【対談】映画監督と経営者が語る、長崎のみらい。(前編)
映画、テレビドラマなどで次々と話題作を発表している長崎県出身の映画監督、横尾初喜さん。
横尾監督が新たに手がける映画『縄文人がやってくる!(仮)』が2023年に公開されます。2019年公開の映画『こはく』に続き、本作も長崎を舞台としています。
「もっと長崎を盛り上げたい」横尾監督の強い思いから、本作は舞台だけではなく、主演・助演キャストなどもオール長崎で制作。今回、当社は監督の想いに共感し、協賛させていただくことになりました。
映画の協賛をきっかけに、当社の小林社長と横尾監督の対談が実現!
映画のこと、これからの長崎のこと、たっぷりと語っていただきました。まずはこんなお話から。
(担当・編集:社長室 木下)
1.オール長崎の恋愛映画
小林:
今回はどんな映画に?
横尾:
「愛を与える」というのが一番のテーマです。「無条件に愛を与える美しさ」を表現したいと思って。今回は恋愛映画ですね。
小林:
愛、ですか。
横尾:
はい。前回の『こはく』で、長崎の方々に愛をたくさんいただきました。その愛を映画にできたらなと。
愛の表現といっても、人によって違いますよね。今回は群像劇っぽく、それぞれのキャラクターがどういう愛を表現するのか、というのを意識してます。
小林:
タイトルが「縄文人がやってくる!(仮)」ですよね。なぜ縄文人に?
横尾:
それがですね…。タイトル変わるかもしれないんですよ…(笑)。
小林:
ええ!(笑)。
横尾:
映画をつくっていく中で、ちょっとずつ縄文人から離れてまして(笑)。
小林:
そうですか(笑)。
横尾:
今まで「恋愛映画」を撮ったことがなくて。どういうテーマ、ストーリーにしようかと考えているときに、ちょうど井浦新さんと話す機会があったんです。
井浦さんは縄文時代が大好きなんですよ。そのとき話をいっぱい聞かせていただいて、ぼくも興味を持って調べるようになりました。
縄文時代って一万年以上続いた時代で、これほど長く続いた文化は他にないんです。じゃあなぜ続いたのか。簡単にいうと、村単位の争いも少なくて、人が節度を保ち、自然を大事にして生きていたからです。
つまり、愛を持って自然と共生している。これは、映画のテーマとなりうるんじゃないかなと。
あとは……。
ワードにパンチあるな、と(笑)。
小林:
まあ、たしかにパンチありますね(笑)。恋愛映画だとは思わないです(笑)。
横尾:
え?ってなりますよね(笑)。ふつうは「SFかな?」みたいな。
小林:
撮影中、最初の構想と「ちょっと違うな」みたいなこともあるんですか。
横尾:
違うなと思ったら、すぐ修正を入れます。撮影は”生もの”なので、「あ、こうなるんだ」と新しい発見にもなります。脚本はあくまでも設計図みたいなものですから。
小林:
なるほど。
横尾:
撮影って俳優だけじゃなく、カメラマン、音声、衣装、本当にたくさんの方が関わっていますよね。それぞれが期待を超えるときがあって。
例えば、カメラマンさんだと、ぼくが描いているものに対して「こう撮ってきたか!」と驚くこともあります。衣装さんもちゃんと作品を意識したストーリーを持って、衣装を用意してくれたり。
そういうときに、自分が思っていた作品が「どんどん昇華されていく感覚」っていうか…。それが楽しいですよね。
小林:
ああ、それは楽しいですね。
横尾:
今回、カメラマン、衣装、スタイリスト、メイクさんもみんな長崎の方なんですよ。長編、初めての方もいますし。
小林:
本当にオール長崎ですね。
2.開かれた映画制作
小林:
今回、長崎で会社もつくられたんですよね。
横尾:
はい、ブルーマウンテン(株式会社BLUE.MOUNTAIN)という会社を。ぼくが代表というわけではないんですど。
小林:
なぜ会社を?
横尾:
『こはく』を撮ったとき、小林社長しかり応援していただいた企業様に「継続してやることを応援したい」とおっしゃっていただいて。
自分もまさに映画を撮ることが、一回きりのものではなく「継続した取り組みにできないかな?」ということを考えていたんです。
小林:
はい。
横尾:
映画って、バクチに近くて。ビジネスで考えたときに、ギャンブルみたいなものなんですよ。9割くらいはリクープできないんです。それを毎年「(出資を)お願いします!」って言うのは、なかなか難しいと思いました。
出資という形だと、どうしても興行収入などのお金としてだけで結果を見られますよね。そうじゃないレイヤーで、できないかなと。
小林:
なるほど。
横尾:
『こはく』のときに、演者のオーディションを長崎市と佐世保市でやって、子役だけで合計500人くらい集まってくれました。長崎国際大学で講演をすれば150人来てくれて、オーディションも講演も、ある種お祭りのようでした。
長崎って、エンターテインメントが距離的に遠い立地だと思ってましたが、「じつは興味を持っている人はたくさんいるんだ!」と気づいたんです。
映画を、県民を巻き込んだイベント・お祭りにして「一年間のプロジェクトにするのはどうかな?」と考えました。
小林:
興味がある人は多いかもしれないですね。とはいえ、映画ってクローズドな世界というイメージがあります。
横尾:
おっしゃる通りです。だからこそ、すべてをオープンにして、イベント化させたいんです。撮影の準備から、制作過程をみんなに見せてしまおうと。
撮影現場もSNSで告知して「今日ここで撮影やります!見に来てください!」と言えばいいですし。実際の現場を見せることで「あ、映画ってこうやって撮ってるんだ」と興味を持ってくれる人が出てくれば嬉しいです。
小林:
映画が身近に感じますね。
横尾:
俳優しかり、キャスト、スタッフさんも滞在して同じ場所にいますので、そのときにいろんなイベントも開けますよね。
小林:
映画を“興行的な価値だけ”にしない、ということですか。
横尾:
そうです。映画制作を、イベント化されたプロジェクトにするには、かなり気合を入れないとやれないと思ったので、会社を立ち上げました。自分の逃げ道をなくす意味でも、会社にした方がいいかなと。
3.映画で長崎を盛り上げる
小林:
正直、映画ってよくわかっていなくて。先ほども、映画はつくってもなかなかペイできないと話もありましたけど。ビジネスだと、ぼくが小心者というのもあるんですが、絶対に失敗はしたくないんです(笑)。
横尾:
ええ。
小林:
ビジネスでは「成功の確信がもてる」ことしかやらないんですけど、映画でそんなこと言ってたら何もつくれないですよね。
横尾:
そうですね。
小林:
そういう厳しい世界でみなさんやられているんだなと、横尾監督と話してはじめて知って。とはいえ「映画を収支だけで考えていいのだろうか?」と思っていました。
映画を通して地域全体が盛り上がる、そういう取り組みを続けいく方がいいなと思いますね。長く続けてほしいです。
横尾:
ぼくが頑張っても一年で一本しか撮れないと思うんですよ。この取り組みを重ねていけば、もしかしたら撮るのが自分だけじゃなくて、同時多発的に長崎で映画を撮ることもあるかもしれません。
長崎の学生とお話しすると「映画を撮りたい」って方がいっぱいいるんです。そういう子たちが映画を撮れる環境が生まれるといいですね。
小林:
うん、いいですね。
横尾:
いま動画制作のニーズってすごくあって。若い世代の人が、映画を撮ることだけじゃなく、動画制作で生計を立てられれば、長崎を出なくても仕事ができます。そういう環境をつくる一端も担いたいですね。
小林:
長崎を盛り上げつつ、クリエイターも育てる。
横尾:
おこがましいですけど、そのきっかけになればと。
後編に続きます。
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