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薄井秀夫
2020年6月2日 15:37
平成18年に「千の風になって」という曲がヒットしたことを覚えている人は多いだろう。実はこの曲のヒットは、仏教界にとってかなりの衝撃だった。 それは、歌詞にこれまでの仏教のあり方を否定しかねない内容があったからだ。特に問題になったのは、次の二つのフレーズだ。「私のお墓の前で泣かないでください。そこに私はいません」「千の風になって、あの大きな空をふきわたっています」 つまり、お墓に「私
2020年5月29日 16:19
あの世から故人の霊が戻ってくる、それがお盆である。そして葬式仏教の宗教世界は、霊と私たちの交流、あの世とこの世の交流でなりたっている。 ここでは霊という言葉を使ったが、霊にあたる事柄には、いくつもの呼び名がある。霊魂、魂、御霊、精霊、死霊、亡霊、幽霊、魂魄が代表的なものであろう。学問的にはそれぞれ微妙に定義が異なるが、ここでは特にそれを区別しない。おおざっぱに言えば、〈亡くなってからも存在す
2020年5月2日 11:46
言うまでも無いが、仏教は、紀元前五世紀頃にインドで生まれたお釈迦さまが、人生をよりよく生きるための教えを説いたことに始まり、アジア全域に広がっていった世界宗教である。 ところが現代日本の仏教は、このお釈迦さまが説いた時代の仏教とは、かなり様相が異なっている。その最大の特徴は、人が生きるための活動より、葬儀など人の死に関わる活動に大きな比重があることである。そうした現状を象徴する言葉がある。そ
2020年4月29日 13:48
山田太郎は、ごく普通の会社員である。 一年前、静岡の実家に住んでいた母親が亡くなって葬式を行った。父親は十年前に亡くなっていたので、喪主は太郎だった。 そして今回、一周忌を行うことになった。やはり施主は太郎である。場所は、お墓のある静岡のお寺、お経はそこの住職さんに読んでもらうことになった。 その日の朝、新幹線で東京から静岡に向かう。太郎と太郎の妻、大学生の娘の三人である。子どもは他