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悪辣の魔法使い

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昔むかし。人を襲い、害をなす悪鬼と間違えられ、小さな瓶の中に封じ込められてしまった、名もない子どもの小鬼。  長い歳月のあと、封印から解き放って救い出し、レイという名前まで付けて…
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#創作大賞2024

【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第1話

【あらすじ】   昔むかし。人を襲い、害をなす悪鬼と間違えられ、小さな瓶の中に封じ込めら…

吉岡果音
11か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第2話

第2話 レイオル、そしてレイオル  逃げ出したほうが、いいのかな。  レイは、ぼんやりと…

吉岡果音
11か月前
14

【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第3話

第3話 旅の目的、俺の存在  窓から差し込む、柔らかな朝日。テーブルの上に運んだお膳には…

吉岡果音
10か月前
16

【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第4話

第4話 当たり前じゃないものだから、当たり前に  黒い大蛇の姿の怪物が、襲い来る。  レ…

吉岡果音
10か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第5話

第5話 半身の契り  木の葉の間から降り注ぐ日の光は、川面で踊るように輝く。  太陽は、…

吉岡果音
10か月前
13

【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第6話

第6話 せめて勇者に  ざわ、ざわ、ざわ。  囁かれる、声。人ではない者たちの。  ほと…

吉岡果音
10か月前
12

【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第7話

第7話 少女救出作戦に、乾杯  旅人たちが宿屋を探し、働き終えた大人たちが酒場に繰り出す、そんな時間だった。 「助けてください!」  道端で男たち三人に捕まり、少女が助けを求めて叫ぶ。しかし通りの人々は、ただそんな光景を遠巻きに見つめ、声を潜めて囁き合うだけだった。  今晩の宿を取ろうと偶然この町に立ち寄った小鬼のレイと魔法使いレイオルは、足を止めた。  いったい、人間同士でなにが――。  レイは、レイオルの顔を見上げた。  なんだかわからないけど、助けてあげなき

【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第8話

第8話 朝の光、夜の光  ホットミルクの乾杯は、甘い秘密。ほんのり大人の味がするような気…

吉岡果音
9か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第9話

第9話 帽子収集家 「俺も、情報を得たぞ!」  おはよう、より先に出た旅人アルーンの第一…

吉岡果音
9か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第10話

第10話 それは幸いだったと思う  うっそうと連なる緑が途切れ視界が開けたとき、小高い丘の…

吉岡果音
9か月前
16

【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第11話

第11話 賑やかな旅のはじまり 「私も一緒に連れて行ってください」  晴天の朝に見る一面の…

吉岡果音
9か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第12話

第12話 剣と怪物退治 「レイオル……! お前も剣を使えるのか!」  大剣を構えたアルーン…

吉岡果音
8か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第13話

第13話 森宝玉  小鬼のレイの頭にある、三本の角。 「時間・空間・物質を表わすって聞いて…

吉岡果音
8か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第14話

第14話 星聴祭  森宝玉たちを換金してもらい、外に出ると町はすっかり夕日に染まっていた。  小鬼のレイが肩から下げているカバンは、少しふくらみ、重みも増している。  初めての、お金。人間のお金。これは、俺の……!  心が弾んでいた。魔法使いレイオルは、自分のために充分過ぎるお金を使ってくれていたけど――カバンだってレイオルが買ってくれた――、それはあくまでレイオルのお金。今自分のカバンには、確かな重みの自分のお金、というものがある。  俺は小鬼だしお金は必要ないと思