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(短編小説)異界に投げ込まれた竹の姫君への月の大君のおなげき


とわの別れ


「あ~あ、息がつまりそうだった。」

 竹の姫は翁と媼の姿が見えなくなったのを幸いに、とたんに羽織った十二単の薄衣をそのへんに放ってだらしなくへたりこむと悪態をつきました。

べっ甲、螺鈿細工を散りばめた髪かざりをはずし、腰まで届こうかという長き髪をはらりとざんばらにひろげつつ枝毛を探しはじめました。

給金仕えの身の重しのごとき動かし得ざる品性をやむなく保ちざる負えないお付きの者たちの目には、ひさかたぶりの絵に描いたようなへたりの本性風情でございます。風雅な絵巻物の世界とのあまりのへだたりに世の無常を感じるもの。

「これっ、何という口のきき方でしょう。はしたないにもほどがあります。」

月面ゲートウェイへの通行手形をどこへやったかあたふたしながらおつきの乳母がたしなめました。

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