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前向きな力で引き寄せた自分の居場所―VRスタートアップという現在地―

経理の挑戦メディア『デンタツ』。今回インタビューしたのは、VRスタートアップのクラスター株式会社でご活躍中の、石倉ちあきさん。

家にいながらバーチャル空間に集まって、イベントに参加したり友達とコンテンツを楽しめる、いま話題のメタバースプラットフォーム『cluster』運営しているクラスター株式会社と石倉さんのご縁は、弊社JAPANFASがお手伝いさせていただきました。

石倉さんが弊社のウェビナーに参加してくださった際、
「現職よりもさらに魅力的な会社が、もしあれば……」
とご相談いただいたことがきっかけで、ご縁が生まれました。


同僚であるクラスター社の広報部・西尾さんに
石倉さんのお人柄をうかがったところ、

「常に笑顔で感じがいい」
「仕事が詰まっている時でも気さくに対応してくれるから頼みやすい」
「『管理部門にこういう人がいたらいいな』という人間性」

と、厚い信頼を寄せられている模様。

転職活動の軸や好きな経理の領域、経理をがんばるきっかけとなった出来事について、うかがいました。

担当はJAPAN FAS俵家と大沢です。


キャリアの先輩をご紹介

クラスター株式会社
コーポレート管理部
石倉 ちあき 氏


四年制大学工学部卒
大手設備機器メーカー入社
大手ECサイト/ゲーム入社
2021年 クラスター株式会社 コーポレート管理部 入社


※所属・役職は取材当時のもの



工学部卒で設計職へ。そして…経理?


――まずは石倉さんのご経歴をざっくりと教えていただけますでしょうか?


宮城県仙台市の出身です。昔から好奇心がすごく旺盛で、ゲームと本を読むことが好きでした。
家をつくるシュミレーションゲーム――CADのようなゲーム――にすごくハマったことがきっかけで、子どものころからずっと建築士になりたいと思っていました。

大学は、女性が少ない工学部の出身で、いまの会社に近い部分を感じています。ゼミとバイトにあけくれる日々。大学生っぽい大学生をしていました。

工学部建築学科出身なので、そもそもファーストキャリアは経理ではないんです。ゼミが素材系だったこともあり、就職活動では素材を扱う会社やメーカーを見ていました。
そして設計職として採用され、住宅設備機器メーカーに入社しました。

最初の会社で入社して2年になるころに、経営統合によって設計職から経理に異動になり、そこから経理としてのキャリアがスタートしました。
意図していなかったです、全然。

「わからないわからない」な毎日


急な辞令だったので「とりあえずやるしかないかぁ」という気持ちでかなり能天気でしたね。もちろん、簿記とかなにもわからない状態でした。

営業経理として売掛金回収の処理をしたり請求書を発行したり、あるあるな営業事務をしていましたが、毎日つらかったです。

知識がゼロで、簿記がほんとにわからなくて、何をやっているのかよくわからず、最初の1年くらいはつらい日々を過ごしていました。

同僚にすごく恵まれて、教えてくださる方がたくさんいて、毎日のように飲みに行ってくれる人もいたので、「わからないわからない」って言いながらもなんとか過ごしていました。


そんなころ、東日本大震災が起きたんです。
実家や親戚、友人が被災しました。
私は東京にいたので、支援できたことや心の支えになれたこととかがあって……。

はじめての経理でつらいと思っていたときだったんですが、家族のほうがもっと大変な目にあっていたので、「めげていたらいけないな。経理をがんばろう」と、そのとき思ったんです。
それから、簿記の勉強をはじめました。

勉強するようになってから、簿記がすごく人気のある資格だということに気づいたんです。
どこの会社にも経理は必ずいるので、これを持っていたら強いんじゃないかな? と思い始めました。

好きな範囲は、連結会計


日商簿記2級の資格をとり、次に1級の勉強をはじめたときに、世界が広がっていくのを感じました。簿記1級ではじめて連結会計という分野に出会ったんです。連結会計ってすごくおもしろいなと思っていて、好きな範囲なんです。

簿記2級までは、個人商店から株式会社(単体決算)までを学びますが、簿記1級になると、複数子会社を持つグループ全体の連結会計や海外子会社がある場合の決算が網羅的に学習範囲に含まれています。

「こういうものが簿記の中にあるんだ! 大きい会社の決算ってこういうふうにできているんだ」と思って、せっかく東証一部上場の会社にいるなら、連結決算をやりたいと思いました。

当時勤めていた会社では、半年に1回、部長たちの前で自分の成果報告を発表する場があり、部長に直接、「将来、連結をやりたいです」と声を上げたんです。
もちろんすぐには異動できず、「空きが出たら」ということになりました。


そこから2年くらいかかりましたが、本社決算のチームに異動することになります。そこが大きな転機でしたね。

本社決算のチームは連結手前の単体決算をつくっているチームなので、社内経理の花形です。なので、異動できてすごく嬉しかったです。

でもわからないこともたくさんあったので、最初の1年くらいはがむしゃらにやっていきました。

――その後、1度目の転職をされたそうですね。きっかけはなんだったのでしょうか?


異動から2年ほどが経ち、年次決算が終わって落ちついていた時期にふと他のチームを見ると、税務・開示・予実・連結と、全部チームがわかれていることにあらためて気づきました。

大きい会社なので当たり前といえば当たり前なのですが、子会社もたくさんあって、海外チームもあって。

「自分が全部のチームをまわって、この会社の決算とか経理のことをわかるようになるまでどれだけ時間がかかるんだろう……。まわりきれないんじゃないかな」と思いました。

勉強して知識をつけたことがあったうえで、「もう少し決算とか申告とかいろいろできるようになりたいな」と思ったことが、転職のきっかけでした。


――転職活動の軸はありましたか?

ひとつ目は、会社のプロダクトやサービスを自分が好きになれるか。誇りに思えるか。会社への愛というところ。
数字を扱う仕事なのに自社の事業に興味を持てないのは、悲しいですよね。

ふたつ目は、新しいことや自分がやりたいことに近い業務ができる会社。
まずは年次決算を締められるようになりたいなと考えていました。自分の経験をすぐに活かせるところが決算系なので、連結じゃなくてまずは決算かなと。1社目で決算はやっていましたが、かなり細分化されていたので。


――初めての転職活動は、どのように進めていったのでしょうか?

初めての転職活動はどうすればいいのかわからなくて、とりあえずインターネットで調べて、大手のエージェントさん2社に話を聞いて進めました。

上場・非上場や社員数などは全然気にしていなくて、決算とか税務とか一気通貫して見られるところで探していました。


そうして転職した2社目には丸3年いましたが、苦しかったことは無いですね。20代、30代の年の近い人が多くて活気があり、すごくいい環境でした。

自分を含む3、4人のチームで複数社の決算から申告までやれていたので、やりたかったことがほぼほぼ叶いました。想定外は、思っていたより忙しかったことだけですね(笑)。

――そんな恵まれた環境だったにも関わらず、その後2回目の転職をされたのですね。いったい何があったんでしょうか?


それが、何もないんですよ(笑)。何もなかったんですけど、2社目に入って3年が経つころには、経理や決算がひととおりできるようになったなという実感があり、
「今後、自分がキャリアを広げていくにあたって、何が必要かな?」
と考えはじめたことがきっかけです。

今後のキャリアを考えていて、JAPAN FAS社のSNSで、スタートアップCFOの方が登壇するウェビナーを知り、参加しました。
本当に偶然……縁だったなと思います。

当時は全然転職を考えていなかったというのが正直なところです。
居心地がいい会社にいたので、「今よりもさらに魅力的な会社があれば」という気持ちでしたね。

――経理の山根さん(※デンタツ006)と話したのが大きかったのでしょうか? 「スタートアップってどんな感じなのか、働いている人と話してみましょうよ!」となって、お会いしたんですよね。


そうですね。山根さんとお話して具体的にイメージできたのは大きいです。

「とりあえず紹介してもらっていいですか?」というスタートだったと思います。「どんな会社があるか、まず見てみたいです」というところから。

第一印象から決めていました感


――「紹介してもらっていいですか」となった翌々日に、経理をお探し中のクラスター社と打合せをしたんです。「びっくりするくらいドンピシャな人がいますよ!」と言って、石倉さんをご紹介しました。


クラスターのお話を聞いたときに「ここに行くだろうな」と思いました。

ほかにも迷っていた会社はありましたけど、「第一印象から決めていました感」がありました。

自分のキャリア的に、内部監査とか内部統制の方に広げたいという話をFASの俵家さんと詰めていたので、スタートアップとかでこれからそういう体制を構築していく系の会社、もしくは新興上場でこれからさらに強化をしていくような会社をターゲットに転職活動をしていました。

――次々と内定が出たので、「石倉さん、すごい…!」と思っていました。何社か選択肢があったなか、クラスター入社の決め手は?


何よりも会社のプロダクトが自分にとってすごく魅力的だったことが一番ですね。

あとは、俵家さんからクラスターを紹介していただいた直後に、知人から「知り合いが働いているし、おもしろい会社だと思うよ」と、すぐにクラスターのいい話が聞けて、おもしろそうだなと感じました。

社員50人くらいでちょうどいい規模感だなというのもありましたね。会社が大きくなる過程が感じられそうだなと。少な過ぎず、多過ぎず、経理2人目で。

コロナ禍だったので、バーチャルが伸びていきそうだなという予感があったのもあります。


ベンチャーだからどうとは全然考えていなくて、もともとポジティブな性格なのでそこに対する不安はあまりなかったですね。

とにかく、人が少なくて、新しいことができて、おもしろそうという。
なんかワクワクのほうが強くて。とくに心配とか不安はなかったかなと、振り返って思います。

――入社後に感じたギャップはありましたか?

(ギャップが)ないっていったら変ですけど、(しくみとか)何もなくて、そうだよねとふつうに受け入れていました。人数が少ないからできないことも多いよね、って。
でも、想定よりは全然整っていましたよ。

やるしかないと腹を決めていたので、なんていうんだろう……怖くはなかったというか、やっていくしかないなという気持ちでした。

――クラスター社ではどんな業務を担当されていますか?


まずは、毎日の仕訳や書類整理からスタートしました。
もともと経理業務をやっていた方が1人いて、プラス、CFOが少し手を動かしていて、外部の会計士の方がアドバイザリーで入っているという体制でした。
なので、そこを巻き取って、自分と経理の方で月次決算をまわしていく体制を整えるというのが最初でしたね。

当時、月次は10日前後で締まっていて、そのあとも遅れてきた分の仕訳を入れるような、ちゃんと締まっている状態ではなかったんです。ですから、まずは「何があるべき締まった状態なのかを明確にしましょう」ということをメンバーに伝えました。

作業リストを2人で洗い出して、納期を決めて、分担を見直し、「これだったら何日くらいで締められそう」というところから逆算して、事業部の皆さんに資料を出してもらう、ということをやりました。


現在は、日次、月次、四半期、年次。あとは内部監査も、やっとこれから体制を整えていくぞ! というところです。

これからは、もともとやりたいと言っていた内部統制と構築を実現したいです。会社の管理部をより強くして、事業部の皆さんにのびのびと営業や開発に専念してもらえるようにしたいですね。


会社一丸となって数字をつくるというのは、スタートアップっぽくておもしろい


――石倉さんが思う「ベンチャー経理の魅力」を教えてください。


表裏一体ですよね、いいことも悪いことも。そろってないということがおもしろいし、大変でもあるところで。

いまは会社がすごくグロースしているフェーズなので、自分の部署だけじゃなくて会社一丸となって数字をつくっていくというのは、すごくスタートアップっぽくておもしろいなと感じています。

経理部だけで閉じているんじゃなくて、他の部署と連携したりコミュニケーションをとりながら、会社を大きくするぞ! という感じで、みんなで進んでいます。

――ご自身の現在地について、どんなふうに思っていらっしゃいますか。


ポジティブなので、今までが悪かったとか後悔とかはなくて、割と運任せだったけど、(現在)いい場所にいるなという感想を抱いています。

自分で簿記を勉強したというのは裏にありますけども、人に恵まれてきたので、それを信じてこられたのが一番大きいかなと。

キャリア的なところでいうと、前職までに決算をひととおり経験して、いま新しいことに挑戦しているので、大変ですがおもしろいなと感じています。

――ベンチャーもいいかも? と思っている方に向けて、なにかメッセージをお願いします。


ベンチャーは楽しいしおもしろいので、いっしょに働きましょう!

ほかの方が、なんでそんなにベンチャーとかスタートアップを怖いって思うのか、あんまり理解できないんです(笑)。

あ、不安定とかそういうことですか? 業務量? 大変とか? でも入ってみないと分からないんじゃない? と思うんですよね、私は。

――ベンチャー経理の給与水準はすごく高くなってきていますから、待遇面というよりは先行きとか、そういう点を不安に感じる人がいるのでしょうかね。

それって考えても仕方のないことのような気がして……大企業でも、たとえばリーマンショックとかの外部的な要因で急に倒産してしまうこともありうるので。
それよりも、まずは自分のできることとやりたいことにフォーカスしたほうがいいなと思っています。それが経理でいう簿記や税務の基礎となる地固めの部分だと思うんですけど。

転職は挑戦でもあると思うので、恐れずに一歩踏み出してみるというのが大事だと思います。

ベンチャーでは、経理のような部門が評価されやすいかもしれないと感じます。大企業では、営業などのお金を稼いでくるような売り上げを立てるような部署にスポットが当たりがちです。

ベンチャー経理は細かい対応が必要な分、社内の人に感謝され、1から10までやらせてもらえるところが魅力だと感じています。

クラスターでは、半年に一回、がんばった人を社員投票で決めるんですが、昨年末に「ベスト加速賞」というMVPのような賞を貰いました。(管理部門の私が受賞できたことに)私が一番びっくりしました。

――ベンチャー・スタートアップ企業で働くにあたっての「心構え」みたいなものはありますか?

会社の数字をみんなといっしょにつくっている感覚が楽しいので、そういう気持ちを持てるといいのではないでしょうか。

会社規模は小さく、業務範囲や裁量は大きいので、人より早く経験値を積みたいという志向の人には向いていそうな気がします。

それから、1から10まで教えてくれる環境ではないので、よく言われる言葉ですが「自走できる」とか、自分で考えたり手を動かすのが好きな人のほうが向いていると思います。

弊社の管理部や経理には、他部署との連携・コミュニケーションが苦手な人がいないんです。それは多分ベンチャーあるあるだと思うんですよね。
だから、自己発信できる人というのもベンチャーに向いていると思いますね。


大手とベンチャー、どちらも経験しましたけど、経理であれば基本的な簿記とか税務という土台は同じなので、まずはそういう基礎を固めたうえで自分がどういう志向性でどういうキャリアを積みたいとか、どういうことに興味があるのかを理解して会社を選ぶといいかなと思います。

とくにベンチャーは、どうしても未整備の部分や業務量が多いので、日々のなかで自分を見失わないためにも、自分のことを理解し、将来どうなりたいかを明確にしておくといいかなと思います。

何のためにベンチャーで働くのか、もしくは大企業で働くのかということが明確になっていれば、どの会社でもうまくやっていけると思っています。

――石倉さんは読書好きだとうかがいましたので、最後に、よろしければおすすめの本を教えてください。


・『
テスカトリポカ』佐藤究/著_KADOKAWA
直木賞受賞作です。マヤ文明と日本の川崎を結ぶ、臓器売買ビジネスのクライムサスペンスみたいな内容です。寝ずに一気読みするほど、めちゃくちゃ面白かったです!

・『財務3表一体理解』國貞 克則/著_朝日新聞出版
ベストセラー作品。これは経理に携わる人の初歩の初歩としておすすめです!

・『メタバース さよならアトムの時代』加藤直人/著_集英社
2022年世界的バズワード『メタバース』について、ど真ん中にいる人が書いた注目の一冊です。


――石倉さん、ありがとうございました!

※写真は全てクラスター株式会社オフィスにて撮影
※写真撮影時のみマスクを外していただきました


クラスター株式会社

誰もがバーチャル上で音楽ライブ、カンファレンスなどのイベントに参加したり、友達と常設ワールドやゲームで遊ぶことのできるメタバースプラットフォームを展開。スマホ、PC、VRといった好きなデバイスから数万人が同時に接続することができ、これにより大規模イベントの開催や人気IPコンテンツの常設化を可能にしています。メタバースを実現し、全く新しいエンタメと熱狂体験を提供し続けています。
詳細はこちらをご覧ください。▶(URL: https://corp.cluster.mu/


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企画/JAPAN FAS株式会社
写真・文/Yui Osawa



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