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小室眞子さんの結婚までの騒動を見て、私が「女性宮家」を創設すべきと確信した理由

1  私のスタンス  

私は憲法論や日本史の観点から「天皇」に関心があるだけで、天皇陛下やその家族の人柄等には興味がありません。皇室の専門家でもありません。

佳子内親王は顔が可愛いと思っていた程度です。
学者になるような教養のある人がまた輩出されたらいいなと思っていました(昭和天皇は植物学者、上皇陛下は魚類学者という一面を持っていました)。

日本史を学んだ者(大学入試センター試験では満点でした)からすると、「天皇」はずっと男系で続いてきたので、あえて今さら女系にすることには賛同していません。過去の女性天皇もピンチヒッターにとどまり、基本は男性天皇です。
男系男子が「天皇」になるという現制度は、歴史的正統性があり、混乱も招かないので良いと私は思っています。
そのため、女系天皇への意図が見え隠れする「女性宮家」の創設に乗り気ではありませんでした。

しかし、今回の小室眞子さんの「駆け落ち婚」のような騒動を見て、むしろ「女性宮家」を作ったほうがよいと思いました。
世間的には今回の騒動で「女性宮家」創設論は立ち消えになったかのように認識されているかもしれませんが、私は逆の認識になりました。

女性天皇や女系天皇の擁立という観点ではなく、女性皇族が自分に合った良い男性に出会うことができ、結婚しても皇室の一員として天皇陛下を支え続けるための体制作りという観点から、「女性宮家」を創設すべきだと考えます。

以下、長くなると思いますが、私の考えを説明してみようと思います。

2  皇室における結婚

皇室とは、「天皇」の家族です。
今上天皇には妻と娘がいます。弟家族は「秋篠宮家」として妻と娘2人と息子がいます。詳しくはWikipediaをご覧ください。

男性皇族は結婚すると「宮家」となり、その家族も皇族になります。
一方で、女性皇族は結婚すると皇籍離脱し、皇族ではなくなります(その家族も皇族にはなりません)。
男性皇族が結婚するには「皇室会議」による決定が必要とされていますが、女性皇族にはそのような決まりはなく婚姻届を提出すれば結婚できます。

私は「女性宮家」を創設して、女性皇族の結婚も「皇室会議」の決定を必要とすればよいと考えます。

後述しますが、その立場から孤独になりがちな「天皇」を支えるために皇室(皇族)は必要であり、今上天皇をリスペクトして支える「宮家」は存在価値があると思います。

戦前は「宮家」が多く、「宮家」の中には陸軍や海軍等で高官になって自己保身や組織防衛のために暴走する者がいました。当時若かった昭和天皇をリスペクトしていなかったからだと思います(昭和天皇は軍部が自重することを一貫して願っており、近い者にはそのような発言をしていました)。
敗戦に伴いGHQの命令で皇籍離脱しましたが、戦後になっても旧宮家の皇籍復帰論が全く相手にされなかったことには相応の理由があると思います。
自らの役割を果たさず、自己保身に走る「宮家」は害にしかならないと思います。
「女性宮家」も、今上天皇の何親等以内と限定することで、過剰に増やすべきではないと思います。


3  私の憲法観(「天皇」の役割と「宮家」の存在意義)

現憲法下においても「天皇」は日本国の君主です。
日本は立憲君主制の民主主義国家です。イギリス等の国を見れば分かるように、君主制と民主主義は矛盾しません。

明治憲法との違いは、「主権」が「天皇」ではなく「国民」にあることです。
ここで言う「国民」は個人ではなく集合体です(株式会社で言うところの株主です)。
「主権」が「国民」にあるという意味は、国政の最終決定権(最終責任)は「国民」にあり、国家機関の権力行使の正当性は「国民」に行き着くということです。
「主権」は「天皇」にありませんが、「国家の象徴」である点に変わりないため「天皇」は君主です。君主であるのに「主権」は必要ありません(君主に必要なのは、血統による承継と国家の象徴であることです)。

戦前には「主権」を絶対視して、天皇親政(天皇による直接統治)を主張する人たちがいました。私は「天皇」を憲法の統治面では国家機関の一つでしかないとする見解(天皇機関説)に立ちます。主権者でも、憲法上の根拠がない限り、他の国家機関(帝国議会や裁判所など)による判断を覆すことはできません。「主権」は絶対視されるようなものではありません。
同じように現憲法下でも、「国民」を憲法の統治面では国家機関の一つと考えます。主権者だから国政において何でもできるわけではありません。

現憲法の第1条で「この地位は、主権の存する国民の総意に基づく」と定められています。
この規定は『国民の判断で「天皇」の地位を奪うことができます』という意味ではありません。
『「天皇」が「国家の象徴」や「国民統合の象徴」であることは日本国民の総意です。嫌なら憲法改正してください』という意味です。

そもそも「天皇」自体は「神社神道の祭祀王」です。暴論ですが分かりやすく言うと、キリスト教のローマ教皇に近いです。
国家祭祀は「天皇」の重要な仕事であり、現憲法でも「天皇」の「国事行為」として「儀式を行うこと」が定められています。

仮に憲法改正しても「天皇」はなくなりません。国家機関でなくなるだけです。「国家の象徴」や「国民統合の象徴」という国家機関の立場を失うことはあっても、「神社神道の祭祀王」という日本固有の文化的・歴史的・信仰的な立場を失うことはありません。

憲法改正によって「天皇」が日本国の君主であることを辞めさせることはできても、「天皇」自体を辞めさせることはできません。(ここを勘違いした論調をする人を見ると、日本史の勉強をしていないのだろうと思うようにしています)

日本国の君主として他国の大統領や国王等に接する役割(国家の象徴)と、価値観や生き方もバラバラな個人を日本国民としてまとめる役割(国民統合の象徴)を、憲法は「天皇」に求めていると考えます。

「国家の象徴」だけではなく「国民統合の象徴」の役割も担っているのがすごいなと、私は思っています。

アメリカ(GHQ)は日本を占領統治するに当たって、日本人が反乱やテロを起こすことを恐れていました。
そこで、GHQは昭和天皇を人質にとっていました(戦犯として処刑すべきか、退位させるべきか意見が分かれていました)。
GHQは「見せ物」のように昭和天皇を日本各地で巡遊させてみたところ、日々の生活に苦しむ国民から絶大な支持を受ける光景を目の当たりにしました。処刑や退位をせずに、統治に活用することで決まりました。
現憲法の原案はGHQが作成したものですが、「国民統合の象徴」には、占領下で内乱等を起こさせなかった昭和天皇へのリスペクトがあると思います。

以上が私の憲法観です。私の憲法観からすると、「天皇」は「象徴」として大変な役割を果たすことが求められます。特に「国民統合の象徴」の役割は、単なる『お飾り』では果たすことはできないと思います。

もっとも、天皇陛下が一人だけでこなすのは肉体的にも精神的にも不可能だと思います。
外交と内政の両面で「象徴」としてどう振る舞えばよいか悩む天皇陛下に寄り添うとともに、天皇陛下の名代としての役割を果たせることもできる皇族(皇室)が必要だと思います。これが「宮家」に求められる役割だと、私は考えます。
よって、天皇陛下に近い女性皇族が結婚後も天皇陛下を近くから支えるために、「宮家」として皇室(皇族)に残す必要があると考えます。
「宮家」の役割を果たすのに、男性皇族ならできて、女性皇族にはできないという理由はないと思います。

現憲法下で「為政者」は内閣総理大臣(首相)です。アメリカのように「国家の象徴」と「為政者」が同じである大統領制の国も多くあります。
私は、独裁者が生じるのを防ぐという内政面と、日本が古代から存在する国家であることを示すという外交面から、「天皇」と「首相」で分けるのは良い体制だと思っています。
「天皇」と「将軍」の関係のように、日本史を学んでいれば「国家の象徴」と「為政者」を分けるのは、日本という国が体制を変えながらも長く続いてきたポイントであることが分かると思います。


4  宮内庁へのインセンティブ

宮内庁は皇族が減ることを喜びません。
理由としては、天皇陛下の公務負担が増えるということもあります。ただ、宮内庁にとっては、皇族が減った分、職員や予算が減らされることで組織が弱体化するのが大きいと考えられます。

男性皇族が結婚すれば皇族が増えるので、宮内庁は結婚に向けて一生懸命に働きます。鬱陶しく思えるほどの数の「縁談」を用意します。恋愛相談にも積極的に応じます。御用マスコミを焚き付けて、結婚を焦らせるようなムード作りもします。

一方で、女性皇族が結婚すれば皇籍離脱して皇族は減るので、宮内庁はほったらかしにしています。
今上天皇の妹である黒田清子さんは、秋篠宮殿下から同級生(友人)を紹介されて「縁談」を持ち、結婚に至りました。宮内庁が清子さんのために「縁談」を用意していた話など聞いたこともありません。

女性皇族は、天皇陛下や皇嗣殿下の家族であるため、「個人の自由」は制約される状況にあります。
他方、女性皇族の結婚は「個人の自由」を理由に、自助努力で自分に合った良い男性に出会う必要がある状況にあります。
例えば、マッチングアプリに登録したり、民間の婚活パーティーに参加したりすると、報道やネットで醜聞が流れ、バッシングや嘲笑の対象になりかねないと思います。婚活しようにも、その立場から自ずと方法は限られると思います。
また、仕事でもVIP扱いをされて対等関係にはなれないため、職場での出会いも難しいと思います(眞子さんのように、学生時代に出会うくらいしか考えられません)。

「女性宮家」を創設すれば、宮内庁が女性皇族にも「縁談」を用意するようになると思います。
女性皇族にとっても、自分に合った良い男性を見つける機会が多くもたされるので、良いのではないかと思います(紹介された人を好きになるか、結婚するかを決めるのは、本人の心です。本人以外の誰かが決めるものではありません)。
もっとも、宮内庁による「縁談」の話が、若い皇族へのセクハラには絶対になってはいけません。
「縁談」については両親の承諾を前提に、本人の意思を最も尊重すべきだと思います。
宮内庁職員がマスコミにリークすること等は論外だと思います(セクハラであり、守秘義務違反です)。

宮内庁に仕事をさせるインセンティブの観点からも、「女性宮家」を創設すべきだと思います。

「宮家」の維持や皇族待遇には公費を要し、今上天皇から血筋が離れていくと役割を果たすことも期待できなくなると思います。
「女性宮家」創設時に、皇族と認められる範囲を限定するようなルール作りをすべきだと思います。皇族から外れても、有能な方であれば宮内庁の非常勤職員として雇えばよいと思います。


5  まとめ

以上から、私は「女性宮家」を創設すべきと確信しました。
あくまで「皇室会議」の決定を経た結婚になるので、小室家が皇族になることありません(法の遡及も認めません)。小室家は「宮家」にはなれません。

女性皇族の「駆け落ち婚」という前例ができて、これは良くないことだと思いました。
私なりに考えをめぐらして思いついたのが、「女性宮家」の創設です。
批判をするのは容易いことです。状況を改善するための提案を出すことが重要だと思います。
私は、自身の憲法観(「天皇」とは何なのか)と皇室の存在意義(なぜ税金をかけてまで必要とされるのか)という視点から、提案してみました。
私の案が最も優れているとも思っていません。他にも良い案が世の中にはあると思います。


この文章が読んでいただいた方の参考になれば幸いです。長文になりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

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