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昨今ますます重要となってきている書く力を鍛えるために〜「書く力」の教室/田中泰延

少し前までは、書籍を著したり各種メディアに露出したり、情報の発信は一部の限られた人にのみの特権でした。
それが今やYouTubeに各種SNSなど、極めて低いコスト(むしろ、無料の方法も多数)で全世界に向けて発信できる基盤が整い、だれもが発信者になれる時代となりました。

そういった環境を利用し、SNSで強みを活かした情報発信を続け、人によっては書籍の出版などに結びつくケースも数多くみられるようになりました。
尖った強みを持った人たちの魅力的なコンテンツが発信されることは、受信者の我々にとってもありがたいこと。
近年はコンテンツがありすぎて取捨選択が難しい、という問題も出ていきているくらいです。

そのような情報発信がしやすい環境にあり、一番主流な発信手段といえば「書くこと」ではないでしょうか。
動画や音声配信のプラットフォームも整備されてはいるものの、やはり文字による発信が主であるのは否定し難いところかと。

そういった環境を踏まえると、「書く力」の高低は人によっては死活問題に結びつくほど重要な要素になります。
本書は、元電通社員の田中泰延さんが、大学生の直塚さんにライターになるためのノウハウを伝授する講義を文字化したもので、テーマ選びから執筆、校正まで、プロのライターのノウハウが学べるというお得な一冊。
400ページ近い本ですが、一気に読み切ってしまいました。対話形式なので読みやすい、というのもあるかと思います。
ライター志望の方はもちろん、意見を魅力的に発信したい人、書く力を高めたい全ての人に気づき・学びのある一冊でした。

一次資料にあたるべし

本書を通して改めて思ったのは、「正しい(可能性が極めて高い)文章を書くのは骨が折れる」という当たり前のこと。
生徒役の直塚さんの卒業論文として、本書の最後に「納豆と豆腐についての考察」が掲載されています。
そこでの参考文献、論文、HPの量は50を超え、古資料にまで当たって確認をしています。そのプロセス自体もコンテンツと化してます。

自分も社会人ドクターとして学位取得のための論文を書く時には、わかってることなのか仮説レベルのものなのか、強く意識しながら参考文献を読んでいました。
研究者の方々とすれば、わかってないことを解明する、もしくはある仮説の確度、たしからしさを上げていく・下げていくことが研究の営みなので、敏感になるのは当たり前かもしれません。
それゆえの職業病として、だんだん断定するのが怖くなり、話が回りくどくなるという難点もあるのですが・・・w

これは、きちんとしたライターにも同じことがいえるのかな、と感じました。
ちなみに、
「健全な精神は、健全な肉体に宿る」
「愛とはお互いに見つめ合うことではなく、ふたりで同じ方向を見ることだ」
というよく聞く定型文、誤用の典型例だそう。

ゆる言語各ラジオで堀元・水野の両名がよく誤用を紹介していることが脳裏をよぎるところではありますが、こういった誤用や言葉の使い方も信頼感のあるライターになるには敏感でありたいところですね。

編集者・校正者の視点を持つこと

自らの書いた文章に対して対価をもらうライターにとって、文章、言い換えるとその文字列が全てであり、それ以上でもそれ以下でもありません。
いずれ、人とは切り離されてその文章のみが一人歩きするわけですから、徹底的にその質にはこだわる必要があります。

本書の紙面の多くは「執筆」およびその前の「準備」のフェーズに紙面が割かれていますが、書いている途中と書き終わった後についても、田中さんの考えが述べられています。

一つのアドバイスは、書いたものはプリントアウトして確認するということ。さらに、音読することをすすめています。

人間は、「読む」よりも先に「話す」ことをしてきた。だから「声に出して読みやすい文章」は「頭に入ってきやすい文章」になるんです。

早く読むために、頭の中での文章ん音声化はすべきでない、という声もありますが、ちゃんと理解しようとするときに、頭の中で読み上げているひと、自分も含めて一定数いるのではないでしょうか。
読みやすさに加えて、誤字脱字に気づくというてんでも、有益なメソッドかと。


かく言う私もnoteにしょうもない文章を書いては投稿しています。
自分は会社員ですし、ライターで生計を立てるつもりはないのですが、ありがたくも読んでくださる方に、少しでもストレスなく、あわよくばちょっと有益な情報をお届けできればと思うところです。

本書には、文章のお手本をもつことも大事とありました。
みなさんには、お手本になる作家さん、ライターさんはいらっしゃいますでしょうか?

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