或る女の拙著である。

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最近の記事

奥行きのあるもの

先日、はじめて能登と金沢を訪れた。 能登はともかく、金沢といえば、近年若者の人気観光スポットになりつつある。 駅前には、私と同じくらいの歳の若者観光客が多く見られた。 茶屋街という昔ながらの茶屋の風情を残した街は、特に映えスポットと化しているだろう。 近年、“いかにもな昔ながら”の空間が映えるとされSNSを通じて人気となる“かなり今っぽい”現象、が蔓延しているなあと思う。 そういえば、2021年にリニューアルされた西武ゆうえんちは、「昭和の熱気を遊び尽くそう。」と謳

    • ありがとう、東京五輪

      東京2020オリンピック競技大会は二週間余りの大会期間を経て、今日閉会式を迎えた。 1年の延期を余儀なくされ、コロナ禍に開催された異例の五輪であった。 私は開会前、正直なところ五輪に興味がなかった。 開催反対なわけでもなかったが、こんな状況で開催して誰が楽しめるのか、とか、通行規制が面倒くさいなあ、などと思っていた(選手村の近くに住んでいるので、実際交通面ではかなり私生活に影響があった)。 私は参加していないが、家の近くでは半年前くらいから頻繁に“オリンピック反対”デ

      • 港区女子の比ではない銀座の女

        はじめて『黒革の手帖』というテレビドラマをみてからもう4年ほど経つが、私はその間ずっと主人公の原口元子という女に憧れている。 原作は松本清張の小説であり、過去何度かキャストを変えてドラマ化されている。 私が一番最初に同話を知ったのは、2017年放送の武井咲さん主演のドラマによる。 そこから遡り2004年放送の米倉涼子さん主演バージョンのものを一気見し、『黒革の手帖』、そしてその主人公である原口元子に惚れ込んでしまったのだ。 原作含め、各年版で多少ストーリーは異なるのだ

        • モノポリーで人生を悟った話

          モノポリーというボードゲームをご存知だろうか? モノポリー(英語:Monopoly)は20世紀初頭にアメリカ合衆国で生まれたボードゲームの一つである。プレイヤーは双六の要領で盤上を周回しながら他プレイヤーと盤上の不動産を取引することにより同一グループを揃え、家やホテルを建設することで他のプレイヤーから高額なレンタル料を徴収して自らの資産を増やし、最終的に他のプレイヤーを全て破産させることを目的とする。モノポリーとは英語で「独占」を意味する。 【出典:Wikipediaより】

        奥行きのあるもの

          擬態会社員

          私はこの4月から社会人になった。 会社員とは便利なもので、ある程度の安定的な収入と、他者からの承認を得られ、或いは良くも悪くも人とのコミュニケーションが付き纏うことから、孤独感も多少は薄れる。 しかしものの3か月目にして、もうこれに飽き始めている。 弊社では研修はほとんどないため、入社して間もなく通期決算の計算書類の作成に携わったし、外部に出す設備投資も計算したし、管理会計の帳簿にもアクセスして関数をガチャガチャいじったりもした。東証に提出する書類やらその他適時開示書類

          擬態会社員

          思想の議論

          梅若の能楽堂で,万三郎の「当麻」を見た。 僕は,星が輝き,雪が消え残った夜道を歩いていた。何故,あの夢を破る様な笛の音や太鼓の音が,いつまでも耳に残るのであろうか。夢はまさしく破られたのではあるまいか。白い袖が飜り,金色の冠がきらめき,中将姫は,未だ眼の前を舞っている様子であった。それは快感の持続という様なものとは,何か全く違ったものの様に思われた。あれは一体何んだったのだろうか,何んと名付けたらよいのだろう,笛の音と一緒にツッツッと動き出したあの二つの真っ白な足袋は。いや,

          思想の議論

          「全力」で過ごした或る夏の話

          私は最近,大学生活の中で経験した様々な事柄について,懐古している。それが来たる社会人生活にたいする多少の抵抗なのか,それともノスタルジアを覚えることで大学生活の集大成としようとしているのか————はっきりとはしないが,よい機会なので,いくつかのエピソードをこの場で熟熟と書いてみようと思う。 「何事も全力でやれ」今回は,私が某学習塾で講師のアルバイトをしていた,大学2年の夏の話である。私は,当時勤めていた校舎で,中学受験を志す小学5年生に,国語を教えていた(科目は全く私の希望

          「全力」で過ごした或る夏の話

          夕日を解釈するという事

          コロナは当然の如く嫌なものだが,コロナ禍で新しい趣味が出来た。 「日没の20〜30分前を目安に出発して,走って,辿り着いた”最高の場所”で日没を迎える」という,通称サンセット・ランである。 いや,これが”通称”なのかは知らないが,今ネットで「サンセットラン」で検索してみたところ,ある程度は一般的に使われているということが判明したので,安心した。少なくともわたしは,そう呼んでいる。 サンセット・ランを始めたのは,一回目の緊急事態宣言下であったが,宣言が明けて徐々に日常らし

          夕日を解釈するという事

          ジムを休会して悲しくなってしまった話

          いよいよ、新型コロナウイルスが国内でも猛威を振るってきた。 日本の国民的スターである志村けんさんの訃報は、先週までコロナを軽んじていたことを否定できない自分に、とても重くのしかかった。 これを機に、というのは遅いけれども、改めて危機意識を持ったものである。 だから私は早速、通っていたジムに休会手続きに伺った。 ジムの諸手続き締め日というのは大抵前もって設定されているもので、本来であれば4月からの休会であれば、手続きは2月の上旬に行わねばならない。 しかし今は国や都か

          ジムを休会して悲しくなってしまった話

          金曜日のアヒージョ

          金曜日の夜、女は家でアヒージョと梅干し酎ハイを拵えようとした。夕方頃に来た華金のお誘いはすべてお断りだ。今週は特に疲れた。夜、街に繰り出す気力など残っていない。スーパーで買い物をして帰宅、重い荷物を下ろすと女の鎧も剥離した。 オリーブオイルの量にたいして、鍋に入れたマッシュルームの量はあからさまに多かった。 「君には逆算思考が足りていない。」 女はかつてどこかで、そう言われたことがある。 ふん、いつもこうなのだ。 不均衡な鍋の中身を無視して、蓋をした。梅干し酎ハイを作った。

          金曜日のアヒージョ

          小池真理子に熱狂した、18の夏(EP.0 and 1)

          18の夏、作家・小池真理子に熱狂した。 彼女の描くストーリー、語彙、表現……彼女の世界観そのものに熱狂し、それと類似したものをなんとか自身の手で、自身の体験をもとに、小説という形で書き起こそうとした。 しかしながら、その試みは呆気なく失敗に終わった。 その1年後の19の夏、一念発起したわたしは彼女の作品を通して自身が思考したことを随筆文で著そうとする。 今度こそ自称小池真理子研究家となったはずであったが、序章を書き終えた段階で手が止まってしまった――自身がそれだけ陶酔

          小池真理子に熱狂した、18の夏(EP.0 and 1)