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映画大好きポンポさんで一点だけ納得できなかったこと

Netflixで『映画大好きポンポさん』を観ました。

解説
杉谷庄吾【人間プラモ】の同名コミックを劇場アニメ化。大物映画プロデューサーの孫で自身もその才能を受け継いだポンポさんのもとで、製作アシスタントを務める映画通の青年ジーン。映画を撮ることに憧れながらも自分には無理だと諦めかけていたが、ポンポさんに15秒CMの制作を任され、映画づくりの楽しさを(以下略)
2021年製作/90分/G/日本
配給:角川ANIMATION

https://eiga.com/movie/91732/

基本的には楽しく感動しながら観ました。

クリエイティブな現場としてのリアリティとパッションにこだわった描写で、映画作りの喜びと苦しみと狂気が詰まってて、ちょくちょく感涙しました。

日本語タイトルは『映画大好きポンポさん』で、英語タイトルは『ポンポ・ザ・シネフィル』です。シネフィルはフランス語で「映画狂い」という意味ですが、まさに映画への狂気を描いた作品として適格だと思います。

しかしながら、一点だけ納得できなかったことが…

#ネタバレ

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私が納得できないのは、主人公の最後のセリフでした。

初監督作品でありながら、その年度のアカデミー賞で主要部門を制覇する映画を送り出した主人公。彼は作品賞(監督賞?)のトロフィーを渡される壇上で司会者らしき人物から「この作品で一番気に入っている所は」と質問されて、刹那にポンポさんの背中を思い出し、彼はこう返答します。

「上映時間が、90分という所ですね」

これ、言うかなー?(笑)

いや、実はこの『映画大好きポンポさん』は冒頭の配給会社のロゴとエンドクレジットを除くと本編がぴったり90分になっており、そういうメタ的な演出も含めて粋なセリフではあるのですが。

この主人公が言うかなー?(笑)

そもそも映画の序盤で主人公とポンポさんの会話で主人公は「映画は長いほど嬉しい」と発言していたんですよね。彼はそういうタイプのシネフィルだということです。それが、たった1本映画を撮っただけであそこまで心境が変わるものでしょうか?

実は私自身は「映画は90分前後が最も望ましい」と思うタイプなのですが、このように主人公に掌返しさせた点は好きになれません。彼だって監督を務める前から相当の映画好きで、おそらく何千本と映画を観ていた筈です。そんな彼が長年の視聴者としての経験から「長い映画が好きだ」と思っていた一人の映画好きの自由意志を、なんだか無下に潰されたように感じて不快でした。

この一点だけのために、私の作品全体に対する評価は暴落しました。「正解のない問い」に対して、ここだけ作者の「思想の押し付け」が強すぎたという感想ですね。惜しかった!(苦笑)

このポスターを映画の結論を知ってから見ると、意味がよく分かりますね。ポンポさんの足元に無造作に置いてあるのは「編集でカットされた美しいフィルム」であり、美しいものを思い切り捨てることでのみ素晴らしい映画は完成するという映画の最重要なメッセージでした。振り返る主人公の表情がどこか名残惜しそうに見えるのも可笑しいです。

了。

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