14日目 : 哀愁の長距離バス : LEON レオン

2019年9月24日 11:44

(一気に470km踏破!? → ゴールまで残り330km)

今日は楽だ！！！！

ブルゴスの大きくて綺麗なアルベルゲ(旅人用宿)。二段ベッドの造りも良く同室のステファンは相変わらず寝相も良いし、いびきもない。快適この上ない。熟睡した。

実は！！今日、僕はバスを使う！！！！

マガジンタイトルに『スペイン徒歩800km!?』と銘打っておきながら旅路の途中にバスを使います。どうしても足裏の傷でペースが落ちていて、ゴールの街であるサンティアゴコンポステーラの後のマドリッドとバルセロナへの旅程が短くなってしまう事を懸念しました。観光も当然しっかりしたいのです笑。一応、だからマガジンタイトルの『800km』の後に『？』を付けておきました。『800km歩いたかは判りませんよ？』の意味でした笑。

人生は決まりきったものじゃない。人生は予測不能である。人は常に最善の方法を見いだすのだ。

アルベルゲの前にあるバルで朝食。そして別れの挨拶だ。ありがとうトビー、ステファン、セタル、チヨン。

チヨンが僕に聞く。『バスの時間は調べたの?』僕は返す。『NO!!!』皆が笑う。彼等と歩いている時、頻繁に僕は『NO!!!』と言っていたらしい。その『NO!!!』の言い方がきっと多分日本語でいう感じの『んーなわきゃねえだろ!!!!』に近かったのだろう。まるで急に怒ったかの様で驚いたと良く指摘され面白がられていた。だから最後の挨拶にもしっかり僕らしく『NO!!!』と返した。『バスの時刻？そんなの調べてるわきゃぁねぇだろ!!!!』と。そうして僕らは別れた。

実際、まだバスの時刻調べてない！

初日『 0日目:出発地に向かう前日バイヨンヌ』でもそうだったが、電車の時刻確認ミスで数時間の足止めをくらう。交通網には一番気をつけないといけない。いつになるか、どこに行くか。これでとんでもない結果になる事がある。全ての予定が迷走する可能性があるので注意である。

皆違って皆良い。不思議なルール。

なんだかよくわからないバスターミナルに着く。朝とはいえ10時am過ぎているのにチケット売場に人気はないし、窓口にはシャッターが降りたまま。ついでに暇だからターミナルの写真でも撮影しようかと思ってカメラを掲げると1人立っていた制服の関係者らしき男性がダメだと言う。不思議なルールだ。バスターミナルを写真撮影してはいけないなんて。ただ後から知ったのだが、スペインの公共施設やデパートなどまで撮影禁止の場所が結構あるらしい。まあ、不思議であれどうであれ、ルールだからしょうがない。勉強になった。不思議なルールなんてきっと海外からすれば日本にも山ほどあるだろう。お互い様だ。皆違って皆良い。それが面白い。

ただ、時刻掲示板らしきもので判断するに、どうやら17:20pmがレオン行きの出発らしい。まだ時間が6時間以上ある。

露天屋台みたいな所でヘアバンド、鉛筆、鉛筆削りを購入。別の露天で甘そうなスイーツとスーモ・デ・ナランハ zumo de naranja(特産オレンジ生絞りジュース)。バスターミナルの壁に見つけたコンセントで携帯電子機器の充電。つないだまま離れるのは盗難が恐いので側を離れず待機。

ふと思い出す。昨日、アルベルゲで会ったキム(リトアニア)が絵を描いて売って宿代をゲットしてると。時間もあるし僕もやってみよう。早速、ブルゴス大聖堂前に移動。

そうしたらキム本人も居た。

絵を売っていた。ベンチに座って自分の帽子をチップ入れにして。数枚の絵を置いてお客さんを待っていた。僕も1晩の宿代位稼げたら面白いなと思って速攻描いた。キムとも色々話しをしながら。暑いね。日本のタバコあげるよ。じゃあお礼にパンあげるよ。ジャムとかは無いんだ。ムシャムシャ。そんなこんなで時間は過ぎていく。

急いで僕は侍の絵を描いた。

本場ヨーロッパ人に面白いものは何だろう。よく判らん黒髪チョンマゲの東洋人が描いた日本チックな絵がウケるのでは？ならば、やっぱりサムライ！ジャパン！は興味を惹くと考えた。

しかし人が素通り。

今、キムと居るこの広場は、ブルゴス観光のメイン広場でもあるので人は多い。ただ、こうした変な絵描きも人ごみに埋もれてしまうというか、人が流れて行ってしまうのであまり立ち停まってくれない。キムと相談して場所を変えた。路地の片隅に移動した。路地といっても、交差点の角に立つ大きな雑貨屋だか、レストランだか、人の出入りの多い、お店の出口に近い位置。ここだと、交差点で行き先を思案したりする人や、お店をゆっくり物色している人達が興味本位で立ち止まり易いと踏んだのだ。

初外国人のお客様！！！

なんと、ここに場所を変えてものの数分で2人の品の良い感じのヨーロッパのご婦人が足を止めてくれた。キムと並んで座っていたのだが僕の侍の絵に興味を持ってくれているようだ。1人のサングラスの似合うカッコいいご婦人が言う。『他の作品はないの？』僕はこの旅で描いた数枚のスペインのカテドラルの絵が描いてある小さなスケッチブックを手渡した。彼女はフンフンといった感じでスケッチブックをめくり僕に返す。そして言う。

『この絵買うわ』

おぉおーーーー！初外国人お客様だ！というか道端で絵を売った事も初めてだ！僕は興奮を抑えて彼女から6ユーロを受け取った。値段はどうでも良い。ただただ嬉しかった。よくわかんない東洋人がスペイン北部の観光地で絵を売っていた。それを買ってくれた。うーん。なんて見る目のあるご婦人なんだろう笑。いやありがとうございます。Muchísimas gracias.ムチャスグラシアス。あ！！！ご婦人に写真撮らせてもらえば良かった！！くそーー。あー！！！オレの絵も写真とってない！！くそーー！

と後悔していたらキムが僕の写真を撮っていてくれた。ありがとうキム！そして君の商売アイデアに乗っかったのに先に絵が売れた事もありがとう！君がラッキーを運んでくれた笑。

↓ご婦人に購入頂いた侍イラスト。もしどこかでこれを見てくれたら嬉しいな。

というか、これに味をしめて、僕はもうちょい高い絵を売りたいと考えた。キムが『ブルゴス大聖堂の絵とか25ユーロ以上でも売れるかもよ』とアドバイスをくれる。僕は俄然やる気が出た。もうひたすら描く。先ほどの広場戻り、大聖堂正面のベンチに座る。ひたすらひらすら描く。ブッブーーーーー！時間切れです。笑。もう描くのが楽しくて時間配分を間違えた。もうバスターミナルに移動しないといけない。まあ、しかし自作の絵という思い出が出来たのでこれはこれで良い。

バス移動。

時刻が近くなると先ほどとは打って変わってバスターミナルには人がたくさん居る。スペインでは長距離バスは日常的な交通手段の様で多様な人々が居た。なんの移動だろう、18前後のような学生風の男女も沢山いた。50人位乗れる日本でもおなじみの大きな観光バスの様なタイプでいざ乗り込む。ここから約200km先のLEONレオンに向かう。この道程はひたすら平地が続き夕焼けがとても綺麗だった。

ここまで一緒に歩いてきたトビー達や、出会った人達はこの広い大地を歩いてくるのだ。彼等の身体、健康、安全を案じながら僕は流れる景色に目をやる。約2週間。色々な人と会い、毎日30km前後歩き不思議で楽しい時間だった。4時間弱のバスの移動で旅を振り返っていた。

21時pm頃レオンのバスターミナル到着。

もう真っ暗だ。そしてこのレオンのバスターミナルはかなり中心部から離れている様で、ざっと辺りを見渡した所、近くには建物が無い。つまり、その商業施設や、まして宿泊施設が見えない。まずい。21時だ。今から宿を探すという事を甘く見ていた。こんな辺鄙な場所だとは！乗り合わせた他の多くの乗客はお迎えの家族やら知人と再会の抱擁なども交わし、意気揚々と帰路につくべく、各々の車に乗り込んでいる。僕は、バスターミナルの出口で思案をめぐらし、スマホを駆使し、途方にくれている。

謎のジャムおじさん現る。

と、そこに、眼鏡をかけたスラっとしたジャムおじさんの様な優しそうな男性が近寄ってくる。見た目は危険な匂いはしない。ヒョロっとしたピエロがすっぴんになったかのような雰囲気。でも、異国のこんな辺鄙な場所で僕は気が抜けない。でも、どうやら、僕のバックパック等で宿に困っているのを察知してくれたようだ。連れていってやると言う。僕は完全に心を許さず、気を引き締めながら着いていく。歩いて行く道も少しでも暗がりや、人気が無くなりそうだったら速攻逃げるつもりだ。テクテク。どうしてもすぐ後ろをついていくのは恐くて3m程は距離を空ける。テクテクテク。まだ、周りに同じ様に歩いて帰ろうとしている乗客もいる。テクテクテクテク。少し、街の灯りが近くなってくる。テクテクテクテク。なんだかんだと無事安全に宿を1つ紹介してくれた。なんだ取り越し苦労だった。ヒョロっとジャムおじさんへ、お礼にと日本タバコをプレゼントして別れる。あのおじさん何でバスターミナルに居たんだろう？？？？それだけは謎だが、おかげでこうして宿まで見つかったので良かった。ありがとうございます。