困の脱却につながるかと言われれば、疑問の余地が残る点であり、先進国で不要になったものを新興国に流すという構造に違和感を少し感じます。先進国は少し勝手なような気がしました。このように環境問題は利害関係、経済的にも大きな問題なのではないかと思いました。

新小樽少年

参考文献・HP

この記事は小島道一(2018)「リサイクルと世界経済」中公新書、p3-45を基に書いています。


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