見出し画像

現役エージェントに聞いた「後悔しない転職」をしたい人がやるべき準備やミスマッチ回避のコツ

政府が宇宙分野や人工知能(AI)などに取り組むスタートアップへの経済的支援を拡充し、大手銀行が「ユニコーン」と呼ばれる未上場成長企業の育成を目指す新ファンドを立ち上げるなど、ベンチャー・スタートアップ界隈の環境整備が進んでいます。

2022年3月の日本経済新聞によると、「大企業からの転職者は3年前に比べて7倍に増えた」という調査結果が出ています。

(引用:日本経済新聞|https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC1216Z0S1A111C2000000/)

かつては非常にリスキーだと言われていた「スタートアップへの転職」を悪くない選択のひとつだと考える方が増えてきているようです。

しかし、玉石混交のスタートアップ。キラキラした部分にだけ目を向けて、転職後に「こんなはずじゃなかった‥」と後悔する方も――

そこで、スタートアップ転職の支援歴5年目のJAPANFAS俵家佳介氏に、転職する前に心得ておくべきことやスタートアップの採用選考について、転職がうまくいくためのヒントをうかがいます。

経理・財務の挑戦マガジン『デンタツ』、特別編をどうぞ。


キャリアの先輩をご紹介

――――――――
俵家佳介 氏

JAPANFAS株式会社
人材紹介事業部
シニアマネージャー

2014年 成蹊大学卒
2014年 大手重機メーカー 入社
2019年 JAPANFAS株式会社 入社 
――――――――

いちばん大事な「自分を知る」作業


――スタートアップへの転職活動において、どのような準備が重要だと考えますか?

とにかく「自分を知る」作業がもっとも大事だとお伝えしたいです。

ご自分が転職を通じて何を叶えたいのかはっきりとわかっていないと、どれだけ会社情報や求人票を見てもなんにも心に響いてきませんよ。

スタートアップへの転職に限った話ではありませんが、
「なんのために転職活動するんだっけ」
「よくよく考えたら、いまの環境のままでいいんじゃないか」
といった考えをはっきりさせていないと、転職活動が宙ぶらりんになってしまいます。

結局、転職活動をするということは現状になにかしらの不満があるのだと思うので、そもそも感じている不満がどうしたら解消するのかを転職前に突き詰めることはとても重要です。

ただし、「何を求めていたんだっけ?」を考え抜いた人でも、転職活動を進めていくなかで変わってくることがあります。

過去にあった例で
「スキルアップ」を望んでいたはずが「経営陣の考えかたや相性」が入社の決め手になった方、
「業務内容を重視したい」と言っていたが「勤務地と働き方」をもっとも大事にしたいことだと気づいたという方がいました。

それはそれでよいのですが、「転職で自分が叶えたいことはなんなのか」と「スタートアップでは叶えられるか」が合致するかは、見定めたほうがよいです。
自身の価値観を自分自身がしっかりわかっていなければ、転職が成功から遠ざかってしまいます。


スタートアップ企業に必要とされる人とは

――スタートアップ経理に転職するにあたって、企業側からどのようなスキルが求められる傾向がありますか?

経理スタッフ

会社の規模にもよりますが、月次決算の経験があり、経理業務の年間の流れがおおむねわかっていて、簿記の知識があれば、ご紹介が可能です。
20代など若手の方でしたら、日商簿記2級の資格さえあれば未経験でもチャレンジできます。

経理マネージャー

上場企業の決算業務を完結できることが求められ、さらに監査対応、開示業務の知見、そして経験値も必要になってきます。
ただし、近年はマネージャークラスの人材不足が顕著なので、「上場企業の子会社の決算経験しかないけど、マネージャークラスに挑戦したい」という方も採用される可能性はあります。

管理部長

労務や法務、総務、人事など管理部門全般を統括するスキルを求められます。
経理マネージャーと同様に決算業務や監査対応、開示業務の知見がないと務まらないポジションだといえるでしょう。


そしてこれは経理の求人に限りませんが、ベンチャー・スタートアップではスキルよりも意欲が重視される傾向があります。マインド重視ですね。

「成長していきたい」「スキルを伸ばしたい」という方向に矢印が向いている方や、待ちの姿勢ではなく「ここもやらせてほしい」と進んで言うような自走力がある方が好まれます。

経理で、安定や福利厚生やワークライフバランス重視ではない志向の方は重宝され、企業側からの印象がよくてニーズが高い傾向があります。


転職の面接の対策

――選考中に企業からよく聞かれる質問の例を教えていただけますか?

まず経理のスタッフクラス〜マネージャー候補の場合、転職理由はかならず聞かれます。基本的にはポジティブな理由でまとめてほしいですね。

「現職では叶えられないけれど、ベンチャーでなら叶えられること」を中心に、ご自分の言葉で伝えられるとよいです。

そして、将来像。これは120%聞かれます。ただスキルアップしたいとか、ただマネジメントしたいという理由ではNGです。

マネジメント希望であれば、「何人規模のマネジメントなのか」といった具体的なビジョンがみなさんなかなか出てこないというか、抽象的なビジョンを持つ方が多く見受けられるので、このあたりはぜひいっしょにつくりましょう。

「どういう会社選びをしているのか」も定番の質問ですね。深くつっこまれたときに困らないように、しっかりと固めておくべきです。

近年は、企業がWebサイトやSNSで多くの情報を発信しています。候補者ご自身のバックボーンに照らし合わせて共感できるポイントを見つけ、採用面接までにつくりこんでいくとよいと思います。

――面接突破のコツがありましたらぜひ教えてください。

基本的なことではありますが、ハキハキしたコミュニケーションは大事です。それから、相手の質問の意図を汲みながら会話のキャッチボールができること。これができて及第点かと思います。

これまでにお会いした候補者のなかで、面接通過率がほぼ100%の方がいました。その方は、面接を通じて企業側の課題もヒアリングし、それに対して「自分のこんなところが活かせます」とアピールをして、経験のない業務に関しては「ここはお力添えできませんが、こんな方法はどうでしょうか」と提案を交えて伝えていました。
わたしも面接に同席していましたが、すごい‥‥と思いました。面接というよりむしろプレゼンのようでした。

企業側は、募集ポジションに「何か」を求めているわけですよね。
その何かにあなたが合致することや活躍できることをしっかりと伝えることを意識してみてください。


よくあるお悩みや心配事へのアドバイス

――キャリア面談中、候補者のみなさんから、転職にまつわる不安や悩みを相談されることもあると思います。そんなときはどんなアドバイスをしていますか? 

ご相談いただく方の大半がベンチャー未経験なので、よくあるお悩みは「ベンチャー・スタートアップの環境(文化・人間関係)」「仕事や残業の量」です。

裁量をもって幅広くやっていきたい方にとってはベンチャー・スタートアップはポジティブな環境なので、基本的にはありのままをお伝えしています。

プロジェクトリーダーになりたい方、課題を発見して自分から解決に向けて動いていきたい方、仕組みづくりをやってみたい方にとって、とてもいい環境だと思います。

働いている方の年齢が比較的若いので、そこが大企業とは違いますね。
また、ボトムアップで意見を言える会社が多いです。


教育環境は、大手企業と比べるとほとんどないといえるので、ご自身でキャッチアップをしていかないといけない環境だということも伝えています。よく言われるような「自走できる」スタイルの方じゃないと務まらないのではないでしょうか。

「自分に務まるのか?」よりも「やってみたい!」「チャレンジしてみたい!」が強い方のほうが向いているんじゃないかなと思います。

残業に関しては、正直、ワークライフバランスを求めていく環境ではないかな……とはいえ会社規模に対して管理部門の人員がそろっているかいないかなど会社ごとの体制次第で変わってきます。
あとは、上場準備が佳境に入ると非常にいそがしくなりますので、そのあたりの実情もお伝えしています。

ベンチャー・スタートアップの場合、会社の先行きを不安に思う方もいるかもしれませんが、少なくとも直近で数億円の資金調達をしている会社であれば、2~3年で倒産する確率は低いと思っていいでしょう。

――ベンチャー企業に入ってから起きるかもしれないできごとのひとつに、会社がバイアウト(売却)されるケースがあると思います。その場合、従業員の方はどうなってしまうのですか?

バイアウトされた場合には転職する方が多い傾向にあります。なぜなら、IPOの経験を求めてベンチャーで働く方が一定いらっしゃいますので、「IPO」というイベントが起こる可能性がなくなれば、ほかのベンチャー・スタートアップに移る傾向があるようですね。

個人的には、バイアウトはリスクだとは思いません。「売却」というひとつの結果が出るので、再度転職する際にも企業側からはネガティブな印象は持たれにくいです。
「やっぱりIPOにチャレンジしたい」と考える方々に対しては企業側も理解があり、受け入れてもらいやすいですよ。


企業とのマッチング成功のカギは、価値観の明確化

――転職活動中の候補者と企業とのマッチング成功のためには、どのようなポイントが重要だと考えますか?

叶えたいことや譲歩できることを明確にし、ご自分を客観視できることが重要だと考えます。転職をすごくシンプルに考えると、何かを叶えたいから転職するんだと思うんです。
そこに対して「ぜったい叶えたい」と「できれば叶えたい」にわけて考えられることがポイントになってきます。

そして、あたりまえのことですが、企業が求めるスキルや経験を要しているかを照らし合わせてマッチングしていくので、水準に達していないのに多くのことを求めすぎても、うまくいかないですよね。
100点満点の転職活動はできないことが多い、という実態があります。

ハイスキルでハイスペックで引く手あまたな方は、言い方は悪いですが、多少のわがままが通ったりします。
しかし大多数の方にとっては、すべての要望を叶えることはハッキリ言ってむずかしい。2023年現在の転職業界は売り手市場でしかないですが、もし世の中の景気が悪くなったら、状況は一気に逆転し、買い手市場に変わる可能性だってあります。

そのあたりの客観的事実を聞いた候補者のみなさんが、どこまで消化できるかがポイントになってきます。「それでも転職したいですか?」の確認はさせてもらっています。


JAPAN FASは、経営人材や財務人材の成長を支援をする会社です

――貴社は「人材サービスはしてるけど"転職エージェント"ではありません」と過去記事で述べていましたね。

はい。具体的なIPO支援を挙げるときりがないため割愛しますが、弊社はさまざまな価値提供をおこなっている会社であると自負しています。

クライアントである企業側へのIPO支援の手段のひとつとして、人材紹介業をおこなっています。なぜなら企業成長には「人」が必要不可欠で、とくにスタートアップやベンチャーは「人集めが事業作り」と言われるくらい、よい人材の獲得が企業成長に直結するからです。

その一方で、候補者の方々にとって人生の転機になりうる転職において、多くの選択肢の中から少しでも最適な選択をすることができる一助となれたらと考えています。

後悔のない転職のために、価値観の整理をお手伝いできればと思っています。JAPAN FASの転職支援に興味を持たれた方は、いつでもお気軽にご連絡ください。

――――――――

JAPAN FAS株式会社

・公式サイト:https://japanfas.co.jp/

・Twitter(X):https://twitter.com/JAPANFAS_Career/



企画/JAPAN FAS株式会社
写真・文/Yui Osawa

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?