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藍 宇江魚
2021年12月25日 16:34
ふぐ鍋 「先輩。家でふぐ鍋なんて初めてよ」「ふぐ料理屋やってる従弟に電話したら、パンデミックの煽りで休業中だったんだよ。頼んだら出張でやってくれるって言うから来てもらったけど。あんた達、運が良いよ。こんなご時世だから食べられないと思ってたんだけどね」「でも、ふぐ鍋って冬もんだと思ってましたけど、中々美味しいわね」「夏ふぐって言うのもあるらしいよ。いつでも美味しいって従弟が言って
2021年12月13日 00:46
「うぉッ。くそッ。あぁぁぁぁぁッ。あーぁ、負けた…」 純太は悔し気にVRゲーム機のゴーグルを外した。 ソファーに座ってノートPCの画面を見ると、やはり同じようにゴーグルを外しニヤケながらもドヤ顔のサミーがソファーに座って純太を見ていた。 事の起こりは、三十分前。 いつものようにビデオ通話をしていた純太とサミーだったが、話題がオリンピックの開催とパンデミックの衰えることのない蔓
2021年11月2日 16:30
SNS:純太と老板によるビデオ通話。 南台公園。 快晴の朝。 広場で太極拳体操。「イー、アー、サン、スー…」 お年寄りたちは日射しを避けて分散して体操をしているため、なんだか少しばかり窮屈そうな感じに見える。 …世の中的にはこれを『密』と言うんだろうなぁ… 僕は、ぼんやりとそんなことを思った。 僕と真由美さんは、広場を見通せる東屋風の休憩所に居る。「純さん。これって何?」
2021年10月8日 14:58
SNS:純太と老板によるビデオ通話『老板。久し振り』 老板(ラオバン)。 台北郊外の猫空(マオコン)にある茶園の主人。 向うでは、店主のことを老板と呼ぶことが多い。 茶園で親しく話しかけてきた時、名前が分からないからそう呼んでいる。 彼にも本名はあり、僕も当然それを知ってはいるが、彼のことをそう呼んでいるうちに馴染んでしまった。『純さん。元気だったかね?』 老板は僕をいつ
2021年10月25日 00:43
SNS:純太と老板によるビデオ通話。『淳さん。お茶、ありがとうね』 父の死を知った老板は、僕に香典を送ってきてくれた。そのお返しに日本のお茶を送ったのだが、どうやらそれが届いたらしい。『いやー。日本のお茶。美味しいね』 僕は東京に隣接した埼玉県下の町に住んでいる。この辺りは都心への通勤圏にあるが日本茶の産地としても知られている。パンデミック以前、この町に住んでいると言うと大抵の人