いつでもどこでも888上野田成秀

「測り得ないもの」の存在に心を向け、迂路や岐路を経てここまで来ました。それは「建築とは…

いつでもどこでも888上野田成秀

「測り得ないもの」の存在に心を向け、迂路や岐路を経てここまで来ました。それは「建築とは何か」「人間とは何か」という問いへの答え探しの旅でもありました。今まで建築設計、都市計画、街づくりに携わり、今後もその問いかけと仕事は続きます。Architect.SKU@gmail.com

最近の記事

詩的な静寂さと、崇高性を求めて ! ある建築家の軌跡

今回は、独自の建築哲学により、詩的な静寂さと明快な造形により、精神的高揚と崇高さを持ち、時間を越えた独創的な建築をつくり続けて来た「最後の巨匠」と呼ばれた建築家、ルイス・カーン(Louis Isadore Kahn 1901年〜1974年)について書いてみたいと思います。 ここでは「ルイス・カーン論」ではなく『 私にとってのルイス・カーン 』を書いていきたいと思います。 私がルイス・カーンに出会ったのは、大学2年の頃でした。紹介された大きな書店に立ち寄ってみると、そ

    • 挑戦し続けるエネルギーと闘い続ける心、そして強い思い !

      羽田空港の第1ターミナルの展望台に上がってみるとJAL、ANAの旅客機が滑走路から全速力で離陸していく姿が見えます。 この展望台には女性も男性も老いた人も若い人も、たくさんの人が来ていますが、誰もが離陸する旅客機の様子を真剣な眼差しで見ています。 大きな旅客機が全速力で滑走路から離陸していくその姿に、自らの思いや願いが重なり、感動を呼び起こすのかもしれません。 旅客機は離陸後、一気に高度 10,000メートルまで上昇飛行するそうですが、その旅客機が高度10,000メートル

      • 🎼 書き込みされた楽譜

        先日、大学院でピアノを専攻している学生から、その学生が使い続けているバッハ(J. S.Bach )のトッカータの原典版の楽譜(テキスト)を縁あって見せて頂きました。  どれだけページを捲ったんだろうか? テキストの四隅が、大きく丸くなる程、繰り返し繰り返しページを捲り、そしてテキストを開くときの両手の親指と人差し指の形跡が見てとれる程、そこのところだけ凹みが出来、何年も肌身離さずいつも持ち歩いていたような、そんな雰囲気を感じさせるテキストでした。 楽譜は書き込みが無くても

        • 旅を誘う、ある街の風景

          この間、室の中で、乱雑に積み上げていた本の中から一冊の本を探し出そうと、本の積替えを繰り返していたとき、1枚の絵はがきを見つけました。 本探しの手を休め、その絵はがき見てみると、7,8年前、美術館に立ち寄ったとき、その売店で買ったものであることを思い出しました。その絵はがきを買った訳は、ある街の美しい風景が描かれていたからでした。その絵が「何となく気になったのか」、「心が惹かれたのか」は分かりませんが、取り敢えず、その絵を1枚だけ買いました。 その後、そのハガキは暫く机の

        詩的な静寂さと、崇高性を求めて ! ある建築家の軌跡

          蝉時雨(しぐれ)と しみ入る蝉の声

          朝、7時頃、公園寄りの並樹通りを歩いていると、この夏初めての、蝉の鳴き声を聞き(聴き)ました。 蝉の鳴き声を聴くと芭蕉を思い出します。 芭蕉が詠んた『閑さや岩にしみ入る蝉の声』という句が強く印象に残っているからでしょうか。 この句は、芭蕉が山形県の立石寺に参詣したとき詠んた句だそうですが、芭蕉に「岩にしみ入る」と詠わせるほど、そんな鳴き声をする蝉は、芭蕉の心を捉えた蝉は、どんな蝉なんだろうかと知りたくなってしまいます。 どうやら、そう思うのは私だけではなかった様です。 芭

          蝉時雨(しぐれ)と しみ入る蝉の声

          世界最高峰の美術館、展覧会の製作過程とその舞台裏

          6年程前のことになります。《 世界最高峰の美術館で開催された「挑戦的な展覧会」の製作過程と「メットガラ」というオープニング・イベントの舞台裏に飛び込んで撮影されたドキュメンタリー映画 》が日本で初公開されるという知らせを聞き、映画館に足を運んでみました。 そのドキュメンタリー映画は『メットガラ(Met Gala)』という映画でした。 今回は、その『メットガラ』というドキュメンタリー映画について、観て印象に残ったこと、感じたこと、考えたこと、そして学んだことを文章にして見よ

          世界最高峰の美術館、展覧会の製作過程とその舞台裏

          大統領への道をつくったリチャード・ニクソンの言葉

          リチャード・ニクソン(Richard Milhous Nixon 享年81歳)氏はウォーターゲート事件で大統領を辞任し有名になりましたが、大統領の在任中は、泥沼化したベトナム戦争からアメリカ軍を完全撤退させ、戦争を終結させたり、悪化していた東側諸国との関係修復に力を尽しました。そして1969年には佐藤栄作首相との会談で、1972年に沖縄を日本に返還する合意をする等、大統領としての手腕と業績が高く評価されました。 また大統領を辞任してからも、回顧録を含め10冊以上の書籍

          大統領への道をつくったリチャード・ニクソンの言葉

          大きな樹を見て思うこと

          大きな公園の中に、とても広い原っぱがあります。その原っぱの真ん中に、とても大きな欅の樹が一本あります。 冬のこの季節に、この欅の樹を見るために、この公園に足を運んでみると、秋にはすべての葉が落ち葉となって、今は葉はないけれど、伸びやかに大きく横に広がる枝の姿はとても美しく、凛々しささえ感じます。 枝を大きく横に広げる樹姿は、欅が本来持っている特徴の様です。   四季を通して、この欅の樹を眺めていると、葉のない、冬の寒い今頃の樹姿であっても、春や夏の緑豊かな葉があるときの樹姿で

          大きな樹を見て思うこと

          何気ないことに、意味があると感じるとき

          以前、読んだ日本経済新聞の中で「ビジネスで成功している人の8割が、何気ない、予想もしていなかった、その偶然の出来事がきっかけとなっていた、という調査結果を、キャリア論で有名な学者、ジョン・D・クランボルツ(John D・Krumboltz)氏が発表している」というコラムを読みました。 また、これも以前、新聞の記事、本を読んで知ったことですが、日本経済新聞が連載している記事「私の履歴書」で取り上げられている方々のエピソードを分析した学者がいたそうですが、その学者によると「私

          何気ないことに、意味があると感じるとき

          笑顔の向こうにセレンディピティ

           はつらつとした人に出会うと、何となく「自分も意欲をもって頑張ろう」という気持ちになって来るから不思議です。 いつもニコニコしている素直な明るい人と会話をしていると、こちらも明るく楽しい気分になって来るからこれも不思議です。 笑顔には伝染する力があり、人を惹きつける力があるんですね。 いい縁というのは、素直で明るい人のもとに集まって来ると言いますから、いつも笑顔で素直な心で、何事にも一生懸命チャレンジしていると、幸運な出会いがたくさん引き寄せられて来るような、そんな気がして

          笑顔の向こうにセレンディピティ

          ずっと 心の耳で ベートーヴェン

          20歳代中頃から30歳代中頃まで、クラシック音楽専門店にベートーヴェンの曲を聴くために何度も足を運んだことがありました。そうした中で「ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品 61」に出会い、この曲を繰り返し繰り返し何度も聴いたことを覚えています。 この作品 61 に強く惹かれた理由を、その頃は言葉で説明することは出来ませんでしたが、長い期間、聴き続ける中で、漸く少しずつ言葉で説明出来るようになったように思います。 「叙情的で気品があり、その上、深い精神性を感じることです。そして気迫が

          ずっと 心の耳で ベートーヴェン

          「顔真卿」の筆力と書風に出会って

          30代前半の頃のことですが、書の指導を専門としている方に出会う機会があり、その方から当時「国立新美術館」で開催されていた『日展』の「書」を見るようにと薦められ、国立新美術館に足を運んだことがありました。 美術館に足を運び、館内に入ってみると、その2階には「書の展示コーナー」が設けられており、そこには掛け軸に表装された多くの書が展示されていました。展示の多さに圧倒されましたが、どの書も「とても丁寧に書かれていて、とても綺麗な書!」というのが第1印象でした。 ここに展示されている

          「顔真卿」の筆力と書風に出会って

          「面白い本」と「笑い」と「コミュニケーション」

          読むと、妙に可笑しくて笑ってしまう本を紹介します。 本のタイトルは「ざんねんないきもの事典」です。 絵もあって、楽しく読めます。  その本には、こんなことが書かれています。 「イルカは眠ると溺れる」 「テントウムシは鳥が吐き出すほどまずい」 「ガのシロヒトリのプロポーズは、気持ち悪い」 「一匹オオカミは弱い」 「ほとんどのホタルは光らない」 等などです。 そして、その理由を各専門家が、わかり易く説明していますので、なおさら面白いです。 何気ない日常の会話のなかで「こんな本

          「面白い本」と「笑い」と「コミュニケーション」

          「出会い」で思い、感じ、考えたこと

          出会った人、コト、モノが、自分の人生に大きな影響を与えていることを、痛感することがあります。 常に、つながりや関係性の中で生きていますから、お互いに影響を与えていると同時に、お互いに影響を受けているとも言えます。 そう考えると、自分をとりまく環境が、自分の人生にどれだけ大きな影響を与えているか、そのことをしっかり見返り、考えてみることも大切なことだと思っています。 意識していても、していなくても、知らず知らずのうちに染まっていく、「朱にまじわれば、赤くなる」という言葉が

          「出会い」で思い、感じ、考えたこと

          演技と存在感

          7年程前のことになります。上映(開封)された映画を見たとき、とても感動し、印象に残った一つのシーンがありました。それを忘れないようにと、そのとき携帯メールに書き込んだその内容を、今回、公開したいと思います。 その映画は『ウォルト・ディズニーの約束』、原題は、SAVING MR. BANKS です。 内容は、あの名作映画『メリー・ポピンズ』を誕生させるに至った映画製作の裏舞台(実話)を映画化したものです。 ウォルト・ディズニーが原作者に、何度も映画化の申し出をしましたが、

          被写体としての自分

          最近、様々な機会を通して、様々の方と一緒に写真を撮って頂くことがありますが、皆さんは職業柄、撮影に慣れているからでしょうか、どんなショットでもいい雰囲気で写っています。 被写体であるその人の生き方や、日頃の心の持ち方が写真に写ってしまうのかもしれません。 これを機会に、写真に写った自分の姿を通し自らの生き方、日々の心の在り方について見返ってみようと思いました。 そんなとき、音楽のコンサート用ポスターやチラシの宣材写真に、自ら被写体となっているソプラノ歌手(コロラトゥーラ)