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時代の先駆者は、常に孤独である

繰り返し問い続ける生活者の視点

マーケティングにとって最も重要なのは、顧客の要望軸がどのように変化しているかを把握することです。そして顧客が持つ興味と関心、そして社会の変化を整理・分析して発信することが、マーケティングコンサルタントである私たちの第一の役割であると考えています。
しかし、生活の変化、社会の変化というものは一つの塊としてパッと目の前に現れるわけではなく、極めてランダムな形で、しかも初めはほんの小さな兆しとしてしか現れてきません。
そのため私たちは、日々の生活の中での小さな「気づきのメモ」から始まり、あらゆるメディアを用いて得た情報の中から、大きな変化の兆しとなるようなものを拾い集め、持ち寄って、整理・分析を行なっています。それが、前回のnoteで紹介した『Imaginas』という我が社の時流研究プログラムです。メンバーも変えながら40年間、毎週1回続けています。
そして、そこで発見した時代のコンセプト、変化の兆しをマーケティングのヒントに整理して、書籍にまとめてみる、ということを続けてきました。
こうしたことが、今でも我が社の提言の原点となっているのです。



コンセプト・ウォーク

ここで、2021年末に弊社出版部 Life Design Booksが出版した本を紹介します。『コンセプトウォーク』という書籍は、我が社がこれまで出版してきた100冊近い書籍を1冊にまとめたもので、谷口正和という一人のマーケッターを中心に情報化社会とは何か、生活者が世の中の中心になるための社会とはどんな形なのだろうか、ということを考え・提言してきた軌跡です。

Concept Walk 谷口正和

マーケティングのテクニックや方法論というよりも、様々な情報や、お客様との対話の中から拾い上げた要望を、時代の要望に寄り添うようにして捉え直し、既存事業のアドバイスや新しい事業のヒントとして提供してきました。そのコンセプトワークと40年間歩んできた歴史をコンパクトにまとめたものがこの本です。
 40年というと随分古いように感じますが、書籍のタイトル一部を一読いただければわかるように、今読むことでハッとするコンセプトが散りばめられています。多くの企業にとって、今でこそ「生活者研究」や「ライフスタイル研究」が当たり前のテーマになっていますが、本書を見てもわかる通り、私たちは、40年前から「ライフデザイン」というテーマを掲げ、「地球・生命・生活・人生」は一体のものとして語るべきだと考えてきました。
私たちはいつでも、歴史から多くのことを学ぶことができます。 本書を通じて、マーケティングにおける過去40年の時代のコンセプトを振り返ってみることだけでも、未来につながる多くの学びを得ることができると思います。

書籍タイトル
[第3の感性] 1986年 プレジデント社
[美の戦略]  1990年 日刊書房
[発想の画帖] 1993年 プレジデント社
[コンセプトは安心] 2002年 東洋経済新聞社
[日本へ回帰する時代]2007年 繊研新聞社
[ブルーバードマネジメント]2009年 ライフデザインブックス
[Free Style Shift]    2018年 ライフデザインブックス




自己の再発見

私たちは、マーケティングのヒントが自分の外側にあると思いがちです。しかし、あらゆることのヒントはすでに自分の中にあるとも言えるのです。溢れる情報の中から特定のものを拾い集めるのも自分、その情報やヒントから考え方を変えたり、買うものを変えたりするのも自分。
市場経済の中での地球資源との共存、生かし生かされる生命社会の実現。
一人ひとりの命をどのように社会で生かし生かされていくかということの原動力は、結局自分自身です。
自分は何がしたいのか、どんな人生を送りたいのか、そのためにどのように社会と関わっていくのか、どんなことが必要なのか、どんな形で専門性を磨いていくのかといった問いかけは一人ひとりにされています。
仕事とプライベートを切り分けることが当たり前のように刷り込まれてきましたが、コロナによって、テレワークが増えたことで、生活の中に仕事が紛れ込み、仕事の中に生活が紛れ込み、その境は曖昧になってきています。
まさに一人ひとりが自分の時間を仕事とプライベートに区別せず、自分のために投資するときです。
マーケティングの視点から言えば、今大切なのは、自分自身を高めることのプロフェッショナリズム、つまり自己学習、自己成長のための自己投資です。時代が求めるお金の使い道は、いまやショッピングやエンターテイメントというモノの交換ではなく、それが自分をどのように価値づけるか、そして社会にどう戻って生かされるかという価値交換の時代にきています。

コンセプトウォークという、気づきのトレーニングを繰り返しながら、50年先、100年先の未来に向けて、私たちは進み続けています。
時代の先駆者は常に孤独です。みんな一緒ということに価値を置かず、先を見据える感性を磨くからこそ孤独を感じるし、それが成長につながってゆくのだと思います。

現在執筆中の「谷口正和」最新刊を少しだけ紹介すると・・・
パンデミックや戦争で世界が混沌とする今、生き延びるために我々は何を学び、社会を混沌から脱皮させる力になるのは何なのか・・・。
その答えはMimicry〈ミミクリー・擬態〉。真似をして溶け込み、紛れ込み、生き延びること。真似る=学ぶこと。学習することであなたが変わり、世界が変わっていくのです。

ご期待ください。

文:石川 勇一郎
Japan Life Design Systems
Life Design Creative Strategy

Vice president


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