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「経営に近いところでヒリヒリするような意思決定をしたかった」大手証券からスタートアップへのキャリアチェンジ〈前編〉

経理の挑戦メディア『デンタツ』!
第8回目を迎えました。

前編と後編の2回に渡ってご紹介します。

今回は、株式会社助太刀でCFOとしてご活躍中の金谷圭晃さんにお話を伺いました。豊かな語彙力を持ち、お話上手な金谷さん。ご自身の中でしっくりくる言葉を選びながら、真摯に話してくださいました。

まず前編は、英語に触れたきっかけである留学経験から今後の展望まで、現在地について語っていただきます。

担当はJAPAN FAS俵家と大沢です。

今回は前編!

キャリアの先輩をご紹介

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株式会社助太刀
取締役CFO

金谷圭晃 氏


カーネギーメロン大学 数理経済学科卒
2010年大和証券株式会社入社し、おもに不動産、建設、物流企業に対するM&Aアドバイザリー業務に従事
2013年よりロンドンに駐在し日欧間のM&A案件の組成に尽力。2018年に退職しIESEビジネススクール(スペイン)に留学、助太刀入社に伴い中途退学
2019年6月 株式会社助太刀に参画

※役職は取材当時のもの
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アメリカで過ごした学生時代


ーーまずは、金谷さんの生い立ちについてお聞かせください。どんな学生時代を過ごされたんですか?


もともと東京で生まれ育ちまして、高校2年生のときに留学を経験しました。祖父は留学経験があり、そのことにすごく憧れをもっていたんです。当初は1年間のつもりで留学をしました。

アメリカの田舎の学校で過ごしていると、自分は意外と自然が好きなんだなぁと気づいたり、1年経ってやっと英語がなんとなく分かったりしてきたので、もっと居たいと思うようになりました。

日本の高校には1年半ほど通いましたが、中退をして留学先の高校に残りました。そのまま大学受験をして、大学を卒業するまでアメリカにいました。

グローバルに働きたくて大和証券へ


――就職活動もアメリカで?

大学卒業時、そのまま就職しようと思っていたのですが、ちょうど就職活動の時期にリーマンショックが起きました。アメリカでの就職は難しいなと思い方針を変え、日本から海外に向かってインパクトが大きいことをしたいと思いたち、金融や商社を中心に受けました。

いくつか内定をいただいた中で、当時、大和証券がSMBCと離れようとしているタイミングでした。「これから大和単体でアジア回帰します。香港やシンガポールに第二本社を作ります」ということをうたっており、すごくおもしろそうだなと思いました。

日本から外に向けてグローバルに働きたいなと思い、最終的に大和証券を選んだという経緯です。

同僚や上司に恵まれながら8年間勤務して、その間ほとんどM&Aのアドバイザーみたいなことをしていました。当時の大和証券は英語人材がまだまだマイノリティで、海外案件に出られる等チャンスが多かったです。ロンドンのチームに日本人が必要ということで選んでもらい、2年弱ロンドンにいました。そういったことも良い経験になりました。

強みを活かせるところはここじゃないのかも…?


ただ、組織とか、お客様、同僚、日々の生活には満足していたのですが……私はちょっと細かい作業が得意ではないなと。性格的におおざっぱなところもあるし、数字の正確性がアドバイザーには求められるので、「自分の強みを活かせるのは、ここではないんじゃないかな」ということをずっと思っていました。

むしろ、案件の売り手さんと買い手さんのなかに入ってうまく調整して進めるみたいなところのほうが、おもしろいなぁと思っていました。

こういう気持ちを感じたまま10年、20年は働けないだろうなぁと思い、働きながらMBA受験をして、受かったタイミングで退職しました。
当時、30歳になるかならないかの頃でした。

スペインを選んだ理由は、ロンドン駐在でヨーロッパに行ったときに「ヨーロッパってほんと楽しいな」と(笑)。貧乏旅行をいっぱいしたいなという点がひとつと、あとは、米国MBAに比べて学費が安かったという点でIESEを選びました。

助太刀ってすごくおもしろいビジネスだと思った

ビジネススクールは再就職支援学校のような一面があるので、2年後に何をやるか決めなくてはいけなかったんですが、私はそれまでのアドバイザーとしての経験を踏まえ、「次は事業会社に行きたい」ということを決めていました。

大企業で大きなプロジェクトのなかのひとつの役割を担うのではなく、小さな組織でもいいので大きい裁量をもって働きたい、会社の意思決定に携わりたいと思い、スタートアップ企業を志向するようになりました。

前職のころからスタートアップ企業がものすごく好きで、勝手にいろいろ調べたりしていました。ですから、助太刀のことも知っていたんです。

スペインで暮らし始めて2ヶ月ほど経ったころ、助太刀CEOの我妻が「初めてテレビCMを打ちます」とSNSで投稿していて、いいタイミングだなと感じました。

「助太刀ってすごくおもしろいビジネスだと思うので、来年インターンとして働かせてください」とメッセージを送りました。我妻もびっくりしたでしょうね。
「1年後にはそもそも会社があるかわからない。来年の夏に話さない?」との回答でした。
「2週間後にスペインの3連休があるので会いに行きます。面接してください」と送り、本気度を感じ取ってくれたようで時間をとってくれて。

日本に弾丸帰国をして会いに行き、スポットを用意してもらえることになりました。それが助太刀との始まりでした。


――スタートアップに挑戦したいと思っていた時の心境を教えてください。

大和証券という大きな組織で「自分はどうなるのだろう?社長にはなれないだろうな」と思っていました。それまでの人生を真面目に生きてきたつもりでしたので、これまでの経験をレバレッジ……テコにして大きく跳ねたいと思っていました。
レバレッジという言い方は少し違うかもしれませんね……これまでの自分の経験や能力がレアである環境にいきたいと思っていました。

今でこそ増えていますが、スタートアップ界隈において、英語が話せる・IBD(投資銀行部門)での経験・MBAなどはあまりいませんでした。
存在や能力がレアであればあるほど希少価値がでると考えたので、チヤホヤされるのではないかと(笑)。

当時、自分の成長が鈍化しているなと感じていたんです。それは勿論大企業という環境のせいではなく、同僚にはどんどん新しい挑戦をして自分を高めている人もたくさんいました。しかし自分は、会社も楽しいし居心地がよくて、成長スピードが落ちたなと。

できるだけ30代前半までにもっと自分の中のアセットをガツンと高めて、中長期的にキャリアを伸ばしていきたいなと思いました。

事業会社で意思決定の当事者になりたかったんです。

より経営に近い立場で、「この判断を間違えたら会社が潰れてしまうかも」というようなヒリヒリする意思決定をしたいと思っていました。

――入社後、スタートアップ特有のカルチャーは感じましたか?


語弊があるかもしれないですが、それが正しいのであれば朝令暮改は起きます。組織のチューニングというのも毎月のようにやっています。それって負荷がかかるし、ぶれているように見えてしまうかもしれませんが、実は「How」の部分はぶれても全然問題ないと思うんですよね。

結局、中長期的に何をやりたいのかということが固まっていれば、それに対する「How」はむしろ頻繁にチューニングするべきだと思っているので。
確かに、この頻度が大企業とは比べ物にならないくらい高いので、そこはラーニングが必要かなと思います。最初はストレスに感じる人も多いと思います。

それから、前職では管理職という立場ではなかったので組織のコンディションとかを考えたことはなかったです。だけど、とくに小さい組織だと、経営陣に限らず「誰かの発言、一人の人間の組織に対するインパクトがこんなに大きいんだ」と、良い意味でも悪い意味でも思いました。
ですから、人の気持ちの機微だとかそういうものに、すごく気を遣うようになりましたね。

大企業だと、若手社員が仕事帰りに飲みながら会社の愚痴を言うみたいなことがありますよね。それはある意味健全というか。それでも会社は問題なくまわりますが、スタートアップ企業はそうじゃないなと思いました。

そういう小さな綻びから組織崩壊が起きてしまうので。そこは丁寧にケアしなくちゃいけないなと感じます。まだ、できていないところもありますが。

――証券時代に得たスキルや考え方で、今、役立っていることはありますか?

まず、大和証券できちんと社会人として教育してもらえたことは本当に有難いなと思っています。

現在、私のような若造が会社を代表して、大企業の役員の方や行政の方々とお話するわけです。そこで「スタートアップ企業なのでこういうカルチャーです」はダメだと思っていて。

エスタブリッシュな方々とも共に業界を良くしていきましょうということで、彼らのカルチャーを理解し、いいプロジェクトにできるように空気を調整する必要があります。相手を不快にさせない振る舞いができることは、今の若い人たちが思っている以上に価値あるものです。

あとは、弁護士さん・会計士さんとやり取りする機会が多かったので、彼らとのコミュニケーションのお作法がわかっているというのはディールをすすめる上で直接的にすごく役立っているなと感じます。


実務面でいうと、数か月単位のプロジェクトを回していくプロジェクトマネジメントの経験。それから、セルサイド(事業を売却する側)について会社の株価を最大化させていく経験は、今の自社の資金調達にそのまま活きています。
また、バイサイド(買収する側)についた経験を通じて、投資家さん、さらにその裏のLPさんの考え方まで力学的に理解できるのはよかったなと思います。

――現在はどのような業務を担当されていますか?


ファイナンスグループ(財務・経理)と管理グループ(総務・人事・法務など)を見ています。私は、今までのバックグラウンドから資金調達が得意ですが、コーポレートや経理など守りの部分はめちゃくちゃ優秀な社員に支えられています。

経理は月次決算や収益認識とかのプロジェクトもリードしてくれていて、私はかなり助けられています。法務も1人で、たとえばコーポレートアクションは私が引っ張りますけど、それ以外のビジネスマターとかリーガル論点は、方針だけ合意した後は外部専門家との調整は任せています。


私の日々の仕事は、新規既存含めた投資家・株主とのコミュニケーションというところと、守りの部分のタスクマネジメントと、最後の意思決定です。割合としては意思決定のほうが多いですね。

経理はとくにプロフェッショナルな世界ですし、私もメンバーを信頼しているので、プロセスは任せています。
ただ、合間合間で「ここはこうしよう」という意思決定はしています。

属人的な優秀さに頼ってはいけないので、今後はコーポレートチームの組織作りが私の大きな仕事のひとつになりますね。

――今後の展望を教えてください!

CFOには、お金集めが得意な人や、会社のガバナンスを整えることが得意な人などがいると思いますが、結局は会社の企業価値をどれだけあげられるかというところです。そのためにできることは何でもやるべきだと思っています。

これからも事業価値の向上に貢献できる人間でありたいと思います。そのために、マーケットの人と頻繁に話をしたり、マーケットに評価してもらえるようなコミュニケーションをとっていきたいなと考えています。

より中長期的なことでいうと、やっぱり助太刀を大きくしたいですね。いろいろな挑戦をしていきたいなと思っています。


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金谷さん、ありがとうございました!

後編へ続きます。お楽しみに。

株式会社助太刀|https://suke-dachi.jp/


「建設現場を魅力ある職場に。」
職人さんと工事会社をつなぐマッチング機能を中軸に、資金繰りを支援するペイメントサービス、労災事故に備えた保険サービス、現場で使う工具の修理やレンタル、そしてアプリ内広告など、様々なサービスをプラットフォーム上で提供。 建設現場で働くすべての人を支えるアプリを目指して、これからも多くのサービスを展開していきます。

※写真は全て助太刀渋谷オフィスにて撮影
※写真撮影時のみマスクを外していただきました
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