本を読むのが好きだ。

毎週のように本を買うので、積読の山ができている。

お笑い芸人さんのエッセイや、プロレスラーの自伝、

仕事がテレビのDなので、同業者が出した本も買っている。

いつか人に本棚を見せる日がきたときは、このセンスを見せびらかしてやりたい。

そんな僕は濡れ衣を着せられている。

あれは4月の下旬。

職場にいる別部署の先輩女性Dから電話がきた。

周りからは「キレイ」とか「美人」とか言われているお姉さんだ。

業務についての諸々を話したあと、

「関係ないけど、オードリーの若林さんのエッセイ持ってる?」

と聞かれた。

僕は『オードリーのオールナイトニッポン』のリスナー、通称「リトルトゥース」である。

3冊ほど持っているので、後日貸すことに。

しかし、僕はテレワークや直行直帰が多く、なかなか渡すタイミングがなかった。

そこで、会社に行く用事があるという部下の女子ADへお願いすることに。

ちょうど文学フリマ東京への出店を控えていた僕。

その先輩女性Dにはエッセイ原稿をチェックしてもらっていたので、謝礼の300円も封筒に入れてトートバッグごと託す。

しかも、そのトートバッグはエッセイに出てきたものだ。

原稿を読んだ人には分かるという粋な演出である。

だが、後輩も忙しかったようで、毎日のようにトートバッグを持って現場にやってくる。

いつも『トムとジェリー』ばりにじゃれあっているので、

「いやお前、早く渡せよ!」

「なかなかタイミングないですね!」

みたいな話をしてケラケラ笑う。

そんなこんなで数日が経ったころ。

ついに女子ADが会社に行ったとのこと。

本人不在のため、デスクに置いてきてもらった。

僕も現場から先輩DにLINE。

「@@ちゃんが会社行ったので、若林さんの本をおいてもらってます。よろしくお願いいたします」

そして、

「了解!」

とのスタンプがきて一安心。

その一時間後、出社してきたであろう先輩Dからこんな返事が届いた。

「チン毛挟まってるぞ」

「入れてない!」
「絶対!」
「渡す前に下にむけてベラベラしたんですけど」

と五月雨式に返信。

すると、本を手に取った写真が送られてきた。

しおりのようにチン毛(仮)が挟まっている。

タップする前の小さい状態で写真を見たときは、「いやこれ、スネ毛じゃね?」と思った。

たしかに僕は毛深い。

「この毛深さじゃ、レストランで働いたら真っ先に疑われるよなぁ」と思い、学生時代はバイトの選択肢から外すぐらい気を遣っている。

だからきっとスネ毛が挟まってしまったのだ。

おそるおそるタップしてみる。

画面いっぱいに表示された写真を拡大。

それは、絶妙にチン毛だった。

よ〜く見ると、先っぽに毛根らしきものがついている。

やっぱ絶妙にチン毛だ。

「だとしたら@@ちゃんです!」
「@@ちゃんですね!」

と連投する僕に対して一言、

「マン毛かよ」

と返ってきた。

LINEとはいえ、そんなどストレートな表現があるだろうか。

女性の口から「マン毛」って初めて聞いた。

忘れていたけど、この人は居酒屋で

「このモツ煮、チンコみたいじゃない?」

って言う人だった。

無実を証明するためLINE。

「オレではないです100パー」

「じゃあ鑑定だす?」

というやり取りをしていたら、

その女子ADが現場にやってきたので、このことを説明。

「いや、私はもらったまま保管していたので触ってないですよ!」

「オレだって挟んでねーよ!だから名前出してお前のせいにしておいたからな!」

という陰毛のなすりつけあいをした。

そして「絶対に僕(私)ではないですが、すみません」と謝罪のLINEを連名で送った。

当然のことながら、僕はチン毛など入れていない。

女性にチン毛を送りつけるって何?

「オレを忘れないで」的なこと?

絶対にオレじゃない。

先輩Dから、「爆笑」と返ってきたことは不幸中の幸いだった。

しかし、ここからが困る。

先輩D、どのくらい騒いだの??

もしも、「キャー!!」と叫ばれようものなら、正面のデスクには女性Pがいるし、後ろにも女性Pがいるし、なんだったら真横には役員がいる。

僕は会社にいなかったので、そのときの状況が分からない。

「アイツはド変態野郎だ」みたいになっていたらどうしよう。

オレ、勝てねーじゃん!!

出社するのが怖くなった僕。

その後しばらくは、会社に行っても会議室直入りで会議室飛び出しみたいな日々が続いた。

顔を合わせづらくなったのである。

なぜ職場でコソコソしなきゃならんのだ。

数週間後、その女子ADと会社でしゃべっていたら先輩D登場。

めっちゃ笑いながら話しかけてきたので、開口一番

「僕じゃないですから!!!」

と必死に説明した。

「私でもないです!絶対にこの人です!!触ってないですもん」

「いや、オレってそういうことをしそうな見た目だけど、本当はしないから社会人として生きてこれたのよ?ここでチン毛を挟んだらマジじゃん!マジの人じゃん!!たしかにオレ、家では裸族だけど、絶対に違うから!百歩譲ってワキ毛だから!あと、ドラマでは『よくしゃべるやつが犯人』って聞くけど、こればっかりはオレじゃない。絶対に犯人は@@ちゃんです。あと、せっかくエッセイに出てきたトートバッグに本を入れたのにノータッチじゃないですか!しかも300円入れたのも気付いてないですよね!?っていうか、ガラケーの時代からスマホになりましたけど、『マン毛』ってワードが届いたの人生で初めてですよ!中学生のころでさえなかったもん。しかもそれが女性からって!!」

それでも先輩Dは「絶対お前だろ!」と笑いながら僕を犯人にしてくるので、女子ADと通算二度目となる陰毛のなすりつけあいは、かなりヒートアップした。

忘れがちだが、ここは会社である。

こんな会話が飛び交うって、なんてオープンな職場なのだろう。

さすがはテレビ業界。

先輩Dが「結局一冊も読めてないよ。そのまんまにしてる」というので、早く読むように伝えてその場は落ち着いた。

あれか3ヶ月、何回か会う機会はあったのだが全然読まれる気配がない。

それどころか僕の推しである、ももいろクローバーZの話をLINEしたら、

「もし楽屋を見つけてもチン毛落としたりすんなよ」という陰毛イジりをされるようになった。

これもう一生言われるやつだ。

だから僕も毎回のように「それ@@ちゃんのね!」と返すようにしている。

もはやトラウマなので、人に本を貸すとき毎回不安になる。

お笑い好きの新人女子ADに、ラーメンズ小林さんが書いた本を貸したときも相当気を遣った。

めっちゃバサバサして渡す念の入れよう。

そして昨日、本好きが集まるBARに行った。

オススメの本を持ち寄り、お互いに交換するという企画をやっていたので、僕も何冊か持っていく。

すべて新しい持ち主の元へ旅立っていったのだが、「面白かった!」と思ってもらえるかの心配より、チン毛が挟まっていないかどうかのほうが心配だ。

どうしよう、伊藤亜和さんのエッセイに挟まっていたら。

そう思いながら、自宅でこのnoteを書いている。

っていうか、noteって「マン毛」って書いていいサイトだっけ??

アカウント凍結とかされない?大丈夫???

ビクビクしながら書いている。

最後にひとつ。

余談ではあるが数分前にフローリングの掃除をしてみた。

それっぽい毛が4本落ちていた。

本当にオレじゃねーんだって!!

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ラジオのハガキ職人です。

仕事はテレビのD。

過去に別名義で電子書籍を出してます!

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そして『文学フリマ東京38』でエッセイを寄稿しました!

『BANDIT』という雑誌で、テーマが「ハガキ職人と笑い」。

ネットショップで買えるそうなので、こちらも買ってね!!

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最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!