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ジムを休会して悲しくなってしまった話

いよいよ、新型コロナウイルスが国内でも猛威を振るってきた。

日本の国民的スターである志村けんさんの訃報は、先週までコロナを軽んじていたことを否定できない自分に、とても重くのしかかった。

これを機に、というのは遅いけれども、改めて危機意識を持ったものである。

だから私は早速、通っていたジムに休会手続きに伺った。


ジムの諸手続き締め日というのは大抵前もって設定されているもので、本来であれば4月からの休会であれば、手続きは2月の上旬に行わねばならない。

しかし今は国や都から自粛要請が出ている以上、そうこう言っている暇もないため、特別に”即日休会”を認め、3月中の手続きで4月から休会扱いにしてもらえる、という話を聞き私も乗り出した次第である。


手続きは、オーナーなのかはわからないが、いつも見かけるスタッフが進めてくれた。

書類を確認し署名などを行なっていたとき、彼は私にボソッと、「よく来てくださってましたよねえ、」と言った。

驚いた。

通っていたジムは良くも悪くもスタッフとの交流が殆どないため、来店時にスタッフカウンター越しに会釈するくらいであったが、この人は私がよく来ていることをちゃんと知ってくれていたのか……!


ジムといえば、もう一つのホームであった。

私は大学が好きではなく、通学のたびに疲弊していたが、帰宅途中にジムに寄ってトレーニングをするのが日常の楽しみであった。

地下にある店舗に辿りつき、ドアを開けると道場入りする気分になったものだ。

今日もやったるぞー、という心持ちだ。

しかし、今考えればそれも、あの空間があったからこその心持ちであろう。

慣れた器具、同じ時間帯に行けば、大抵いつも同じ顔ぶれがいて。

そリャ、友達こそいないけれども、一緒の空間でトレーニングしている人のことは勝手に同志だと思っている。

社畜そうな若いお兄さんがダンベルをもって唸っている姿を見るのも堪らんし、いいケツをしたお姉さんのトレーニングを横目で見ながら張り合うのもまた楽しい。


私はトレーニングを一人で黙々とやって来たつもりだった。

しかしそれは違ったのだ。

あのジムという、色んな人が鏡と向き合いながらバーベルやダンベルを持ち上げたり、マシンを押したり引いたりしている、側から見たらかなりカオスな空間に育てられてきたのだ。

スクワットは60kg、レッグプレスは220kgでメインセットを組めるまでになった。入会当初は15kgのチェストプレスマシンでもすぐに大胸筋を痛めていたが、今ではベンチプレスを30kg以上の重量で反復できる。


ジムを休会した。

ロックダウンの可能性を考慮し、取り急ぎダンベルとチューブを購入した。当面のところは自宅トレーニングで凌ぐ予定だ。

ついでにロッカーも引き払った。

パワーベルトやらグリップやら、すべての私物を取り出し、ジムを後にした。

帰ってそれらを自宅に置いてみると、なんとなく似つかわしくなかった。


少しの間お休みするだけなのに、なぜこんなにも感傷的な気分になるのだろう。

ホームを離れる、というのは寂しい。

いつ戻れるのか見通しが立たないのも不安だ。

あそこはフランチャイズ経営だから、私と同じように休会、若しくは退会する人が増えたら、店舗が潰れてしまう可能性もある。

もしそうなってしまったら、それはホームがなくなる、ということを意味する。

烏滸がましいかもしれないが、情けで会費を納め続けられたらね、とも思うが、こちらも出費を抑えたいのは本音ではあるし、それよりもそうしていたら絶対に通いたくなってしまうに決まっている。


今は健康、安全第一である。

寂しい気持ちもあるけれど、コロナの野郎が収束したら、またすぐ帰ってくるからね!






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